二世帯住宅から冒険の旅へ

PXXN3

文字の大きさ
99 / 116

第93話 勇者ぬたから

しおりを挟む
「ところで辰巳はどうやって聞き出したの?」

「ん?」

「そのおじさんの言ってることわかるの?」

「こいつはサツマの悪党とつるんでいただろ? 当然翻訳魔法も使えるんだよ」

『翻訳魔法んでぃいーねーぬーやてぃんゆるさりーんでぃうむとーが?』

「日本語もわかってるはずなのに日本語は話さないんだよな」

「わさんべったばてななもわがねんだおん」

「あれ? 日本語だよ」

「え? 日本語じゃないだろ」

「日本語だびょん。なーにすかへらえだっきゃこったにほんずねわらしこさおがるべな」

「いや、おじさんもだいぶ人のこと言えないけど?」

「え? 通じてるのか? 何語だ?」

「日本語だよ?」

「ええ……俺の知ってる日本語と違う」

「それでその文書解読できたの?」

「なもわがね」

「あのう、それだと虎彦にしかわからないから翻訳魔法使ってしゃべってくれよ」

「なすてなさほんやぐまほうだの使ってさべねばまねてや」

「チョコ、やれ」

「わいやめれ! そのねごさかっちゃがすなて!」

「翻訳魔法」

『わかったから! これでいいだろ!?』

「よし」

『暴力反対!』

『……どっちが悪者かのう??』

「つけた先生が間違ってましたかねえ?」

「もとからああいうとこあるよ」

「ぐる」

『それでおじいさまの文書にはなにが書いてあるんだ?(あんっしたんめーぬかちつぃきんかえーぬーかちぇーが?)』

「わからないって」

「結局にほんごのわかるかたはみなこれを読んでわからなかったわけですか」

「たぶん数百年前の文書だろ?」

「先生なら読めるかな?」

「ウニチビの両親は知らないのか?」

『おじいさまは私にだけ見せてくれたのだ(たんめーやわんびけーんかいみしてぃくぃてーん)』

「見せてくれたのはこの本だけなの?」

『本ではなく文書だ(しゅむちぇーあらん、かちつぃきどぅやる)』

「あ、こっちのメモみたいなやつか」

「それを早く言えよ」

「安定の気の利かなさ」

『最初から文書とは言っていたがのう』

「そちらの文書のほうは読めるのでしょうか? わたしには同じに見えましたけど」

「どれどれ……『かればこう云うが……』……なんだこれ?」

「順番がバラバラなんじゃない?」

「最初はどれだ? ……これっぽいな」

「あ、それっぽい」

「全然わかりませんね」

『わしもわからんのう』

『そっちのほうは読めたがくだらんぞ。たぶん暗号の鍵だ。並び替えればきっと』

「順番ぐちゃぐちゃにしたのはおまえか……チョコ、やれ」

『ぎゃー!』

「『日本から来た勇者へ』……勇者いないけど?」

「そこは気にしなくていいんじゃないか?」

『変なやつだからいいだろう(ふぃんなーやくとぅゆたしゃるぐとーん)』

「……『わたしは那波なば鬼丸おにまる。国文学者だったがある日研究室で本を手に取ったときにめまいがして気づいたら見知らぬ場所にいた。手元にある資料はたった一つで研究もままならないし、夢でなにやら言われた気もするがそんな冒険はしたくないしで、この島のフィールドワークでもしようと腰を落ち着けたところだ』」

「致命的に勇者に向いてない人選だな」

「勇者は神様にお会いしたと言っていましたけど」

「これは全力で聞き流してる感じだよな」

「『ユタの婆さんが勇者の心構えとか話しかけてくるが、勇者をやる気はないので断っている。それよりこの島は自然が豊かで気候もよく住みやすい。島から出たくないなあ』」

「最初からやる気なさすぎる」

『この男がここでもたもたしておったからわしらのところへ来なかったんじゃな』

「『島中をくまなく調べて水の足りないところには井戸を、不作のところには肥料を、争いの絶えないところには按司を置いた。島で見つけた悪さをする者を集めて仕事を与えたりもした。知らないうちに親方と呼ばれるようになっていた』」

「内政チート勇者みたいなことやってるな」

『むかしおじいさまが国中の悪者を討伐して回ったという伝説は本当だったのか?(んかしたんめーぬちゅくにあっちわるむんかいばつぃくゎーちぇーんでぃゆるつぃてーやまくとぅやてーみ?)』

「『そんなことをして何年か経つとユタの婆さんからある娘を紹介された。最初は断ったが家族を持てば考えが変わると言われてしぶしぶ承知した』」

「ハーレム勇者伝説か?」

「『今日は初めての子どもが生まれる日だ。ここに名前を書いておく』……このあとは家系図みたいになってるね」

「横に赤字でなにか書いてあるぞ『今日妻が死んだ。もう生きていけない。子どもたちも大きくなって家にはいない。さみしい』」

「日付が書いてないからよくわからないけど、たぶん何十年か経ってるってことだよね」

『十年くらい泣き暮らしたっていう言い伝えの!(じゅーにんあたいなちくらさんでぃゆるちてーぬ!)』

「『ユタの婆さんがしつこく訪ねてくる。新しい嫁をとれと言って知らん娘を紹介された。自分の孫より若い娘と結婚なんかできるか』」

「こじらせてんな」

「『どうやらわたしは若いまま年をとらないようだ。どおりでいつまで経っても死なないわけだ。今日最初の息子が死んだ。葬式のため島を出たらユタの婆さんにだまされて結婚してしまった』」

「ユタの婆さんのキャラが濃い」

「『また新しい家族ができそうだ。家族はいいな。また島をめぐって船を改造したり料理を作ったりした』」

「なるほど。この人家族がいるときだけ島のために役立つからユタの婆さんが連れ出したがってるんだな」

『この料理、たぶんうちの宿ですよ!(くぬうぶん、わったーぬやどぅどぅやるはじ!)』

「家系図の名前に一つずつ赤線が引かれてるのは亡くなったからか」

「このあとも家系図が続いてるね。最後のほうは……『妻が死んで悲しんでいたら、娘がわたしのことを心配して婿養子をとった。わたしもさすがに年をとったようだ。孫が生まれたらその子にあとをまかせようか』」

「これはウニチビが生まれるまえか? このあとは線が引いてない……鬼末おにつびってウニチビのことか?」

『ああそれだ。おじいさまがそれを見せながら「ここにおまえのことが書いてあるんだよ」と言って……(い~あんやさ。たんめーぬうりみしやがちー「くまんかいやーぬくとぅかちぇーんどー」んでぃち……)』

『わし、こういうの弱いんじゃ……』


おまけ 翻訳

みなさんの翻訳魔法にさらに翻訳をかけますので字幕付きでお楽しみください。

『翻訳魔法んでぃいーねーぬーやてぃんゆるさりーんでぃうむとーが?』
→翻訳魔法って言えばなんでも許されると思ってるのか?

「わさんべったばてななもわがねんだおん」
→俺が話してもお前なにもわからないんだもん

「日本語だびょん。なーにすかへらえだっきゃこったにほんずねわらしこさおがるべな」
→日本語だろうよ。なに教えられたらこんなにどうしようもない子どもに育つんだろうな

「なもわがね」
→なにもわからない

「なすてなさほんやぐまほうだの使ってさべねばまねてや」
→どうしてお前に翻訳魔法とか使って話さないといけないんだ

「わいやめれ! そのねごさかっちゃがすなて!」
→うわっやめろ! そのねこにひっかかせるなって!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

処理中です...