貴方の✕✕、やめます

戒月冷音

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第52話

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玄関には、私とクーディアス様だけ。
私はもう、この方に何も言う気はない。
「今まで、ありがとう。
 君には縛りだったかもしれないが、戦地に居る私にとって君は
 帰る場所だったよ。
 今更こんなこと言っても、遅いだろうけど…」
そこで話すのを辞めたクーディアス様を見ていると、奥歯を噛み締めたのが分かった。
「ほ、本当に、済まなかった。
 これからは、なんとか皆の力を借りて頑張っていくから…」
それを聞いたと同時に、私はクーディアス様に深々と頭を下げた。
クーディアス様が息を呑む音が聞こえたが、私は気にせず頭を上げ、荷物を手に取り玄関を出る。
コレでやっと、私はこの家から解放された。


私は、クーディアス様に関する全てを、辞めることが出来た。
8歳から17歳までずっとファル家に縛られ、自分のしたい事も学園も何も出来なかった。
けれどそれを、今言ってもどうにもならないことを知っている私は、クーディアス様の元を離れた後実家に帰らず、どこか別の領地に言ってみようと思っている。
そういう、自分で自分の事を決められる…それが一番したかったことだ。

しかし…

門まで行くと、1台の立派な馬車が止まっていた。
嫌な感じを覚えた私は、その馬車の横を通らないように歩を進める。
が、私を見た御者が、馬車を走らせ私の横に止めた。
「マリア。どこに行くのかしら」
やっぱり、姉…今は第2王子妃…だった。
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