128 / 164
第129話
しおりを挟む
「皆、居なくなったよ」
その言葉を聞き、私は顔から手を離す。
しかし、涙はまだ流れていて、止まる気配がない。
「何で…ヒック、止まらないの?」
「君が思っているより、心は傷ついていたみたいだね」
「そんなはず…「あったんだね。なにか、言われたの?」
「君の気持ちも考えず、済まなかった…と」
「…そうか。
君に気持ちがなかったと彼が気付いたのは、別れる時だった。
ということは、今の君ではなく婚約が決まった頃の君が、泣いてるのかもね」
「婚約が…決まった…」
私はその時のことを思い出す。
自分の言葉は聞いてもらえず、私の事は姉が決め、婚約は姉が嫁ぐはずだったものを、引き継いだだけだった。
私だって憧れていた。友達と色んな話をして笑ったり、遊びに行ってたくさんの経験をしてみたかった。
普通の女の子のように、暮らしてみたかった…
ポロポロポロ……
私は、声を殺して泣く。
ここで声など出したら、外に聞こえてしまう。
皆が楽しんでいるのを、邪魔したくない。
それを隠すかのように、ラヴェがずっと抱きしめてくれた。
しばらくして、ようやく涙は止まった。
けれど化粧が崩れ、目を真っ赤にした状態で、人前にはでれない。
「ラヴェ…こんな姿では、人前には…」
「分かっているよ。マーサ、入って」
「えっ!?マーサ…さん?」
「呼んでおいたんだ。彼女になら、何でも頼めるだろ」
「それは、坊ちゃまだけでしょう。
奥様、こんなお婆のお化粧でも、大丈夫ですか?」
「小母様ですわ。よろしくお願いします」
「まあまあ…こんなに泣き腫らして…さぁ、もう一度、綺麗になりましょうね」
そう言ってマーサさんは、私をラヴェ様が引き離すと、持っていた冷たいタオルで目元を冷やした。
その言葉を聞き、私は顔から手を離す。
しかし、涙はまだ流れていて、止まる気配がない。
「何で…ヒック、止まらないの?」
「君が思っているより、心は傷ついていたみたいだね」
「そんなはず…「あったんだね。なにか、言われたの?」
「君の気持ちも考えず、済まなかった…と」
「…そうか。
君に気持ちがなかったと彼が気付いたのは、別れる時だった。
ということは、今の君ではなく婚約が決まった頃の君が、泣いてるのかもね」
「婚約が…決まった…」
私はその時のことを思い出す。
自分の言葉は聞いてもらえず、私の事は姉が決め、婚約は姉が嫁ぐはずだったものを、引き継いだだけだった。
私だって憧れていた。友達と色んな話をして笑ったり、遊びに行ってたくさんの経験をしてみたかった。
普通の女の子のように、暮らしてみたかった…
ポロポロポロ……
私は、声を殺して泣く。
ここで声など出したら、外に聞こえてしまう。
皆が楽しんでいるのを、邪魔したくない。
それを隠すかのように、ラヴェがずっと抱きしめてくれた。
しばらくして、ようやく涙は止まった。
けれど化粧が崩れ、目を真っ赤にした状態で、人前にはでれない。
「ラヴェ…こんな姿では、人前には…」
「分かっているよ。マーサ、入って」
「えっ!?マーサ…さん?」
「呼んでおいたんだ。彼女になら、何でも頼めるだろ」
「それは、坊ちゃまだけでしょう。
奥様、こんなお婆のお化粧でも、大丈夫ですか?」
「小母様ですわ。よろしくお願いします」
「まあまあ…こんなに泣き腫らして…さぁ、もう一度、綺麗になりましょうね」
そう言ってマーサさんは、私をラヴェ様が引き離すと、持っていた冷たいタオルで目元を冷やした。
35
あなたにおすすめの小説
大人になったオフェーリア。
ぽんぽこ狸
恋愛
婚約者のジラルドのそばには王女であるベアトリーチェがおり、彼女は慈愛に満ちた表情で下腹部を撫でている。
生まれてくる子供の為にも婚約解消をとオフェーリアは言われるが、納得がいかない。
けれどもそれどころではないだろう、こうなってしまった以上は、婚約解消はやむなしだ。
それ以上に重要なことは、ジラルドの実家であるレピード公爵家とオフェーリアの実家はたくさんの共同事業を行っていて、今それがおじゃんになれば、オフェーリアには補えないほどの損失を生むことになる。
その点についてすぐに確認すると、そういう所がジラルドに見離される原因になったのだとベアトリーチェは怒鳴りだしてオフェーリアに掴みかかってきた。
その尋常では無い様子に泣き寝入りすることになったオフェーリアだったが、父と母が設定したお見合いで彼女の騎士をしていたヴァレントと出会い、とある復讐の方法を思いついたのだった。
傲慢な伯爵は追い出した妻に愛を乞う
ノルジャン
恋愛
「堕ろせ。子どもはまた出来る」夫ランドルフに不貞を疑われたジュリア。誤解を解こうとランドルフを追いかけたところ、階段から転げ落ちてしまった。流産したと勘違いしたランドルフは「よかったじゃないか」と言い放った。ショックを受けたジュリアは、ランドルフの子どもを身籠ったまま彼の元を去ることに。昔お世話になった学校の先生、ケビンの元を訪ね、彼の支えの下で無事に子どもが生まれた。だがそんな中、夫ランドルフが現れて――?
エブリスタ、ムーンライトノベルズにて投稿したものを加筆改稿しております。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
届かぬ温もり
HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった·····
◆◇◆◇◆◇◆
読んでくださり感謝いたします。
すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。
ゆっくり更新していきます。
誤字脱字も見つけ次第直していきます。
よろしくお願いします。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる