私の存在

戒月冷音

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第145話

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「おはようございます。ミシェル様」
今日も、いつも起こしに来てくれるルーザの声で、目を覚ます。

「おはよ・・・う、ござ、い・・・マス?」
けれど、目を開けると、いつもの風景と違うことに気付く。
「おはよう、ミシェル」
頭の上から聞こえた声にビックリして顔を上げると、寝起きのマルクス様の顔があった。
「あの・・・何故?」
私がそう聞くと、マルクス様は自分のお腹の辺りを指差し
「動けなかったの」
と言った。
よく見ると、私の手がマルクス様の服をギュッと掴んでいる・・・
「ごっ、ごめんなさいっ」
慌てて手を離すと、マルクス様はにっこりと笑って私を抱き締めると
「しっかり充電、させてもらいました」
と言った後、私を離してベッドを降りた。

「マルクス様、マルガ様にお伝えしますね」
ルーザががそう言うと、
「ダメダメ、言わないでっ」
と慌てたが
「ルーザさん。原因は私なので、言わないでいただけると・・・」
と私が言うとルーザは言いませんと言ってくれた。

しかし、
「早く出ていただかないと、ミシェル様の朝の支度が出来ません」
と言われ、その通りだと慌てて部屋を出ていくマルクス様。

その後、ルーザに手伝ってもらい、簡単なドレスに着替えると、髪を整えて朝食に向かう。
ダイニングに行くと、皆はまだ来てなくて、ちょうど良いので料理長に話をしに行った。
「おはようございます」
「あ、ミシェル様。おはようございます」
「忙しい時にごめんなさい。
 朝食の後からまた、厨房をお借りしますけど、
 大丈夫でしょうか?」
「はい、そのように準備しております」
「では、よろしくお願いします」
「かしこまりました」
料理長に挨拶をして、ダイニングに戻ると皆さんが集まっていて、そのまま朝食が始まった。


「マルクス」
「はい」
「昨日、部屋に行ったら居なかったようだが、どこに居た?」
「へ?」
マルクス様は突然のことに、変な声を出した。
「へ?ではない。どこに居たと聞いておる」
「えっと・・・」
「すみません。マルクス様は、私を心配して
 私の部屋に来ておられました」
私が言ったことは、夜の部屋に男女が一緒に居たと、女性が震源したことになる。
でも、本当の事なので、私は自分からそう言った。

「本当か?マルクス」
「はい。行きました。ですが、なにもしておりません。
 ただ話をしただけです」
「では朝、急いで戻っていたのは?」
「・・・・・・見て、おられたのですか?」
「たまたま見えたのだ。
 夜行った時に居なかったから、朝はどうかと思ってな」
朝もしっかりと、国王陛下に見つかっていたようだ。
「私が・・・原因で、夜中帰れなかったようです。
 本当に、何もなかったですから」
国王陛下は、私がそう言うと私の顔を立てると言って、それ以上は聞かなかった。
けれどマルクス様には、何かにつけてその時の事を聞きだそううとしたらしいことを、後で知った。
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