私の存在

戒月冷音

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第31話

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その次の日、お父様が王宮に呼び出された。
私は少し気になり、お母様のお部屋に向かう途中、我が家の家令が誰かに指示を出している場所に出くわした。
「奥様からの指示で、離れを使えるようにしてください。
 数人、使用人を準備しますが、今のところは今まで通りに」
「了解いたしました」
指示を受けた侍従は、直ぐに行動を開始する。
私は邪魔にならないようにしながら、そのままお母様の部屋に行った。


コンコン
「はい」
「お母様。ミシェルです。少しよろしいでしょうか?」
「いいわよ。入っていらっしゃい」
「失礼いたします」
中に入ると、先客の方が片膝を付きお母様の前に頭を垂れていた。
「こちらにいらっしゃい」
「ですが、その方は?」
「いいのよ。気にしないで」
お母様にそう言われ、気にはなりつつお母様の横に座った。

「それで?」
お母様は、私に構わず話を聞き始める。
「はい。王妃様は、カリス様を見限りエリス様に交代したようです。
 ですが、第1王子殿下は名前すら呼ばないようで、エリス様は泣いておられます」
「まぁ…母親と同じ名を、側室に入れたくはないでしょうね」
はぁ?侍女ではなく、側室なの?
「マイク殿は?」
「嫡男殿は側近候補…ではあるのですが、
 何かに特化しているわけではないので、役職が決定できないでいます」
「役職って、侍従でいいんじゃないの?」
「それではダメだと、王妃様が…」
「何か特別枠にいないと…ってことね」
「はい…」
「相変わらず、うっとおしい子なのね」
「……」

私は何も言わず、ただ聞いていた。
やっぱり、第一王子に王妃様が擦り付けようとしていた子は、ぽいっと捨てられた。
合わない…
たったそれだけで弾き飛ばされる。
そんな事、自分がなったことがないから、出来るんだ。
私はもっと、王妃様が嫌いになる。

「その後カリス嬢はどうなったの?王妃の実家に帰れたの?」
「それが…」
報告している人は言いにくそうにしている。
なので、
「…王城でお父様に会って、王妃様に言われたことをそのままお伝えしたのに、
 頑張ったなと言ってもらうはずが罵倒を受け、
 それを見ていたお姉様が匿っている…といったところでしょうか?」
私は、想像したことを言ってみた。

王妃様が姉に似ているということは、その親は両親に似ている…と思ったから、想像がしやすかった。
「なっ、何故、おわかりに?」
「なんとなく?想像して…」
「娘の言ったとおりなのね」
「は、はい。今は、エリス嬢の部屋で、隠れておられます」
「はーーっ…やっぱり、離れを準備してよかったわ。
 では、キリアに命を下します」
「はい」
「エリス嬢の理解を得た後、カリス嬢を離れにお連れするように…」
「畏まりました」
そう言うと、キリアと呼ばれた人は、すっと姿を消した。
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