私の存在

戒月冷音

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第32話

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「お、お母様。今の方は?」
「こめんなさいね。先に確認しておかないといけない事だったから…」
「それは、理解できましたが…」
「今のは我が家の影。
 一桁の人数しかいないけど、優秀な方々よ。
 さっきの方は、キリアという名で私専属。お父様にも専属がいるわ」
「そうなのですね」
「後回しにしてしまって、ごめんなさい。何かお話があったのでしょ?」
「えっと…カリス様の事だったので、ちょうどよかったかと…」
私は昨日マルクス様と話した事をお母様に伝えた。

「そう…マルクス様にも、ある程度の情報は入っていたのね」
「はい。心配はしておられました。
 けれど、それ以上手を出すことは出来ないとも、言っておられました」
「確かに。気には出来ても手を貸したら王妃の手がまた、側妃様に伸びるわ。
 マルクス様は、それを考えたのね」
「はい」
「本当に頭の回る方だわ」
お母様たちは知らないから、15の子供が…と思うのだろう。
けれど実際は、53歳まで生きた記憶のある男性。
私から見れば、年の功とも言える。

「ミシェルは聞いていたのだから分かって入ると思うけど、話しておくわね。
 数日後に、離れに来られるわ」
「あの…一つ、確認したいのですが…」
「なぁに?」
「カリス様の、ご実家の爵位は?」
「伯爵よ」
「では、そんなにかしこまる必要はない?でもお母様の話し方は…」
「私は、王妃様を基準にしてしまうから、こうなってしまうのだけれど、
 貴方達は、普通でいいと思うわ」
お母様の言葉に少し悩んだ私は、もし話すことがあったら、お母様と同じ様に話そうと思った。

第一王子と気が合わなかった…
確か、第一王子殿下はマルクス様より、おっとりした方だったと記憶している。
カリス様は、王妃様よりきつい性格なのかしら…

そんな事を考えていると
「カリス様は、ちっちゃな女王様みたいな性格よ」
と、お母様がポロッと教えてくれた。
「ちっちゃな、女王様?」
「そう。最後に生まれた女の子だから、望む分だけ構い倒していたら、
 わがままを当たり前と、思うようになったそうよ」
「そうよ…ってお母様。どなたかに聞いたのですか?」
「その伯爵家の夫人は、私の義妹の友達なの。この情報は義妹からよ」
「叔母様から…ではエリス様は?」
「あの子は変に、王妃様を崇拝してしまっていて…
 多分第一王子の前で、いかに王妃様が有能で美人でお優しいかというのを
 淡々と説明したのでしょう」

それは、嫌われて当たり前の事。
第一王子殿下は、王妃様の圧が怖いと言っていたらしいから。
同じ圧を出して、母親を褒め称えられたら、口も効かなくなるでしょう。
「そんな感じだから、もしかしたらエリス様も来るかも」
私とお母様ははーーーっ…と息を吐いて、これからのことを憂鬱に思った。
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