そして、夜明けが訪れた

いといしゅん

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惺の祖父

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僕が店の扉を開けると、そこには見慣れた店長の姿があった。
「いらっしゃいませ」
どんな店でも必ず聞く挨拶を聞き流しながら、僕は店長に聞いた。
「今日のオススメは?」
「今日は、試作していたブルーベリータルトが完成したのですが、いかがでしょうか?」
「じゃあ、それ………、ちょっと待ってください」
小泉が何を食べたいか聞いていなかったことを思い出したのだ。
小泉の方を見ると、それで良いよと言うように頷いていたので、
「ブルーベリータルト2つ」
と店長に伝えた。
それからしばらくすると、店長がブルーベリータルトを袋に入れて持ってきた。
値段分のお金を払い僕は、店を出ようとすると、店長が、
「少しサービスしておいたから、その子と楽しみなよ」
とニヤニヤしながら言ってくれた。余計なお世話だが僕は、嬉しくなった。
これが、僕がこの店によく訪れる理由だ。
店長が、優しいのだ。
店長を見ていると今は亡き祖父の優しさを思い出す。
僕に対して両親よりも祖父は愛情を持ち、
死ぬまで、いや死んでしまってからも精一杯僕を育ててくれたのだ。
例えば、今している一人暮らしをするお金は、
祖父が僕のために残してくれたお金を使って成り立っているものだ。
そんな祖父と店長の優しさが似ているからこんなにもこの店を訪れるのだ。
そんな風に祖父の姿を思い出していると、
「惺、大丈夫?ずっとぼやーっとしてたけど?」
と小泉に心配がられた。ふと、周りを見渡すともう家の前だった。
「ん、あぁ、大丈夫。ちょっと感傷に浸ってただから」
「そ。それなら良いけど、感傷に浸りすぎて目の前のことをおろそかにしないでね」
そうニヤつかれながら言われて、目の前を急いで向くが時すでに遅く、
僕は、家の外壁に思いっきりぶつかったのだった。
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