そして、夜明けが訪れた

いといしゅん

文字の大きさ
10 / 32

達川葵

しおりを挟む
さて、どう説明したものか。
そんなことを考えていると、葵がこちらへ振り向き、問答無用で葵からのビンタが飛んできた。
とそれを認識した時には、パチーンという快音が響き、
左頬に痺れるような痛みが発生し、僕は、床に崩れ落ちたのだった…

-------------

今日も、惺を驚かせてやろうと、いつも通りなんの予定も立てず家に押しかけた。
そして家に入れてもらい、というか半強制的に入り、リビングの扉を開けた。
私は、部屋の中を見て絶句し、呆然とそこに立ち尽くしている。これが私の現状だ。
視界を彷徨わせるとリビングのソファーに座っていた見知らぬと目があった。
一瞬、脳の処理が追いつかなくなった。
すぅー、はぁーと深呼吸をし、冷静さを取り戻した私は、するべきことをした。
右手を広げ、
惺が立っている後ろを向き、
思いっきり振りかぶった。
私の広げた右手は吸い込まれるように惺の左頬目掛け伸びて行き…

数秒後、パチーンという心地良い快音が家中に反響するのだった。

-------------

「……さて、この子は誰かしら?惺?」
葵は、冷えに冷え切った声と視線でこちらを睨みつけてくる。
声は静かに鼓膜に届き、視線は突き刺されたように痛い。
「えっーとな、これには月夜湖ぐらい深いわけがあって…」
「それ深いの?…」
と声と視線を変えないままツッコミを入れてくる。
怖い、葵さん怖いよ…
ちなみに、月夜湖とは駅から少し離れたところにある湖のことだ。
そんなやりとりをしていると、
「惺、この方は誰ですか?惺の友達ですか?」
と、小泉も葵と似たような声と視線でこちらを睨みつけている。
怖い、小泉さん怖いよ…
なんて思いながらも、え?何これ?修羅場?
などと考えられている僕は、脳内御花畑のバカなのかもしれない。
「…えっーとだな…」
とひと段落置いてからそれぞれの求めた説明をした。
説明中僕は、突き刺さるような視線を浴び続けましたとさ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

痩せたがりの姫言(ひめごと)

エフ=宝泉薫
青春
ヒロインは痩せ姫。 姫自身、あるいは周囲の人たちが密かな本音をつぶやきます。 だから「姫言」と書いてひめごと。 別サイト(カクヨム)で書いている「隠し部屋のシルフィーたち」もテイストが似ているので、混ぜることにしました。 語り手も、語られる対象も、作品ごとに異なります。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...