そして、夜明けが訪れた

恋に溺れて

恋っていうのは、溺れるものだと私は思う。
気づけば、その人のことしか考えられなくなり、自分のことなどどうでもよくなる。
そう、きっと私も恋に溺れた一人なのだ。

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ー私と付き合ってくださいー

私は祈るように、縋るように、しかししっかりと彼の目を見て、そう言葉を放った。
その瞬間、私のその言葉を後押しするように風がサァーと吹く。
ポニーテールに結んだ髪が揺れる。
彼の瞳が大きく揺れる。
その時、私は気づいた。気づいてしまった。
揺れ動く彼の瞳の奥に浮かぶ感情を……
この瞬間、彼からの答えはわかってしまった。
聞きたくない。
思わずそう思ってしまう。
しかし、私の中の何かが彼から直接答えを聞け。と囁いている。そんな気がした。
だから、私は彼の答えを待つ。
彼はしばらく俯いていたが、不意に顔をあげた。
その顔には、慈悲のような表情が張り付いており、私はなぜか恐怖を覚えた。
なに対する恐怖？
私はきっと彼に振られてしまうことが怖いのだ。

今、この瞬間、今すぐに、階段を下りれば、きっの彼の答えを聞かずに済む。
でも、ほんのわずかな希望を信じ、彼に受け入れられる未来を求めている自分もいる。

彼だったらこんなくよくよ悩むだろうか。
いや、彼ならきっとどんな答えを返されるとしても躊躇なんかしないし、逃げたりなんかしないだろう。
彼がそうするなら……
私だって同じようにしよう。

ふふっ……
思わず心の中で笑ってしまう。
どんな時も彼が基準の私に。
きっと、いつのまにか彼は私の中でとても大きな存在となっていたのだろう。

深く深く深呼吸をする。
告白した時にあれほど高ぶっていた鼓動は今となっては平然と落ち着いている。
きっと、答えがわかっているから。
きっと、もう諦めているから。
きっと、振られるとわかっているから。
「返事は今返したほうがいい？」
私は弾かれるように彼の方を見て、一瞬躊躇った後、私は首肯する。
私が告白した時のように風が吹く。でもそれは、さっきのような柔らかく包むようなもの風ではなく、

ー痛々しい突き刺すような風だったー

そして彼はその言葉を吐く。
「ごめん。君とは付き合えない」
結果はわかっていた。わかっていたはずなのに、両方の目から溢れる涙が止まらない。
「うっ、ううぅぅーー」
私は思わずその場に崩れ落ち、赤児のようにワンワンと泣く。
彼は私を振ったというのにも関わらず、優しく私を抱きしめてくれた。
ずるい。
これでは諦めきれないではないか。
もっと好きになってしまうではないか。
今日、私は振られた。けれど、まだ諦めたわけじゃない。
きっと私の物語恋は始まったばかりだ。そう信じて、私は今日も生きていく。