2 / 109
1 秘書の朝
1
しおりを挟むどうして苦手な取引先社長にいいようにされているのか――話は約1日前に遡る。
――――――
「おはようございまーす!」
私の1日は毎日午前8時半にスタートする。
女性向け化粧品メーカーCOCONOE化粧品本社ビル最上階。応接室と役員の執務室が並ぶフロアの一角にある秘書室。ここが私の職場だ。
黒瀬茉乃。25歳。現在COCONOE化粧品若き2代目社長――九重椛乃の秘書として椛乃社長をサポートするのが私の仕事。
デスクにバッグを置いて仕事用のタブレットとパソコンを立ち上げる。その後、ほぼ同じタイミングで出勤してきた専務の秘書を務める同僚が秘書室の一角に置かれた全身鏡の前から退いたタイミングで、同じように鏡の前に立って姿を確認する。
この会社には基本的に制服はない。化粧品を中心に美容商品を扱う会社だけあって服装は自由なオフィスカジュアルスタイル。それぞれが自分自身を着飾るお洒落が出来るのも魅力のひとつ。
「黒瀬さん、そのシフォンブラウス色可愛いね。買ったの?」
「うん、ずっと狙ってたんです」
「可愛いでしょ?」と鏡の中の自分と向かい合ってくるっと一回転。淡いピンクのシフォンブラウスはとろみ素材で肌触りが最高。ハイウエストのタイトスカートは形がお気に入りだし、それに合わせるパンプスも脚が綺麗に見えて大好き。
耳元には小さめのピアスにパール1粒のネックレス。腕時計もバンドが細身で文字盤も小さめのお洒落。家を出る前に軽く巻いた髪も乱れてはない。先週染め直したばかりの少し暗めのミルキーベージュの髪色は今までで一番気に入っている。少し赤みが強いリップの発色だってばっちり。
うん、今日も可愛い。うん、絶対可愛い! 私が一番!
こうやってお洒落できるから、毎日仕事前もウキウキで楽しい。隣の同僚だってお洒落なマーメイドスカートが似合っている。まあ、私の方が似合うかもしれないけど。
パソコンを立ち上げて、メールをチェック。急ぎのものから簡単な報告まで目を通して仕事のタスクを振り分ける。
時計の針が9時に近づいてくるとデスクの電話が鳴って手を伸ばす。青いボタンが光っている着信なので外線ではなく、社内の内線だ。
一息ついて、受話器を上げる。自然と口角があれば声のトーンもひとつあげた。
誰だろう? とは考えない。この時間の内線は――必ず相手が決まっている。
「はい秘書室。黒瀬です」
「おはようございます。今社長通られました」
電話の向こうから聞こえてきた声はオフィス受付にいる女性社員。毎朝社長が出勤して来るとこうやって電話をくれる。お礼を言って電話を切るまでは10秒もかからない。
「えっと――昨日受け取ったものはっと……」
電話が終われば、いよいよ仕事の始まり。昨日のうちに用意しておいた会議資料、タブレット、それからスケジュール帳を腕に抱えると、私は秘書室を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
嘘をつく唇に優しいキスを
松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。
桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。
だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。
麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。
そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。
6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。
まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。
今日は同期飲み会だった。
後輩のミスで行けたのは本当に最後。
飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。
彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。
きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。
けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。
でも、あれから変わった私なら……。
******
2021/05/29 公開
******
表紙 いもこは妹pixivID:11163077
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない
絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。
Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~
汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ
慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。
その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは
仕事上でしか接点のない上司だった。
思っていることを口にするのが苦手
地味で大人しい司書
木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)
×
真面目で優しい千紗子の上司
知的で容姿端麗な課長
雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29)
胸を締め付ける切ない想いを
抱えているのはいったいどちらなのか———
「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」
「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」
「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」
真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。
**********
►Attention
※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです)
※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~
蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。
嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。
だから、仲の良い同期のままでいたい。
そう思っているのに。
今までと違う甘い視線で見つめられて、
“女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。
全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。
「勘違いじゃないから」
告白したい御曹司と
告白されたくない小ボケ女子
ラブバトル開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる