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1 秘書の朝
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しおりを挟む「それと――先日A社の坂井社長へのお礼品ですが、候補幾つかピックアップしてます。今日中に決めてもらったら今週中に贈るよう手配します」
「ありがとう。――あっ」
朝の業務確認を続けていると、椛乃の視線がゆっくりと上がってくる。綺麗な黒い瞳がじっと見つめたのは私の唇。
「それ、 Rulleの新作?」
さすが椛社長。見るだけでわかるなんてすごい。
「はい、5番です。思ったより赤みが強いですけど、いい感じです」
「うんうん、似合ってる。可愛い」
ふわりと椛乃社長が笑って満足そうに頷く。そう言う今日の社長の唇はピンク系。多分だけど同じブランドの色違いだ。指摘すると大正解だった。「すごいね」と褒められると嬉しくなる。それにわかって当然――だって。
「私、COCONOEのコスメ大好きですもん!」
「ふふっ、ありがとう」
COCONOE化粧品は現在主に3つのブランドを扱っている。
1つ目が『 Kasane(カサネ)』
“香りを重ねて、私らしく”――創業以来、働く女性たちに寄り添ってきた上質なスキンケア&フレグランスブランド。柔らかさの中に芯のある香りが特徴。
2つ目が『 FIORE BLANC(フィオーレ・ブラン)』
“白い花”をコンセプトにした大人のためのコスメ・美容ライン。凛とした華やかさと気品で、現代女性の魅力をそっと引き立てる。
3つ目が『Rulle(リュール)』
“わたしを、惹きつける。”をテーマにした、感度高めな20代向けブランド。軽やかで甘すぎない香りと遊び心のあるカラー展開が人気。
Kasaneは落ち着いた香りで、仕事の日にぴったり。FIOREは休日や大事な日のためって感じ。Rulleは……私の勝負コスメって感じかな。
どれもお気に入りのブランドで、この会社に就職したのも好きなコスメブランドで働きたいと強く思ったから。
ブランドの商品は全部チェックしているし、商品知識だってばっちり頭に入っている。椛乃社長の纏う柔らかい香りがどれかもわかる。
だから椛乃社長のリップがどれかなんてすぐにわかる。ちょっとした特技みたいなもの。
「以上です。社長から何かございますか?」
「ううん、大丈夫。ありがとう。今日もよろしくね茉乃ちゃん」
朝の朝礼とも言えるスケジュールを終えると、椛乃社長がまたふわりと笑う。
社長と秘書なので基本的には「黒瀬さん」と社長は私のことを呼ぶ。だけど時折、茉乃ちゃん、って呼ばれる。
その時の声の柔らかい感じが好きだなと実感すると少しテンションが上がった私は「はーい!」なんて甘えた声を弾ませると、社長室を後にした。
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