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3 信頼と不満の会議室
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しおりを挟む概ね会議は順調――だったらよかったのに。
腕時計をちらっと見ると、もう5時半を過ぎです。
……椛乃社長、話盛り上がりすぎかも。
「いいですね。このイメージだと、これまでと少し差別化ができると思います」
「でしたら、この方向で調整して――」
予定していた議題はすでに終わっている。なのに、ふたりの話は止まらない。
お互い高い視座で、ビジョンも近い。Yoruiを本気で大切に思っているからこそ、話が熱を帯びるのはわかる。
……だけど、6時までに終わってくれないと、ネイルに間に合わない。
私が何度も時計を見てしまうのはそのせいだ。
LUNARIA側の社員たちはすでに報告を終えて退席していて、会議室には社長ふたりと秘書ふたり。秋月さんは、相変わらずきっちり書記を務めている。私も同じく議事録をまとめているけれど、どうにも集中できない。
――ああ、やっぱりネイルはキャンセルしておくべきだった。
「……何か気になることがあるのか?」
「えっ!?」
低く落ち着いた声に、心臓が跳ねた。腕時計に向けていた目線を恐る恐る上げると、久世社長の視線がまっすぐこちらを射抜いていた。
「さっきから時計ばかり見ているようだが」
……多分、睨まれてるわけじゃない。でも、睨んでるって思われても仕方ない。
「いえ、このあと、少し予定がありまして……」
けれどこれは、むしろチャンスかもしれない。予定より長引いているのは事実。そろそろ話をまとめるべきだと進言しようとした――その時。
「あっ、茉乃ちゃん、ネイル何時からだっけ? もう出ないと間に合わない?」
「ネイル……?」
椛乃社長からぽろっと漏れたその一言に、久世社長の眉がぴくりと動いた。
そして、また視線が私へ。
さっきより……怖い。
椛乃社長は、社員たちが退室したことでふっと緊張が緩んだのだろう。余計なことを言ってしまったと気づいて、すぐにその口元を細くて綺麗な指で覆った。
「黒瀬秘書は、相変わらず忙しいようだな」
「……終業後に私が何しようと、久世社長には関係ないはずです」
しまった。低くて不満げな声につい反射で言い返してしまった。それも、ちょっとだけ……嫌味っぽく。
「そのようだな」
そう言って、久世社長はまた私を一瞥。
……こういうこと言うから、品定めされるのかも。反省しても、もう遅い。言っちゃったんだから。
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