わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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3 信頼と不満の会議室

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 私のせいで止まった話。どう空気を変えようか。だけどそれは心配不要だった。

「久世社長も本日会食の予定が入ってます。続きは別日にするのはどうでしょう?」

 久世社長とは違う柔らかで爽やかな声が会議室の空気を循環させてくれた。相変わらず秋月さんは仕事ができる。
 その声のお陰で本当にミーティングが終わってしまった。

 最後に次回のミーティングの日程を確認。来月の予定はもう組んでいるが、今日の話を忘れない内にもう一度近く社長同士で軽いミーティングをしようという話になった。

 椛乃社長のスケジュールを確認し空いてる日をチェック。えっと、とつい声が零れた。
 最初に提案してきたのはLUNARIA秘書の秋月さん。
 
「来週の水曜日はどうでしょう? 午後から対応出来ます」
「申し訳ございません。その日は別の方とのアポがありました。金曜日はどうでしょう?」
「金曜日は出張でして、対応が難しいかと」

 椛乃社長は日々忙しい。社内業務、会議、接待、店舗の視察。時には出張まで。それは久世社長も同じだから、中々予定が合わない。

 こういうことになるから、早めに予定を組んでいる。だから今更近い内になんて言われても困る。つい頬が膨らんでしまえば「そうですね……」と息を零す。

「この火曜日はいかがでしょうか?」

 何度目かのやり取りの末に、秋月さんの提案にスケジュール帳を指でなぞる。書いてある予定は午前中の店舗視察のみ。ここならいけそう。

「この日程なら大丈夫かと。午後からでよければ……あっ」

 と、思ったけど訂正。
 この日は確か――。

 自分用のスケジュールを開けば指定された日には『半休』と記入してあった。そうだ。この日は――。

「私が午後からお休みをいただく予定でして――友人とスパに行く予定がもう……」

 最後の方はつい声が小さくなってしまったけど、絶対に予定は変えたくなかった。私のそんな気持ちは、きっとその場の全員に伝わっていたと思う。もちろん――久世社長にも。

「……随分忙しいみたいだな黒瀬秘書は」

 はあ、と小さく呆れた溜息。こういう時秘書の予定で社長たちの予定を邪魔しちゃいけないことはちゃんとわかってる。

 けど1ヶ月前から決めてた予定を今更変えたくはない。それに半休はもう申請済みだもん。

 久世社長の視線が私に向けられ、鋭さが増した気がした。まるで私の言動ひとつひとつをすべて見透かされているような気がして、言い訳を口にすることすらできない。
 それでも私は目を合わせないようにして、ただ冷静に答えることしかできなかった。
 

「では予定調整してまた改めてご連絡します。社内のスケジュールでしたら変更出来る日もあるかもしれませんし」

 間に入ってくれた椛乃社長が話をまとめてくれた。秋月さんも了承してくれたが、久世社長はあくまで私に思うことがあるみたい。

 久世社長の視線を無視して、私は顔を背ける。「文句でもありますか?」と本当に言いたかったけど、今は言えない。
 予定を守りたい気持ちを、ぐっと堪えて言葉にしなかった。

 そんな目で見られても、予定は変えられないもん!
 その代わり、心の中では思いっきり文句を言ってやった。

 
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