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4 冗談のつもりだったのに
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しおりを挟む「黒瀬秘書はいつも九重社長より自分の予定が優先のようだな」
「そんなことありません。九重社長の予定が優先です」
私の態度が気に障ったのか、また嫌味を言われる。
この冷徹社長……もしかして文句を言う為に私を呼びよせたの? いや、それはないか。だけどまたムッとしてしまえば言い返さずにはいられない。
「ですが、本日のように突然ミーティングの開始時間が変わったり、伸びたり、急に来週にミーティングが入ったりすると私生活に支障が出ることだってあります」
誰のせいでこんなことになってると思ってるの?
さすがにそう言うのはマズイだろうか。仮にも相手は取引先の社長。もしも私が無礼を働けばCOCONOE化粧品の名前と信頼に傷がつくことは……一応ちゃんとわかっている。
それでもはっきりと言ったのには理由があった。
私のスケジュールが崩れるのはまだいい。だけど同じようなことが続いて尊敬する椛乃社長に迷惑がかかるのは困る。そう続けようとした。
けど出来なかった。
「……な、なんですかっ!?」
重たい足音が床に響くたびに、背筋がじわりと凍るようだった。
まるで叱責の前の“間”を楽しんでいるかのように、久世社長はわざとゆっくりと近づいてくる。 隠れるように一歩下がったけれど、視線は逃げられなかった。より近くから見下げられると声が上ずって後退りしてしまいそうになる。
この威圧感、冷たい声――怖い。
「聞かせてくれないか?」
「……なにを……ですか?」
「君のような『わがまま』な秘書がどうして九重社長の秘書を務めてるんだ?」
なにそれ……。失礼にも程があるでしょ!
私が椛乃さんの秘書として劣ってるって言いたいってこと? そんなの酷い。
よっぽど秋月さんが優秀ってこと? それともネイルやスパを理由にスケジュールを乱す私が嫌いってこと?
だからこの人が苦手。前から思ってたけど――久世社長は私を見下してる。
私は私なりに頑張ってるし、それは椛乃社長だって認めてくれてるのに。
悔しい……!
どう言い返そう。どう言って久世社長の言葉を否定しようか。威圧的な態度にいつまでも怯んではいられない。
言い返さないと――だけどすぐには出来なかった。
嘲るように口角をほんのわずかに吊り上げてから、久世社長は冷ややかに言い放った。
「そのご自慢の身体でも使って秘書にでもなったのか?」
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