わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

文字の大きさ
28 / 109
6 逃げられない記憶

4

しおりを挟む
 

「え? 結局合コンの人と付き合ってるんですか?」
「うん、あのあと何回かデートして」

 順調に仕事をこなす午後、2件の定例ミーティングを終えた私は秘書室で議事録作りに励んでいた。
 マーケティング部、開発部との定例ミーティングの要約や、質疑応答の内容など。これがあると、次回の会議の時にも振り返ることが出来るし、椛乃社長の負担を減らせる。

 そんな私の隣のデスクに座るのが2歳年上の役員秘書。その彼女――高梨香澄たかなしかすみさんからの報告には驚いた。

 先輩秘書である香澄さんはザ・キャリアウーマンって感じで、専務と常務の2人を担当している優秀な秘書。秘書としてのノウハウは香澄さんから教えてもらったことが多い。

 時々プライベートでの付き合いもあって、先月一緒に合コンに行ったのは記憶に新しい。合コン相手はある食品会社の人で、香澄さんの友達の紹介だった。

 合コン自体は盛り上がったし、料理もおいしかった。私は何人かから連絡先を聞かれたけど、後日会いたいと思う人はいなかったし、明らかにホテル狙いの人もいた。すっかり忘れていたけど、そうか……香澄さんは。

「香澄さんの隣に座ってた人ですか?」
「そう。2歳上なんだけど、今のところ関係も落ち着いてていい感じ」
「おめでとうございます!」
「ありがとう茉乃ちゃん」

 香澄さん彼氏途切れないんだよな……。この2年間、彼氏がいなかった時期はほとんどない。キャリアウーマンで、恋愛も積極的なのは香澄さんの魅力のひとつってことみたい。

 一方の私はこの2年ぐらい彼氏はいない。

 前に付き合ってたのは仕事関係で出会った人だけど、相手が地方に転勤なったのをきっかけに別れた。元々向こうからの積極的なアプローチに負けて付き合うことになったのもあって気持ちがすごいあった訳ではない。だから別れ話を切り出すのは簡単だった。

 丁度そのタイミングで椛乃社長に誘われて秘書になったから、それ以降は仕事一筋――ってことにはなってる。

 けれど定期的に合コンも参加するし、クラブにだっていく。この見た目だもん。私はモテる。ワンナイトの経験だってある。だけど――どうしても、今は『新しい恋』って感じに気持ちがならない。

 ――俺が調教してやる。
 
 「――っ!」

 ゾクリとする声の記憶に、背筋が震える。

「茉乃ちゃん?」
「あ、なんでもないです! 羨ましいなあって!」

 今日何度目かわからない。久世社長の顔や声を思い出すたび、じんわりと熱が這い上がってくる。

「さぁーってこれ仕上げないと!」
「社長秘書も大変だね」

 頑張ります、とわざとらしく気合いを入れるように声を弾ませてパソコンと手元の資料に意識を集中させる。
 お願いだから出てって。忘れたいんだから!

 軽く頭を振って、集中しようとする。けど出来ない。そしてその理由はわかっている。

 ――明日久世社長がウチに来るなんて……。

 パソコンの端に貼られた1枚の付箋が視界に入り込む度、明日の予定を思い出してしまう。

 久世社長に触れられたあの日に急遽組んだ合同ミーティング。お互いの仕事を整理した結果、明日14時にLUNARIA側がウチにくることで話が纏まった。

 つまり嫌でも久世社長と顔を合わせないといけない。ほんと最悪。
 
 香澄さんにバレないように小さく息を吐く。これ以上心を乱されたくなくて、貼っていた付箋を剥がすとゴミ箱に捨ててやった。

 どうせ――どうあがいてもこの予定は忘れられないんだから。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

処理中です...