わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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7 支配者再び

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「茉乃ちゃん、そろそろ下に降りてて。久世社長と秋月さんの案内お願い。私は先に会議室に行ってるから」
「かしこまりました」

 時計の針が改めて伝えられていた到着時間の5分前になると、椛乃社長の指示で社長室を出る。
 とうとうこの時が来ちゃった。
 エレベーターに乗る前に、さっとトイレの鏡で化粧や髪型をチェック。頬が若干赤い気がするけど、多分大丈夫。今日はちょっと気温が高いから、そのせいにしよう。

 久世社長どんな顔して来るのかな? あの人のことだから……あんなことがあっても、いつも通りな気がする。慌てているところなんて全く想像できない。
 
 多分きっと、いつもみたいに冷たい目で私を見る。そして何事もなかったように淡々とミーティングをこなすのだろう。その様子は簡単に想像できるのちょっとムカつく。

「平常心、平常心……」

 エレベーターの中で何度も言い聞かせる。本当は頬を抑えて熱を治めたい――けどそんなことしたら化粧が崩れちゃう。

「久世社長なんか怖くない……あんな人ちっとも――っうわっ!?」

 1階エントランスに到着したエレベーターの扉が開く。その瞬間、見知った顔が瞳に飛び込んできて、あまりに突然の出来事につい驚きの声が零れた。

「……どうした?」
「く、……久世社長、お世話になっております」

 扉の向こうでエレベーターを待っていたのは、私が出迎える筈だった久世社長。その一歩後ろには秋月さんが控えている。
 しまった、もう到着してたんだ……鏡見るより先に降りればよかった。そんな後悔はもう遅い。
 久世社長は 何も言わない。変わりに口を開いたのは秋月さんだ。

「お世話になっております。すみません、予定より早くついてしまって」
「そうだったんですね。でしたら会議室へご案内します……! どうぞ」

 予想外のタイミングでの邂逅に心臓のリズムが崩れる。慌ててエレベーターの『開』ボタンを押して、扉が閉まらないように手で押さえる。久世社長がエレベーターに足を踏み入れると、覚えのあるウッド系の匂いにまた例の記憶が頭を過る。

 ほらやっぱり。久世社長はいつも通り。ミディアムグレーの高そうなスーツを着て、相変わらず隙がない――後ろに立たれているだけで、背中がひりつく。視線が、まるで熱みたい。

 平常心、平常心。何度も繰り返し言い聞かせる。

「今日はお忙しい中、お時間をありがとうございます」
「いえ、こちらこそご足労ありがとうございます」

 秋月さんの柔らかい声が、沈黙を緩和してくれるのは助かる。こういうところが優秀な秘書って感じ。もちろん私も負けてないけど、さっき声を上げてしまったので今日の優秀度は秋月さんが一歩リードしてしまった。

 悔しい……久世社長に私は出来る秘書だって証明したいのに。出鼻をくじかれちゃった。

「……っ!」

 絶対見られてる。背中にすごい視線を感じて、身体の体温が上がっていく。
 多分今、顔が赤くなってる。どうにかしないと――。平常心、平常心。
 
 とにかく早く、エレベーターが開いて。お願い――この時間、終わって……!
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