わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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8 再会の応接室

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「こちらです。どうぞ」
 
 会議室を出て、社長室横の応接室へと久世社長と秋月さんを案内する。
 桐嶋室長が言ったように、確かに午後のティータイムの用意が出来ていた。

 テーブルの上には、C社専務が持って来たであろう艶のある黒い小箱。その蓋には、金の箔押しで季節の草花があしらわれていた。さらにテーブルには小皿類も用意済み。

「久世社長、こちらへどうぞ」

 久世社長に上座を勧めた後、改めてテーブルの上へと目線を落とす。

 小箱の側面に控えめに刻印された店名は見覚えがある。浅草の老舗和菓子店で、以前もC社の専務から貰ったことがある。
 芸術品のような繊細な見た目に、上品な味。椛乃社長も好きと言っていたし、私も前回秘書の身で2つももらっちゃった。
 まだ蓋は開いていないが、あの店ならきっと、季節の和菓子の詰め合わせに違いない。

「和菓子のようですので、お茶をご用意いたします」

 久世社長が重厚感のある来客用のソファに座るのを見て、言葉を絞り出す。秋月さんは立ったままなので、座るように促せば、軽い会釈の後、一度お茶を作る用意するために応接室を出る。
 
「……はあ……」

 背後で応接室の扉が閉まった瞬間どっと肩の力が抜ける。

 桐嶋室長が変な気を使わなかったらとっくに久世社長はLUNARIAに帰ってたのに……!

「30分ぐらいだよね……多分」

 他の来客ならともかく、久世社長がゆっくりとお茶して休憩してるなんて想像出来ない。きっと今回も社交辞令みたいな感じでOKしただけ。さっと食べて帰っていく――お願いだからそうしてほしい。

 秘書室へと戻れば奥にある小さな給湯スペースへ。来客用の特別な湯呑と、急須、それから香りのよいお茶っ葉を用意する。湯呑は3つ用意した。椛乃社長、久世社長、それから秋月さんの分。あくまで来客対応なので、私の分はもちろんない。その場で進められたら――普段なら「お言葉に甘えて……」ってご一緒するけど、久世社長相手にそんなことはしない。
 
「お茶出して、すぐ退出すればいいよね。ちょっとしたお茶だし……」

 そう言い聞かせて、また息を吐く。心なしか心臓のリズムがまだ乱れている。それもこれも、さっきの久世社長の視線のせいだ。

 久世社長があんな目で見るから……。一体……久世社長の目に私はどう映ってるの? 

 そんな感情のせいで、急須でお茶を蒸している間、秘書室の全身鏡で姿をチェック。うん、おかしいところはない。いつもと違う、ちょっと露出少な目に見えるスタイルだけど、変なところはない。いつも通り――可愛い私が鏡に映っている。

「よし、あとちょっと……!」

 大丈夫。お茶を運んで「失礼します」って言うだけ。そしたらもう終わりなんだから。椛乃社長もすぐ来るし、秋月さんもいる。2人っきりなんてなるはずない。

 そう思っていたのに――。

 「――……え?」

 再び応接室の扉を開けた私は、思わず小さな声を零した。
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