わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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8 再会の応接室

2 ※

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 応接室にいたのは久世社長だけだった。
 どういうこと……?

「あの……秋月さんは?」
「急ぎ対応の電話で席を外している。その内戻って来る」

 零れる疑問に淡々と久世社長が堪える。低くて、威圧的な声は私を絶望させるのに十分だった。
 あれだけ2人っきりになりたくないと思ってたのにまた2人っきりだ。こんなのって最悪。――平常心、平常心。

「そうですか……九重もすぐ参ります。……こちら、どうぞ」

 膝を折って、お茶用意したお茶をセットする。久世社長のことだから椛乃社長が来るより前に食べるなんてことはしないだろう。

 声は少し震えてしまったかもしれない。それでも、せめて手だけは平静を装って茶器を置いた。立ち上がって一礼したその瞬間、自分の中の緊張の糸がぷつりと切れたような気がした。

 よしこれで終わり。……なんて考えは甘かった。

「どこへ行く?」
「何処って……秘書室で待機を」
「来客を1人にするつもりか? こういう時はお前が世間話のひとつでもするべきじゃないのか?」
「……それは……っ」

 最もな台詞にぐっと唇を噛む。睨みたい気持ちをなんとか堪えるが、久世社長の低い声が続いた。

「今日は随分口数が少ないな。いつもの生意気はどこに行った?」
「……そんなこと」
「それとも――」
「――きゃっ……っ!」

 ぐいっと突然身体が引っ張られる。小さな声を上げた時には耳元に低い声が落ちて、ゾクリと背筋が震える。

「逃げようとしたんじゃないだろうな?」
「ぁ……っ!」

 じんじんと脳に直接響く低音。身体がソファに座る久世社長の上に落ちて、後ろから抱きしめられているような形になっている。

 なにこれ……背中に感じるこの体温、嘘でしょ……? こんなの……誰かに見られたら……!

「逃げるなと言った筈だ」
「……っ、久世社長……離し、て」
「ダメだ」

 久世社長の指が――あの私を翻弄した指先が、ゆっくりと腰を撫で上げる。それだけで一気に熱がぶり返して、あの日の記憶がフラッシュバックしてきた。
 
「どうして、今日こんな格好をしている? 自慢の脚を隠して身を守るつもりだったのか?」
「ちが……っ、そんなわけ……ん」

 ここは職場の応接室。そのソファの真ん中で――久世社長の指がブラウスの上から胸へと伸びて来る。まるで形を確かめるように。

 ビクンッと腰が跳ねる。やだ、そんな触り方……っ、けど……。

「言っただろ? わがままな秘書は調教してやると」

 体の奥に隠れた熱を引き出す吐息に思わずぎゅっと脚を閉じたのは完全に無意識だった。
 
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