わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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9 このままじゃ

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 結局着替える時間もなくて、家を飛び出る。いつも通り駅まで歩いて電車に乗って会社へ出勤。
 だけど電車の中でまた心臓がドキリと音を立てた。

「それLUNARIAのやつ?」
「うん、発色良くていい感じなんだ!」

 女性専用車両は空いていて過ごしやすい。今日は座れてラッキーだが、正面のシートに座る同世代ぐらいのOL達の会話に耳を傾けたのは間違いだった。

 ……LUNARIAの商品だ。

 丸い手鏡を手に口紅を塗り直しているOLが持っているのはLUNARIAが手掛けるブランドのひとつ。LUNARIA Eidosルナリアエイドスは男女問わず使えるユニセックスメイクアップライン。“個性を際立たせる”がコンセプトで、今人気の商品のひとつ。
 私は持ってないけどちゃんとリサーチはしている。

 だから気づいてしまったし、また久世社長の顔や声を思い出す。もちろん――あの指から与えられたものまでも。

 ――調教してやる。

 そんな宣言から約1ヶ月。全部で4回。久世社長と触られた回数だ。

 最初はLUNARIAの社長室。2度目がCOCONOEの応接室。あれだけで終わればよかったのに――。

 3回目は先週。Yoruiの交渉で取引先を訪れた帰り道。LUNARIAの社用車で会社まで送ってもらった時。「確認したいことがあるって」言われて、私だけ残されて――。

 4回目はまさに昨日。

 書類の行き違いあって、椛乃社長に頼まれてLUNARIAに行くことになってまた社長室で――。

 どちらも一方的に身体を撫でられて、敏感なところを責められた。

 2人っきりにならないようにって思ってる時に限って、何故か2人になってしまう。そのせいで、身体がおかしくなってしまった。

「――っ!」

 電車の中なのに内ももが熱を帯びるのを感じる。
 思い出しただけでまだ身体が疼くのは、昨日のことをまだ覚えているから。いや、昨日のことだけじゃなくて、全部を身体が覚えている。

 耳に触れる低音。身体を這う太い指。大きな掌――快楽へと導く、じれったい愛撫も全部。
 久世社長に身体が翻弄されている。まるで本当に――調教されてるみたいに感じて、やばい。

 生意気、わがままと言われて、素直になれと何度も言われて、抵抗しても全然解放してくれない。普通に考えたら取引先の秘書に手を出すなんてあり得ない。

 だけど、久世社長に何度もイカされてるなんて椛乃社長にバレたくない。こんなこと……久世社長が満足したら終わるに決まってる。あの久世社長が私になんて長く執着する訳がない。

 多分もうちょっとの辛抱。新しいおもちゃを見つけたらきっと――私は解放される。

「……っあれ?」

 そう考えた時、ほんの少し胸が騒めいた。多分、身体がおかしくなってるせいだ。
 
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