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10 支配のキス
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しおりを挟む「……久世社長?」
ドキリと音を立てて、心臓のリズムが早くなる。
見間違え? ずっと考えてたから幻覚? ……いや、違う。久世社長だ。いつもと同じ高そうなネイビーのスーツを着て、私を支配するような冷たい目で見降ろしてくる。
「何故ここにいる?」
「それは……こっちの台詞ですよ」
かあっと顔に熱が集まって身体の奥が何もされないのに反応する気配。
まさに今、考えていた人が目の前に現れるなんて、都合がよすぎて現実味がない。なのに、私はどうしてまた頬を染めちゃってるの?
「友人との食事だ」
「……意外です。久世社長が……」
平常心を装っても無理だ。声が微かに上ずって、なんとか久世社長の話に耳を傾ける。
久世社長が友達とディナーなんて想像出来ない。しかもこんなに賑わうビストロで。
この店で誰かと食事を楽しむより、バーやラウンジで静かに飲んでいる方が想像出来る。そんな感情がちょっとだけ顔に出てしまった。
「不満そうな顔だな。俺が友人と食事をするのがそんなに珍しいか?」
「……っ!? い、いえ、そんなことは……」
仕事終わりだというのに久世社長には隙がない。ちらりと目線をあげれば瞳同士が絡み合う。プライベートなのに、まるで仕事中みたいな威圧感。この人にオフの姿なんてあるのかな?
確かにすごい違和感がある。けど久世社長だって人間だし、友達ぐらいるはず。そんなことより――。
「お前は誰と来た? 九重社長はいるのか?」
「いえ、プライベートです……」
「そうか」
合コンに来るのは私の勝手。だけど、ここで「合コン中です」なんて言ってしまったらどんな反応をするのかわからない。怒る? それとも「楽しめ」なんて嫌味を言われる? どっちにしても一秒でも早く離れた方がいい。
ただでさえ久世社長のことばかり考えちゃうのに直接会ったら……ますます考えちゃう。
「茉乃ちゃん」
「はい……っ! あ、……」
戸惑う私に掛けられる第三者の声。目線を動かせば、久世社長の後ろから高橋さんが現れた。
やばっ……!
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