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10 支配のキス
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しおりを挟む「今すぐ帰れ」
「そんなこと出来るわけ……!」
「これは命令だ」
「っぁ……」
ビクンッと身体が跳ねる。腰のカーブをなぞるような動きが、スカートの布越しに太腿へと移動して――ぞくりと背筋が痺れる。
ダメっ、こんなところで触らないで……!
「わかったか?」
「やだ……っ、なんで、そんなこと……!」
「反論するな」
「だってぇ……、やっ、そこ……ぁ!」
睨むように見上げると、顔が近づいてることに気づく。冷たくて、威圧的で、だけどかっこよくてみんなが見惚れるカリスマ社長がそこにいる。その唇が近い。繰り返される低音に背筋が震えちゃうのは多分そのせい。
――それと腰を撫でた手が太腿に伸びたせい。
これ以上は本当にダメ。早く戻らないと。久世社長に合コンを止める権利なんてないんだから。
「黒瀬」
「……っ、なに、離してって……!」
ゆっくりと唇が動いて顔を覗き込まれる。真っすぐに私を見つめる男の瞳に逃げられないと悟った瞬間、腰の奥が疼く。太腿に触れた指が昇ってくることを――まるで期待してるみたいに。
戸惑いの中、更に唇が近づく。
唇が触れる寸前、彼はふいに動きを止めた。代わりに、形のいいその唇が、低く甘い声で私の自由を奪っていく。
「お前はもう俺のものだ」
一方的な宣言の共に柔らかな熱が唇へと触れる。
こんなにも冷たい視線の持ち主なのに、触れた唇は暖かく感じて、自然と瞼が落ちてしまった。
私、今……久世社長とキスしてる。
一方的な宣言と共に触れた唇は、思っていたよりも優しかった。こんなにも冷たい瞳の持ち主なのに、こんなにも……やさしい。
これまで何度も翻弄されてきたのに――唇が触れるのは、これが初めて。
こんないつ誰が来るかわからない場所で、“あの久世社長”と――その背徳感が私の感情を麻痺させる。
触れるだけの口付け。拒まなきゃいけないはずなのに――できない。
どうして――この人に触れられると、こんな風に心が乱されてしまうのだろう。
「わかったか?」
「……っ」
もう一度瞳を覗き込まれるとまた私が映っている。頬を染めた、女の顔が。
心臓の鼓動が早まって、上手く息が出来ない。何が起こってるかちゃんと理解出来なかった。
ひとつだけわかるのは――久世社長のキスが甘くて、離れた唇が熱いってことだけ。
心も身体もこんなに乱されたままで――合コンに戻るなんて、できるわけがなかった。
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