わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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18 零れ落ちた本音

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 都合いい女になんかなりたくない。一方的な調教宣言や独占宣言なんてあり得ない。
 だけど、弱っているせいか、この冷徹社長に心配しもらいたいと私の中の“わがまま”が訴えている。

 「……っ、最悪」

 零れた言葉の矛先は久世社長じゃない。こんなこと口走ってしまった自分自身を指している。
 それでも口から飛び出たことは取り消さない。逃げる場所もないし、多分きっとそうすることはできない。

 零れ落ちた恥ずかしい一言にも関わらず久世社長の眉ひとつ動かさない。そしてまた沈黙が流れる。

 『言え』って命令しておいて、黙るのもまたズルい。なんとか言ってよ。そう言いたかったけど、唇を動かすより前に久世社長の低音がようやく落ちてきた。

「お前の“わがまま”にはうんざりしていた」
「……そんなの」

 知ってるし。っていうか、『言え』って強く言ったのそっちじゃん。それをわがままって意地悪。やっぱり私を困らせたいだけなの?
 頭を過る不安。だけど久世社長の言葉はまだ終わってなかった。

「――が」

 顎に添えられた指先がそっと頬を撫でて、それから、目の前の“冷徹だったはずの”久世社長の唇が近づいてきた。

「今の“わがまま”は悪くない」

 キスされるとわかった時には瞼を落としていた。唇が塞がる寸前に落ちてきた低い声が、いつもより少し甘くて、心臓が跳ねた。きゅんって、久世社長との間には似合わない音がした気がする。

 だって瞼を落とす前に見えた久世社長の口元が微かに緩んでいた気がするから。初めて見た、久世社長の新しい一面。この人こんな顔するんだ。

 あの夜みたいな荒々しいキスではない。優しくて、甘くて、心臓がくすぐったくて。求めていた言葉はひとつももらえなかったのに――なぜか心が喜んでいる。

 だからキスを拒めなかった――いや、拒みたくないと心が訴えた。こんなこと口にはできない。離れた唇の温もりが名残り惜しいなんて言わない――絶対に。

「また連絡する」
「……はい」

 最後にまた頬をひと撫でされると久世社長はあっと言う間に寝室から消えていった。足音に耳を傾けているとすぐに玄関のドアが閉じて、その音を聞いた私はようやく布団にもぐり込んだ。

「~~っ、なんなのもう……こんなの……」

 都合いい女になりたくない。
 肝心なことを何ひとつ言ってくれない、冷徹社長なんか嫌い……。私の意志なんて無視だし、冷たいし、いつも突然現れるし。

 だけど――優しいところもある。気づきたくないのに、気づいてしまって。それから――。

 やっぱり来てくれて嬉しいって気持ちが溢れて、胸がいっぱいで、気持ちが暫く落ち着きそうにない。

 唇に触れると、まるで熱がぶり返したみたいに熱くて、ぎゅうって心が締め付けられた。
 
 
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