わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

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19 知らない感情

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 ずっとドキドキしてる。
 それは一体――誰のせい?
 
 
 久世社長が突然看病に来た翌日、まるで魔法みたいに風邪は何処かに消えてしまった。仕事を休む理由はなくて、出勤して休んだ分の仕事をこなすので先週は精一杯だった。

 そしてあっと言う間に久世社長と再会する日がやってきた。
 
「撮影の日ってどうしてこんなにドキドキするんだろうね?」
「それわかります。すごいソワソワしませんか?」
「うんうん、しちゃうね」

 運転手の佐藤さんが運転する社用車の中で隣に座る椛乃社長がさっきからずっと今日の資料と睨めっこしている。何度も読み込んで進行表や構図を確認しているみたいで、ようやく顔を上げたと思ったら綺麗な顔がふわりと笑顔に変わる。少し肩を竦めながらの質問に私もまた頷いた。

「今日は男性モデルが新しい方ですもんね」
「そうだね。けど、イメージはばっちりだし。あとはスタイリングとかでYoruiのイメージにより近づけていきたいかな」
「わかります」

 今日はYoruiの広告撮影日。都内のスタジオを借りて一日がかりで行う。

 この撮影がどう行くかで、売上も変わる。だから撮影日の椛乃社長はいつも緊張してそわそわしている。落ち着かないのか朝から口数も少し多い。

 だけどその気持ちわかるな。

 秘書になる前も広報部だったから、広告撮影はよく立ち会った。ひとつの小さな商品がセットや照明、それからモデルと交じり合うことで価値が高まっていく。その瞬間に立ち合えるが新入社員の頃は新鮮で、楽しかったし興奮した。もちろん、その感覚は今も変わらな。
 
「上手くいきますように」
「大丈夫ですよ。商品もモデルもばっちりですから」

 秘書として今は社長を励ます。

 特にYoruiはLUNARIAとのコラボブランド。自社だけの商品ではない分、広告撮影には椛乃社長も一日同行する。もちろんそれはLUNARIA側も同じ。つまり――久世社長もいる。

 いつもは数時間会議で顔を合わせるだけ。なのに今日は一日中一緒。

 ちらりとお気に入りの腕時計に目線を落とす。まもなく10時。撮影終了予定は夕方5時。片付けて撤収する頃には6時頃になってるかもしれない。

 その間ずっと久世社長と同じ空間にいる。それを考えるだけで――心臓が変な風に波打ってしまう。
 
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