わがまま秘書は冷徹社長の独占愛に溺れていく

椿綾あこ

文字の大きさ
98 / 109
19 知らない感情

2

しおりを挟む

 この前久世社長とまたキスをした。
 一度寝た関係だから今更キスぐらいで騒ぎたくない。――けどこの前のキスから私はちょっと変だ。

 もともとこの関係が始まった時から久世社長のことばかり考えているが、これまで以上に考えている気がする。
 あのキスのことをずっと考えて、唇が熱い。心臓もそわそわとくすぐったくて――。

 『今の“わがまま”は悪くない』

 キスする寸前のあの言葉もまた頭から離れない。あんな風に本音を引き出されて悔しかったはずなのに。あの冷徹社長が看病に来てくれたって事実が私をまだ混乱させてるのかも。

「茉乃ちゃん今日は長丁場だから体調悪くなったらすぐに言ってね」
「ありがとうございます。椛乃社長こそ、無理はしないでください」
「うん、ありがとう」

 緊張はしているけど、椛乃社長は今日も優しくて素敵。体調が戻ってることは何度も伝えているのにこうやって気遣ってくれるなんてどれだけいい人なんだろう。

 そんなことを考えている内に、車は目的地へと到着。佐藤さんにお礼を言って車を降りたところで一度目線を足元へ。車のフォルムに映った自分の姿をさっとチェック。――うん、今日も私は可愛い。

 今日の格好は動きやすさとYoruiをイメージして胸元に黒いリボンタイがついたホワイトのブラウスに、ブラックのハイウエストショートパンツ。足元はヒールが5㎝程度の黒いショートブーツ。外はぽかぽか陽気だけどスタジオは寒いこともあるから薄手のカーディガンを羽織っている。
 
 いつもより落ち着いた感じに見えるかもだけど、おしゃれで好きなコーデのひとつ。
 髪はゆるく巻いて、片側を耳掛けスタイル。添えられているヘアクリップは――久世社長からプレゼントされたもの。
 
 だって普通、何かを貰ったら、それを使っているところを見せるのが“礼儀”でしょ? なんて……嘘。そんなの言い訳。貰ってからずっとこのヘアクリップを使っている。

 それでも実際付けているところを見て、久世社長はどんな反応をするだろう。

 まだ顔も見てないあの人のことをまた考えてる。
 無意識にヘアクリップに触れた指先。たったそれだけであの夜のキスが蘇っちゃう。
 
「茉乃ちゃんいこうか」
「はい、行きましょう」

 椛乃社長に促されて笑顔を作る。ふう、と深く息を吐いたあと、背筋をピンと伸ばした。
 撮影が成功しますように……!

 スタジオの扉を潜る前にもう一度、声に出さないお願いをして、それから椛乃社長の後ろに続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

Sweet Healing~真摯な上司の、その唇に癒されて~

汐埼ゆたか
恋愛
絶え間なく溢れ出る涙は彼の唇に吸い取られ 慟哭だけが薄暗い部屋に沈んでいく。    その夜、彼女の絶望と悲しみをすくい取ったのは 仕事上でしか接点のない上司だった。 思っていることを口にするのが苦手 地味で大人しい司書 木ノ下 千紗子 (きのした ちさこ) (24)      × 真面目で優しい千紗子の上司 知的で容姿端麗な課長 雨宮 一彰 (あまみや かずあき) (29) 胸を締め付ける切ない想いを 抱えているのはいったいどちらなのか——— 「叫んでも暴れてもいい、全部受け止めるから」 「君が笑っていられるなら、自分の気持ちなんてどうでもいい」 「その可愛い笑顔が戻るなら、俺は何でも出来そうだよ」 真摯でひたむきな愛が、傷付いた心を癒していく。 ********** ►Attention ※他サイトからの転載(2018/11に書き上げたものです) ※表紙は「かんたん表紙メーカー2」様で作りました。 ※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

処理中です...