LV1魔王に転生したおっさん絵師の異世界スローライフ~世界征服は完了してたので二次嫁そっくりの女騎士さんと平和な世界を満喫します~

東雲飛鶴

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第一巻

第2話 俺が魔王で 魔王が俺で

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 ――これは、これは行幸!!!!

 三食つきで、家賃要らず、しかも城住まい美女メイドつきなんて!!!!
 
 も ど り た く な い で し ょ !!!!

「お世話になりまーす!」

                  ☆

 久我山晶の人生が決定する少し前――

 晶が目を覚ますと、どこかのホテルのような場所だった。
 立派な調度品に、高級そうな壁紙、カーテン……。
 まるでスイートルームだ。

「そういえば俺……高い所から突き落とされて……死んだ……はず」

 未だ混濁する意識を必死に整理する。
 えーっとえーっと……。

 ――ぎゅるるるる。

「腹、減ったな」

 腹が減るってことは……、きっと夢じゃあない。
 んー……、多分。
 おそらく。

 ……だんだん自信なくなってきた。

「お目覚めですか、魔王様」
「わっ! ……だ、誰?」

 声の主と思しき人物が、天蓋のあるベッドの脇から、いきなり現れた。
 西洋ファンタジーの神官のような格好をした、背が高くて細身の、顔色の悪い男だ。その傍らには美人のメイドさんが。アラサーぐらいだろうか。知的なカンジのすごい美人だ。真顔でじっとこちらを見ている。

 神官は、なにやら深くため息をつくと、にっこりと微笑みかけてきた。
 だが、第一声以降、何も語らず自分をじっと見つめている。
 きっとこちらの出方をうかがっているのだろう。 

「あ、そうだ」

 晶は急に思い出した。
 最初に会った人に渡せ、と魔王から預かった紙切れのことを。

 体をまさぐると衣服は脱がされて、パジャマのようなものを着せられていた。キョロキョロと周囲を見ると、ベッドサイドに自分の服が畳んで置いてあるのに気付いた。

 コートのポケットに手を突っ込むと、たしかにアレがあった。
 やっぱり夢じゃない。

 きっと魔王からの手紙なんだろう。チラと開いてのぞき込むと、文字らしきものが書き付けられている。

「あのー……。これ」

 おずおずと、自称魔王から預かった紙切れを目の前のもやし男に差し出すと、彼は悲しそうな顔でそれを受け取った。
 あらかたの事情を察したのかもしれない。

 泣きながら手紙を読む彼を見ていると不憫で、なんだか自分まで悲しくなってきた。そんなに年よりでもないのに、もらい泣きするクセ、治したい。

 なんとなく想像する。
 自分とこの国は、王に捨てられた。だから悲しいのだろうか、と。
 ……でも、何で?

「あのー……。俺、どうしたら……」

 もやし男はローブの袖で涙を拭うと、笑顔に戻ってこう言った。

「今日から貴方が魔王です。アキラ=クガヤマ様」

 あー……。やっぱ、そうなっちゃいますか。
 なっちゃうんですね。
 あああ……。


 ☆ ☆ ☆


 だだっ広い広間のような巨大な食堂に通された晶は、さきほどの美人メイドさんの給仕で食事をしつつ、神官からこの世界の事情を聞かされた。食堂が広すぎて、正直おちつかない。

 何十年にも亘る、人間と魔族の戦争が昨年終わり、和平が結ばれ平和が訪れた。
 だが、戦争に明け暮れていた魔王は、ロクに戦後処理などの仕事もせず、晶のいる世界に遊びに出かけてしまった。娯楽を求めて――。

「ああー……。まあ、ありがちな話だな。でも、なんで俺が替え玉なのよ?」

 側近のもやし男――モギナスと名乗った男は、長いまつげを伏せると、頭を小さく振った。

「それは私にも……。たまたま、だったのでしょう。あの方は物事を深く考えるような方ではないので……」
「脳筋?」
「……ああ、そうですね。それです。ええ、その通りです。ホントにもうあの方は全くもって――――――」

 モギナスの愚痴が10分ほど続いた。
 その横でメイドさんがうんざり顔で立っている。

「で、俺はいつ戻れるんだ? モギナス」
「……わかりません。何せ魔族には寿命があってないようなものですから、10年なのか100年なのか……」
「なんだよそれ……」

 晶は血の気が引いた。

「貴方の国の言葉で言えば、平行世界への転移魔法というものに当たりますが、これは現在、魔王様しか使えないのです。ですから、私共で晶様を元の世界にお送りすることは出来ないのでして……。
 ホントにもう、申し訳ありませんとしか……」

 本当に気の毒そうな顔で言うモギナス。

「マジかよ……。ううん……」

「魔王様の魔法では、肉体を持たずに異世界へ行った場合、長期間の滞在が不可能でして……。
 なにせアキラ様がお会いになった元魔王様の体は、魔法で作った仮の体ですので、せいぜい一週間ほどしか異世界にいられません。
 そこで、異世界でも消えない体、依り代としてアキラ様の体を利用されたのでしょう。――都合のいい話だと思われるでしょうが」

「ったく、迷惑な。……じゃあ、こっちの俺は? まさか消えたりしないよな?」

「いまお使いの体は、元々魔王様のものですので、こちらにいらっしゃる限り、人の寿命を超える生を送ることが出来ます」

 あの時魔王は、楽しめと言っていたが、楽しみたかったのは自分の方だったとは。ふてえ野郎だ。
 しかし、あの男が自分の心を垣間見て、替え玉に選んだのだとしたら。

「ふ、ふふふ、ふははは、ふはははははははは」
「アキラ……様?」
「ねえねえ、俺って、もしかして、こっちにいくらでもいていいわけ? どうなの? ねえねえ?」

 軽く引いてるモギナスと美女メイド。
 
「も、もちろん、魔王様がお戻りになるまで、いつまででも」
「戻ってきたら?」
「その時はその時で、別の体を用意するなりで善処いたしますが……」
「そっか……。ふふふ。ふふふふふ。ふはははははははははははははははは!!!!」

 ――これは、これは行幸!!!!

 三食つきで、家賃要らず、しかも城住まい美女メイドつきなんて!!!!
 
 も ど り た く な い で し ょ !!!!

「お世話になりまーす!」

 晶はモギナスの手を両手で握り、頭を深々と下げた。
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