【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第59話 銀の角

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 どうしよう。ユイジュさんがもういない。

 「目を覚ましましたか」

 あ、おじいちゃんだ。

 「あ、うん。えっと、ご迷惑をお掛けしました」

 「いやいや。本当にありがとうございました。一日で戻して頂けるなんて」

 「あの、ユイジュさんってどこに行ったかわかりますか?」

 「あの方なら先ほど来た人達とお出かけになりましたよ」

 うん? 誰か来たんだ。

 「誰が来たんですか?」

 「冒険者商会の人だと言っていたが」

 「ダダルさん? なんで?」

 「ダダルさん。そうです、その方です」

 『何かを掴んで、動いているみたいだな』

 「冒険者商会を閉めてわざわざきたの?」

 『あそこなら閉めても問題ないと思うが? どうやらユイジュは、お前の面倒と連絡係も兼ねていたようだな』

 面倒って。
 連絡を入れていたって事かな?

 『おぬしが言っても邪魔なだけだろう』

 『そうね。それよりもマトルドにも浄化してみない?』

 あ、そっか。真っ白になるかもね。

 「うん! やってみる」

 サザナミに言われてマトルドにも浄化してみる事にした。
 マトルドは、無心に草を食べている。

 「君も本来の姿に戻してあげるからね」

 僕は、マトルドに右手を向けた。

 「浄化」

 サーッと、白馬になった! しかもたてがみがキラキラと輝いている。遠くから見たら銀に見えるかも。

 「わぁ。凄く綺麗だね」

 マトルドが、僕にすり寄って来た! あぁ、かわいい。僕は、ぎゅっと首元に抱き着いた。

 「あれ? 額にも何かついている?」

 『角だ』

 チェトがそう言った。
 言われよく見ると、ちょんと申し訳ない程度のかわいい角があった。角はたてがみと同じく銀色。

 「へえ。角がある馬もいるんだ」

 『いるわけないだろう。マトルドは、ユニコーンだ』

 『生まれたてだったようね。馬と間違われて練習台にされ、能力を封印されたみたいね』

 「能力って?」

 『本来は強いって事だ。けど、おぬしに懐柔されて大人しいな』

 「カイジュウ?」

 よくわかんないけど、大人しくなっちゃったって事? 暴れたら危ないからいいんじゃない?

 くいっと、マトルドが僕の服を引っ張った。
 うん? なんだろう?

 『どうやら乗れと言っているようだな』

 「チェト、マトルドの言葉がわかるの?」

 『いや、わからん』

 「そっか。乗っていいの?」

 いいよと言う様に、スリッとしてきた。僕は、マトルドにまたがった。
 って、突然勢いよく走り出した!

 「わぁ! ちょっとどうしたのマトルド!」

 『もしかしたら彼らの所へ連れて行ってくれるのかもね』

 サザナミが言った。

 「彼らって?」

 『ユイジュ達のところだろう。いや、もしかしたらマトルドを灰色に変えた者達の所へ連れて行く気なのかもしれない。そこにユイジュ達が居れば合流できる』

 そっか。きっと、かたきをとって欲しいんだね!
 うん。捕まえちゃおう!
 あぁ。でも言葉がわかればいいのになぁ。

 一時間ぐらい走っただろうか。煙突から黒い煙を出している建物が見えてきた。そして、馬も。

 「馬がいるね」

 『ユイジュ達が移動に使ってた馬だろうな』

 とチェトが言った。
 だったらユイジュさんは、この建物の中に居るって事か。

 建物の前で僕はマトルドから降りた。
 僕は辺り様子を伺う。人がいないか探ってみたけど、いないみたい?

 ――『感知』の条件が整いました。『感知』を作成しますか?

 うん? おぉ、なんかわからないけど……。

 「はい!」

 ――『感知』のスキルを取得しました。
 ――『感知』はランク1になりました。

 「では、早速。感知」

 何これ、凄い。建物の中に人影が見える。
 えっと。1、2、3、4、5、6……10人?

 これ、まずい状況なんじゃないだろうか? ユイジュさん達捕まった?

 「あ!」

 『どうした?』

 煙突がある建物の横に大きな建物がもう一つあったんだけど、そこに動物がいっぱいいるみたい。
 動物もわかるんだ。

 「あのね、チェト。人影とかが見える様になってね、あの建物に動物がいっぱいいるよ」

 『今度はどんなスキルを覚えたんだ?』

 「感知だって」

 『なるほど。それを上手く使えこなせればよいが』

 ちゃんと、使っているじゃないか。

 「ユイジュさん達、建物の中にいると思うんだけど、建物の中には人が10人いるんだよね。大丈夫かな?」

 『その状況を聞けば、ピンチだと思うわよ』

 サザナミが答えてくれた。だよね、やっぱり。
 えーと、まずは、忍び足で近づいて……窓から様子を伺おう!

 「ちょっと中の様子を見て来るから三人は、ここで待っていて!」

 『窓から覗くのか? 我も覗きたいぞ』

 「危ないよ」

 『大丈夫だ。おぬしが抱っこしてくれれば』

 「うーん? そう。大人しくしていてね」

 チェトが頷いたので、僕は抱き上げた。

 『頼むわよ』

 サザナミの言葉に僕達は頷いた。

 そっと僕は、建物に近づいて行った――。
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