【完結】スキルを作って習得!僕の趣味になりました

すみ 小桜(sumitan)

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第60話 刺されそうです

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 窓は、顔を近づけないと鏡の様に自分を映すだけで、部屋の中が見えなかった。だからこっそりとはいかなくて、ペタッとくっついて覗いた。

 『これは、すぐにばれそうだな……』

 仕方ないじゃないか。見えないんだから。
 ユイジュさんとダダルさん、セードさんもいた。三人は、それぞれ後ろに立っている人に両手を後ろで掴まれている。

 『思いっきり捕らわれているな。さて、どうするか……』

 「あの人達って何者なんだろう?」

 『やばいな。何かする気だ』

 なんか偉そうにしている人が居て、何か持っている人に命令をしている。あれは……うーん? 注射器? 錬金術の器具の中にあったかも。生き物に使う時は、針を付けてそれで刺すんだっけ?

 え? 刺す気?

 「離せ」

 「よせ! やめろ!」

 ダダルさんが叫んでいる!
 な、何とかしないと!

 僕は、チェトを地面に降ろした。

 『何をする気だ? おぬしでは、何も出来ないぞ!』

 それでも助けに行かないとユイジュさんが刺されちゃう! 刺されたらどうなるかは知らないけど、やがっているんだから助けないと。
 ドアを開けようとしたけど、カギが掛かっている!

 『なぜ、正面から入ろうとする……』

 それは、他の入り口がどこにあるかわからないから!
 こうなったら……。

 ドン!

 僕はドアに体当たりした!

 バキっと凄い音を立ててドアは開いた。

 「わぁ……」

 はう。転んじゃった。突然開くんだもん。

 「何だ貴様は!」

 「な、何やってるんだ!」

 ユイジュさんが叫んだ。顔を上げると、注目の的だ。

 「だって、刺されそうになってたから……」

 「え?」

 ユイジュさんが、いや全員がドアがあった場所に振り向いた。僕も振り向く為に起き上がろうとした時、僕の上を何かが飛び越えた。
 それは、キラキラ白く輝くマトルドだった!

 「マトルド! 危ないよ!」

 僕が叫ぶもマトルドは、注射器を持っている男に体当たりした。男は思いっきり吹っ飛んだ。
 注射器が割れた。

 「なんだ、この馬は!」

 「ギラン様! あれは、あの時の馬では?」

 「何!?」

 あの時の馬? やっぱりこの人達がマトルドを灰色にしたの?

 「あなた達だったの? マトルドを灰色に変えたのは!」

 僕は立ち上がって叫んだ。

 「いいから逃げろ!」

 ダダルさんが叫ぶ。

 『サザナミ行くぞ』

 『言われなくともやるわ』

 「全員連れて来たのかよ……」

 ユイジュさんが驚いて呟いた。
 連れて来たと言うより、連れて来られたんだけどね。

 って、ちょっと待ってよ!
 三人して大暴れし始めたんだけど!

 「ぐわぁ」

 ハッとしてみると、ダダルさんが後ろで腕を掴んでいた奴を蹴飛ばしていた。
 セードさんは、投げ飛ばしてる。
 ユイジュさんは……捕まっている!?
 首を腕で締め付けられ、ナイフを顔の近くにちらつかされて、捕らえられていた。

 「大人しくさせろ!」

 男が叫んだ。
 えっと……。

 「三人共やめて!」

 僕が言うと、ピタッとやめた。

 「……ほう」

 ギランっていう人が、ふらっとして立った。

 「やってくれたな……」

 他の人は、立てないみたい。

 「お、俺の事はいいから、ダダルさ……ぐっ」

 「黙れ」

 どうしよう。
 うん? あー!!

 「マトルド!! 血~!」

 額に血が!

 『大丈夫だ。あれは、人間の血だ。マトルドが怪我したわけじゃない』

 チェトの言う通り、近づいて見てみると、角が赤く染まっていた。

 「えーと。ピュリファイング」

 角の血が消えた。よかったぁ。怪我ではないね。うんうん。

 「あれは、角!?」

 「角だって……まさか、ユニコーン!?」

 ギランが驚くと、ダダルさんも驚いて言った。
 チェトとサザナミが僕の近くに来た。ギランがマトルドに近づこうとしたけど、止まった。

 「まさか売りつけた馬が、ユニコーンだったとはな!」

 うん? 灰色にして売りつけたの? なんで?

 「さて取引をしようではないか。そこの少年と君と交換だ」

 僕に向かって言っているんだけど、君って僕の事? なんで僕?

 「ロマ……ぐ」

 「だからお前はしゃべるな」

 ダダルさんは、チラッとユイジュさんを見た後、僕を見て頷いた。それって、交換されろって事!? な、何か策があるんだよね?

 「チェト、マトルドをお願いね」

 『何? 行く気か?』

 僕は頷いた。
 いざとなったら持ち上げればいい!

 『サザナミ……』

 『いつでも行けるわ』

 僕は、ゆっくりとギランに近づいた。
 ギランは、僕の腕を引っ張る。

 「いた……」

 痛いんだけど!

 「来たんだからユイジュさんを放してよ!」

 「そうだな。お前達は動くなよ」

 そう言いながら僕を引っ張り建物の外へとギランは移動する。まさかこのまま逃げる気?

 「さあ、小娘。あのユニコーンと一緒に行こうか」

 そう言ったギランの手には、注射器が握られていた!
 え~~!! 嘘! それで僕を刺す気なの!?
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