【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
8 / 51

8話

しおりを挟む
 「まあ、素晴らしいですわ。こんな素晴らしい生地でドレスを仕立てる事が出来る時がくるなんて!」

 次の日、屋敷に仕立て屋が来た。女性三人が訪れ、デザインブックやら生地やらを部屋に広げた。
 上機嫌でファニタが仕立て屋と話している。

 「聖女様はどうなさいますか? 主役ですのでこちらの生地などいかかでしょう」
 「わぁ。綺麗な色。それに可愛いわ」

 ラメが入った白地の生地に、ピンクのレースを乗せて仕立て屋が見せた。

 「この白地の生地に、金か銀で簡単な刺繍を施す事が可能です。あまり時間がありませんので、凝ったものはできませんが」
 「うんうん。そうするわ」

 メルティは、大喜びするクラリサを羨ましく思い見つめる。本来なら自分が着るドレス。彼女も着たいと思った。

 「メルティ様はいかがされますか。こちらの生地などは……」
 「私もあの生地に、違う色のレースがいいわ」
 「それは……」
 「ダメなの? 姉妹だしお揃いでもおかしくないわよね」
 「メルティ。先ほど言っていたでしょう。クラリサは主役なのよ。主役とは同じドレスは着れないの」

 本来なら自分が主役だ。それなのに、さも当たり前の様にファニタが言った。

 「そうよ。これは聖女である私が着るの。あなたまで目立ってどうするのよ」

 クラリサも自分が着るのが当たり前だと言う。
 自由に選んでいいと言ったのに、結局は選べない。

 「何で? だったら祝賀会なんて出ない!」
 「まあ、メルティ。我がままを言わないの。違う生地にレースの組み合わせを考えましょう」
 「そうですね。こちらの生地などどうでしょうか」
 「あら似合うじゃない」

 勝ち誇ったように、クラリサが言う。
 勧められたのは、クラリサが着る生地とは真逆の色の灰色。ラメも入っていない。

 「酷い。お姉様より目立つな? おかしいじゃない。お姉様は代わりじゃないの。なんでそんなに偉そうなの? ずるいの?」
 「やめなさい! メルティ!」

 このままだと、自分が聖女だ。クラリサは、聖女だと偽っていると叫びそうだと、ファニタは慌てた。
 陛下の耳にでも入ったら大変だ。
 もし疑われて、どちらが本物かなどと調べられたらバレてしまう。

 「ほら、キラキラした生地がいいのよね? これなんてどう?」

 ファニタは、傍にあったラメが入っている生地を手に掴んで見せた。
 黄土色にラメが入っている生地だ。まるで金が霞んだような色。

 「そんな色いや!」
 「では何色がいいでしょうか。白以外で」

 そう問われ、生地を見渡す。

 「あれが良い」

 メルティが指さしたのは、ベビーピンク色の生地に雪の結晶が白色で散りばめられた可愛いデザインだ。これにレースを組み合わせれば、キュートで可愛いドレスになる事間違いなし。

 「まあ、いいわね! 私、それにするわ」
 「え?」

 メルティが選んだものをクラリサが着ると言い出した。

 「いえ、聖女様は白系で……」
 「それだって白系でしょう。ちょっとピンクぽいだけで。私がそれがいいって言っているのよ。主役が選んで――」
 「やめなさい、クラ――」
 「何が主役よ! 偽物のクセに!! ほん――」

 メルティは、泣きながら叫んだ。本来ならそのセリフは私が言うセリフだ。
 そう叫ぼうとすると、抱き着いたファニタに口を塞がれた。

 「うーうー」
 「あなたは何を言っているのよ!」
 「伯爵夫人! お嬢様が息ができません。落ち着いてください」

 慌てたファニタは、手で鼻まで覆っていた。
 苦しくてもがくメルティは、段々と朦朧としてくる。

 「メルティ!」

 指摘されて、慌てて手を離すもメルティはぐったりしているが、息はしていた。

 (あの映像は、お母様の手だったんだ……)

 今日見た映像は、自分の口を塞ぐ誰かの手だ。自分の顔がズームアップされた映像だったので、それしかわからなかった。



 「本当に今日は、見ていないのね?」
 「毎回見るわけでなないわ」

 昨日の事もあったので、クラリサに再度確認されるもそう返す。
 今回は、使用人ではないので誰にも言わなくていい。なので見た事はバレる事はない。ただ、どういう場面でこうなるか見当もつかないのだ。
 それがまさか、仕立ての最中の出来事だなんて思いもよらなかった。

 「メルティ。目が覚めてよかったわ。本当にごめんなさい」

 青白い顔でファニタが、目を覚ましたメルティに謝った。

 「………」

 チラッとファニタを見るも、プイっとメルティは横を向く。

 「ねえ、メルティ。私とお揃いの生地にしない? ね?」
 「お揃い?」
 「そう。色違いのお揃い」
 「うん! する!」
 「よかったわ。色は私が選んでいいかしら?」
 「うん」
 「では、そのように伝えておくわね。もう体は大丈夫?」
 「うん。お母様、今日はごめんなさい」
 「いいのよ。私も焦ってしまって……」

 そう言って優しく頭を撫でる。
 採寸は取り終わっていたので、後はドレスが出来上がって来るのを待つだけだ。

 「ドレス、出来上がってくるの楽しみね」
 「うん」

 母親のファニタとお揃いなど初めてかもしれない。
 そう思うと、メルティは嬉しく思う。
 もう癇癪を起さないで欲しいと思いつつ、彼女をなだめたファニタは、部屋を出て行くのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虐げられ続けてきたお嬢様、全てを踏み台に幸せになることにしました。

ラディ
恋愛
 一つ違いの姉と比べられる為に、愚かであることを強制され矯正されて育った妹。  家族からだけではなく、侍女や使用人からも虐げられ弄ばれ続けてきた。  劣悪こそが彼女と標準となっていたある日。  一人の男が現れる。  彼女の人生は彼の登場により一変する。  この機を逃さぬよう、彼女は。  幸せになることに、決めた。 ■完結しました! 現在はルビ振りを調整中です! ■第14回恋愛小説大賞99位でした! 応援ありがとうございました! ■感想や御要望などお気軽にどうぞ! ■エールやいいねも励みになります! ■こちらの他にいくつか話を書いてますのでよろしければ、登録コンテンツから是非に。 ※一部サブタイトルが文字化けで表示されているのは演出上の仕様です。お使いの端末、表示されているページは正常です。

【完結】婚約破棄された令嬢の毒はいかがでしょうか

まさかの
恋愛
皇太子の未来の王妃だったカナリアは突如として、父親の罪によって婚約破棄をされてしまった。 己の命が助かる方法は、友好国の悪評のある第二王子と婚約すること。 カナリアはその提案をのんだが、最初の夜会で毒を盛られてしまった。 誰も味方がいない状況で心がすり減っていくが、婚約者のシリウスだけは他の者たちとは違った。 ある時、シリウスの悪評の原因に気付いたカナリアの手でシリウスは穏やかな性格を取り戻したのだった。 シリウスはカナリアへ愛を囁き、カナリアもまた少しずつ彼の愛を受け入れていく。 そんな時に、義姉のヒルダがカナリアへ多くの嫌がらせを行い、女の戦いが始まる。 嫁いできただけの女と甘く見ている者たちに分からせよう。 カナリア・ノートメアシュトラーセがどんな女かを──。 小説家になろう、エブリスタ、アルファポリス、カクヨムで投稿しています。

【完結】第一王子の婚約者になりましたが、妃になるにはまだまだ先がみえません!

風見ゆうみ
恋愛
「王族に嫁いだ者は、夫を二人もつ事を義務化とする」  第二王子の婚約者である私の親友に恋をした第三王子のワガママなお願いを無効にするまでのもう一人の夫候補として思い浮かんだのは、私に思いを寄せてくれていた次期公爵。  夫候補をお願いしたことにより第一王子だけでなく次期公爵からも溺愛される事に?!  彼らを好きな令嬢やお姫様達ともひと悶着ありですが、親友と一緒に頑張ります! /「小説家になろう」で完結済みです。本作からお読みいただいてもわかるようにしておりますが、拙作の「身を引いたつもりが逆効果でした」の続編になります。 基本はヒロインが王子と次期公爵から溺愛される三角関係メインの甘めな話です。揺れるヒロインが苦手な方は、ご遠慮下さい。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

シスコン婚約者の最愛の妹が婚約解消されました。

ねーさん
恋愛
リネットは自身の婚約者セドリックが実の妹リリアをかわいがり過ぎていて、若干引き気味。 シスコンって極めるとどうなるのかしら…? と考えていた時、王太子殿下が男爵令嬢との「真実の愛」に目覚め、公爵令嬢との婚約を破棄するという事件が勃発! リネット自身には関係のない事件と思っていたのに、リリアの婚約者である第二王子がリネットに…

お姉様優先な我が家は、このままでは破産です

編端みどり
恋愛
我が家では、なんでも姉が優先。 経費を全て公開しないといけない国で良かったわ。なんとか体裁を保てる予算をわたくしにも回して貰える。 だけどお姉様、どうしてそんな地雷男を選ぶんですか?! 結婚前から愛人ですって?!  愛人の予算もうちが出すのよ?! わかってる?! このままでは更にわたくしの予算は減ってしまうわ。そもそも愛人5人いる男と同居なんて無理! 姉の結婚までにこの家から逃げたい! 相談した親友にセッティングされた辺境伯とのお見合いは、理想の殿方との出会いだった。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

処理中です...