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第30話
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トントントン。
仕事場である執務室のドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
入って来たのは、フランシスク様だ。
「今日の仕事が終わりました。ご主人様」
「ありがとうございます。フランシスク様。そのご主人様って言うのをやめて下さい」
この状況なれないわ。
今日も今日とて、フランシスク様が来ていた。
アンナ達との話し合い? の後に仕事場に行って見れば、既にフランシスク様が来ていて、雑用を率先してやっている。
でも彼が来ているので、仕事場にはアンナはもちろんエルダ夫人も来ない。
今のところ、仕事に関して口を挟んで来た事もない。
けど、ここにフランシスク様が来ていれば、噂は終息しないでしょう。
「あのフランシスク様」
「はい。何かわからない箇所がありましたか?」
私が、手渡された書類を見つめ考えて込んでいたせいか、フランシスク様そう問いかけた。
「いえ。こちらは完璧ですわ。その、この仕事であの人達の様子を知る事が出来るのかなと思ったのです」
アンナが帰って来てから出かけていた事も、帰りはガストン様と帰って来ていた事も知らないでいたのだから、仕事場に居ては監視にならないのではないかしら。
「大丈夫ですよ。それより、噂の事だけど君に不快な思いをさせているよね」
「え……」
知っていたんだ。あの噂なら、フランシスク様の方が傷つく内容なのに、私を気遣ってくれるのね。
「私達がクラブから出て来たって……早急に何とかするから。事実無根だし、この噂を持ちだし……」
「え! 何それ!」
待って。私の知らない噂があって、それをフランシスク様の方が知っているですって。
「知らなかったの? ごめん、だったら言わなかった方がよかったよね。事実無根だとしてもこんな不名誉な噂……」
どうしよう。この国のクラブってどういう所なのか知らないのよね。前世と一緒なのかしら?
私としては、若者がお酒を飲んだり踊ったりして、ストレス発散する場所という認識だけど、不名誉の事なのよね?
そこってどういう所って聞いていいのかしら?
こんな事なら淑女の振舞いと学園生活に必要ないからと、関係ない事柄を省くのではなかったわ。
学園の勉強についていけるように、薬師科と経営家科の学校に通っていた間に貴族学園に入る為の勉強はしていた。
淑女の振舞いなどは、学園前の一年間にお母様から教わったのよね。
後は、猫でもかぶっていようと思っていたから、そういう自分と関わらない事は、学んでいない。
そうだ。明日にでもキャシーに聞いてみよう。
フランシスク様にそんな事も知らないなんてと思われるのは恥ずかしいもの。
「いえ、教えて頂いてよかったですわ。その、そんな噂があるのならここに来るのを控えたらいかがかしら」
「そうですね。そうそう馬車ですが、今日中に到着します」
「え? 早いですね」
フランシスク様が手伝いにと挨拶に来た日に、馬車は手配した方がいいと言われたが、実際どこに頼んでいいのか、またどうしていいのかもわからなかった。
そう困り顔で言えば、馬車関係の書類を見せてくれるならフランシスク様が手配してくれるという。
もちろん、支払いはグリンマトル家。伯爵家に見合ったものを頼んでくれるというので、お願いしたのよね。
「ありがとうございます。これで、アンナに振り回されずにすみます」
そう言うと、フランシスク様がクスリと笑った。
あ、つい本音が漏れちゃった。
だって昨日も置いて行かれて、結局フランシスク様に乗せてもらったのよね。
「従者も前の方が引き受けてくれたよ」
「え? そこまで手配を。ありがとうございます」
従者の事は頭から抜けていたわ。エルダ夫人が使用人を一斉解雇した時に、従者も解雇されていたのよね。
フランシスク様が、今日で手伝いをやめるとエルダ夫人達に挨拶すれば、みな嬉しそうにしていた。
隠す気もないなんてね。
フランシスク様と入れ替わりに従者がきて、新しい馬車を納品してくれた。
エルダ夫人が驚いて、目を瞬く。
「まさか、マスティラン子息のおねだりしたの?」
「してませんから! ただ早く納品して下さるように手配はしてくださったようです」
「いいなぁ。新品」
アンナが、グリンマトル家の馬車を見て呟く。
「そうだ。明日から私もそっちに乗っていく。いいでしょう?」
「嫌よ。あなたを待たなくてはいけなくなるでしょう。それとも置いて行ってもいいかしら」
「な……」
そう言い返せば、頬を膨らませて不貞腐れるアンナ。
はあ。本当に図々しいのだから。
仕事場である執務室のドアがノックされた。
「はい。どうぞ」
「失礼します」
入って来たのは、フランシスク様だ。
「今日の仕事が終わりました。ご主人様」
「ありがとうございます。フランシスク様。そのご主人様って言うのをやめて下さい」
この状況なれないわ。
今日も今日とて、フランシスク様が来ていた。
アンナ達との話し合い? の後に仕事場に行って見れば、既にフランシスク様が来ていて、雑用を率先してやっている。
でも彼が来ているので、仕事場にはアンナはもちろんエルダ夫人も来ない。
今のところ、仕事に関して口を挟んで来た事もない。
けど、ここにフランシスク様が来ていれば、噂は終息しないでしょう。
「あのフランシスク様」
「はい。何かわからない箇所がありましたか?」
私が、手渡された書類を見つめ考えて込んでいたせいか、フランシスク様そう問いかけた。
「いえ。こちらは完璧ですわ。その、この仕事であの人達の様子を知る事が出来るのかなと思ったのです」
アンナが帰って来てから出かけていた事も、帰りはガストン様と帰って来ていた事も知らないでいたのだから、仕事場に居ては監視にならないのではないかしら。
「大丈夫ですよ。それより、噂の事だけど君に不快な思いをさせているよね」
「え……」
知っていたんだ。あの噂なら、フランシスク様の方が傷つく内容なのに、私を気遣ってくれるのね。
「私達がクラブから出て来たって……早急に何とかするから。事実無根だし、この噂を持ちだし……」
「え! 何それ!」
待って。私の知らない噂があって、それをフランシスク様の方が知っているですって。
「知らなかったの? ごめん、だったら言わなかった方がよかったよね。事実無根だとしてもこんな不名誉な噂……」
どうしよう。この国のクラブってどういう所なのか知らないのよね。前世と一緒なのかしら?
私としては、若者がお酒を飲んだり踊ったりして、ストレス発散する場所という認識だけど、不名誉の事なのよね?
そこってどういう所って聞いていいのかしら?
こんな事なら淑女の振舞いと学園生活に必要ないからと、関係ない事柄を省くのではなかったわ。
学園の勉強についていけるように、薬師科と経営家科の学校に通っていた間に貴族学園に入る為の勉強はしていた。
淑女の振舞いなどは、学園前の一年間にお母様から教わったのよね。
後は、猫でもかぶっていようと思っていたから、そういう自分と関わらない事は、学んでいない。
そうだ。明日にでもキャシーに聞いてみよう。
フランシスク様にそんな事も知らないなんてと思われるのは恥ずかしいもの。
「いえ、教えて頂いてよかったですわ。その、そんな噂があるのならここに来るのを控えたらいかがかしら」
「そうですね。そうそう馬車ですが、今日中に到着します」
「え? 早いですね」
フランシスク様が手伝いにと挨拶に来た日に、馬車は手配した方がいいと言われたが、実際どこに頼んでいいのか、またどうしていいのかもわからなかった。
そう困り顔で言えば、馬車関係の書類を見せてくれるならフランシスク様が手配してくれるという。
もちろん、支払いはグリンマトル家。伯爵家に見合ったものを頼んでくれるというので、お願いしたのよね。
「ありがとうございます。これで、アンナに振り回されずにすみます」
そう言うと、フランシスク様がクスリと笑った。
あ、つい本音が漏れちゃった。
だって昨日も置いて行かれて、結局フランシスク様に乗せてもらったのよね。
「従者も前の方が引き受けてくれたよ」
「え? そこまで手配を。ありがとうございます」
従者の事は頭から抜けていたわ。エルダ夫人が使用人を一斉解雇した時に、従者も解雇されていたのよね。
フランシスク様が、今日で手伝いをやめるとエルダ夫人達に挨拶すれば、みな嬉しそうにしていた。
隠す気もないなんてね。
フランシスク様と入れ替わりに従者がきて、新しい馬車を納品してくれた。
エルダ夫人が驚いて、目を瞬く。
「まさか、マスティラン子息のおねだりしたの?」
「してませんから! ただ早く納品して下さるように手配はしてくださったようです」
「いいなぁ。新品」
アンナが、グリンマトル家の馬車を見て呟く。
「そうだ。明日から私もそっちに乗っていく。いいでしょう?」
「嫌よ。あなたを待たなくてはいけなくなるでしょう。それとも置いて行ってもいいかしら」
「な……」
そう言い返せば、頬を膨らませて不貞腐れるアンナ。
はあ。本当に図々しいのだから。
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