【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
22 / 79

3-8

しおりを挟む
 やっぱり夜になってしまった。
 でも街だけあって明るい。一応ランプは、リアカーにぶら下げている。

 あった。一番安い宿屋。貰った冊子には、昨年度のだけど情報も載っているので助かる。

 「すみません。一晩いいですか?」

 「おや、お疲れ様。一部屋ずつでいいかい?」

 「「え~~!!」」

 二人はどうやら嫌らしい。

 「あの三人一緒の部屋でお願い出来ますか」

 「だったら素泊まりの部屋になるけどいいかい?」

 「あ、はい。構いません。それとこれ、置いてもらってもいいですか?」

 「おやまぁ。これ配って歩いているのかい? ご苦労様だね」

 チラシを置いてもらえる事になった。よかった。

 部屋は、ランプがあるだけで後は何もない部屋だった。
 ここは、冒険者用に素泊まりできる部屋を提供している宿で、朝食付き。朝食は、部屋に朝人数分運んでくれる。

 布団もなにもないので、バイガドさんから貰った毛布にくるまって寝る事にした。
 そして、紅葉だけどサツナの鞄にこっそり入れて連れて来ている。

 僕は、寝る前に回るルートを決めようと冊子とにらめっこをしているんだけど、二人はバタバタと紅葉と遊んでいた。

 「二人共、もう夜遅いからその遊びはやめようか?」

 紅葉を持って両手を頭上に伸ばし手を放すと紅葉は滑空するんだけど、モンスターだからなのかかなりの距離を飛ぶ。それをきゃきゃと、二人は追いかけて遊んでいた。
 これ絶対に、苦情が来ると思う。

 ぺたん。
 紅葉が僕の頭の上に着地した。

 『一緒にあちょぼ』

 「遊ぼうじゃないよ。もう二人と一緒に寝なさい」

 『眠くないもん』

 『オウギモンガは、夜行性よ』

 「え!?」

 僕達と習慣が違うのか……。

 「じゃ起きていてもいいけど飛び回ったらダメ! 二人も宿の人に怒られちゃうからね」

 「「はーい……」」

 三人共しょんぼりしてるけど、これは仕方がない。
 二人は毛布にくるまり、紅葉を間に入れて何やらおしゃべりを始めた。あれぐらいならいいか。

 チラシを置く宿屋は、宿屋がいっぱいあるから値段で決めるかな。料金が一番高い所と、中ぐらいの所と一番低い所。
 一番低い宿はさっき渡したから明日二か所に置いて来て、それからハンドメイドの事を聞きに、商業協会に行ってみるかな。



 うーん。左手が重い?

 うん? うおぉ! びっくりした。
 目を開けると、僕の手の上に紅葉が張り付いている。どうやら寝ているみたいだ。

 「なんだこれ?」

 『夜中に紅葉があなたの体を登ったりして遊んでいたのよ』

 遊んでいた!?

 「寝返りを打ったら危なくない?」

 『スリルを楽しんでいたみたよ。ぴょんぴょん跳ねたりすると、寝返りを打つのよ。そうしたら逃げて、また登ってって。その内疲れてそのまま抱き着いて寝ちゃったみたいね』

 「そうなんだ……」

 って、ラスは寝ないんだろうか?

 「ねえ、ラスは寝てないの?」

 『妖精は寝ないわ』

 やっぱりそうなんだ。

 「だったら紅葉の見張りお願いね」

 『大丈夫よ。いたずらはしていないわ』

 僕の体で遊ぶのは、いたずらに入らないわけね。

 トントントン。

 「おはようございます。朝食をおもちしました」

 あ、もうそんな時間か。

 「はい。ありがとうございます」

 僕は、紅葉に毛布をかぶせてドアを開けた。

 「お二人はまだ寝ているみたいですね」

 「はい。あの、すみません。昨日煩かったですよね。二人共興奮しちゃって」

 「苦情はきていないよ。大丈夫さ」

 よかった。直ぐに止めさせたからかも。
 あ、そうだ。

 「あの商業協会って、どこら辺にありますか?」

 「おや、そこにもチラシを配るのかい? 大変だね。ちょっと行った先に大きな青い建物があるからそれだよ。ここは冒険者協会よりでかいからね」

 「そうなんだ。ありがとうございます」

 それいいかも。一軒一軒回るより、商業協会にお願いをしに行った方がいいかも。
 朝食は、サンドイッチだった。それを床に置いて二人を起こす。

 「ほら起きて。朝ごはん食べちゃうよ」

 「うーん」

 サツナが毛布を頭にかぶる。
 もう遅くまで話しているから……。

 「リアカーで寝ていていいから食べちゃってよ」

 僕は、二人を揺り起こす。
 なんとか起きた二人は、ぼーっとしたままサンドイッチを頬張っている。

 これ、夜に何か対策しないと、朝夜逆転しちゃうな。

 朝食を食べ終わり、リアカーに乗り込んだ二人は本当に寝ているんだけど!
 サツナは、紅葉を抱きしめて幸せそうだ。
 ペットなんて、施設だったら絶対飼えなかったからな。

 うん。だからと言ってこれはダメだよな。
 でもまあ、今日は特別という事で。
 リアカーを引いて僕は、商業協会を目指した。
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

追放された薬師でしたが、特に気にもしていません 

志位斗 茂家波
ファンタジー
ある日、自身が所属していた冒険者パーティを追い出された薬師のメディ。 まぁ、どうでもいいので特に気にもせずに、会うつもりもないので別の国へ向かってしまった。 だが、密かに彼女を大事にしていた人たちの逆鱗に触れてしまったようであった‥‥‥ たまにやりたくなる短編。 ちょっと連載作品 「拾ったメイドゴーレムによって、いつの間にか色々されていた ~何このメイド、ちょっと怖い~」に登場している方が登場したりしますが、どうぞ読んでみてください。

最低最悪の悪役令息に転生しましたが、神スキル構成を引き当てたので思うままに突き進みます! 〜何やら転生者の勇者から強いヘイトを買っている模様

コレゼン
ファンタジー
「おいおい、嘘だろ」  ある日、目が覚めて鏡を見ると俺はゲーム「ブレイス・オブ・ワールド」の公爵家三男の悪役令息グレイスに転生していた。  幸いにも「ブレイス・オブ・ワールド」は転生前にやりこんだゲームだった。  早速、どんなスキルを授かったのかとステータスを確認してみると―― 「超低確率の神スキル構成、コピースキルとスキル融合の組み合わせを神引きしてるじゃん!!」  やったね! この神スキル構成なら処刑エンドを回避して、かなり有利にゲーム世界を進めることができるはず。  一方で、別の転生者の勇者であり、元エリートで地方自治体の首長でもあったアルフレッドは、 「なんでモブキャラの悪役令息があんなに強力なスキルを複数持ってるんだ! しかも俺が目指してる国王エンドを邪魔するような行動ばかり取りやがって!!」  悪役令息のグレイスに対して日々不満を高まらせていた。  なんか俺、勇者のアルフレッドからものすごいヘイト買ってる?  でもまあ、勇者が最強なのは検証が進む前の攻略情報だから大丈夫っしょ。  というわけで、ゲーム知識と神スキル構成で思うままにこのゲーム世界を突き進んでいきます!

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

兄がやらかしてくれました 何をやってくれてんの!?

志位斗 茂家波
ファンタジー
モッチ王国の第2王子であった僕は、将来の国王は兄になると思って、王弟となるための勉学に励んでいた。 そんなある日、兄の卒業式があり、祝うために家族の枠で出席したのだが‥‥‥婚約破棄? え、なにをやってんの兄よ!? …‥‥月に1度ぐらいでやりたくなる婚約破棄物。 今回は悪役令嬢でも、ヒロインでもない視点です。 ※ご指摘により、少々追加ですが、名前の呼び方などの決まりはゆるめです。そのあたりは稚拙な部分もあるので、どうかご理解いただけるようにお願いしマス。

お花畑な母親が正当な跡取りである兄を差し置いて俺を跡取りにしようとしている。誰か助けて……

karon
ファンタジー
我が家にはおまけがいる。それは俺の兄、しかし兄はすべてに置いて俺に勝っており、俺は凡人以下。兄を差し置いて俺が跡取りになったら俺は詰む。何とかこの状況から逃げ出したい。

追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?

タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。 白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。 しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。 王妃リディアの嫉妬。 王太子レオンの盲信。 そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。 「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」 そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。 彼女はただ一言だけ残した。 「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」 誰もそれを脅しとは受け取らなかった。 だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

処理中です...