11 / 71
第10話 懲りないダンザル
しおりを挟む
「ルナード、終わったらきなさい」
少し険しい顔で、神官副長のマイトラに奥に来るように言われ、ルナードは、はいと返事を返す。
あいつ、言いに来たのか。こりないやつだな。まあ傷つけたからな……。
呼び出された理由はわかっていた。ダンザルが、ルナードに襲われたと言ってきたのだろうと察しはついた。
ため息を一つつくと、仕事を終わらせたルナードは、神官長室に出向く。
トントントン。
「ルナードです」
「入りなさい」
「失礼します」
深々と礼をして中に入ると、やはりダンザルがいた。
「ルナード。呼び出された理由はわかるな?」
「はい」
マカリーに問われ、ルナードは素直に頷いた。
「なぜ、彼を傷つけた?」
「申し訳ありません」
深々とルナードは、頭を下げた。
「謝りなさいと今は言っていない。理由を述べなさいと言っているんです」
副長のマイトラが言うも、ディアルディの事は言いたくなかった。言えば、ここに確認の為に連れて来られるだろう。怯えていたディアルディをこの場には連れて来たくはないのだ。
「申し訳ありません。言えません」
「ふん。自分の女に話しかけられただけで、キレて襲って来たんだよ」
こいつ、何言ってやがる!
頭を下げたままルナードは、怒りで手をギュッと握りしめた。
「頭を上げなさい、ルナード」
マカリーにそう言われルナードは、頭を上げた。本当は上げたくなかった。上げれば、ダンザルを睨み付けられずにはいられない。
「な、なんだよ。言いたい事があれば言えばいいだろう?」
「……あなた、二度も私を怒らせたいのですか?」
見せた事のない様子のルナードに、マイトラは驚いた。
ルナードは、ダンザルが自分を困らさせる為に、ディアルディに近づいた事はわかっていた。だから次はないと忠告をしたのだ。けど彼にはそれが効かなかった。
「何があったか話なさい」
マカリーに問われ、ルナードは溜息をついた。
「彼が、彼女を襲ったからです」
「襲ったぁ? ちょっと街を案内していただけだろう?」
「あんな場所に案内したのですか?」
「あんな場所?」
マイトラの復唱に、ルナードは頷く。
「人気のない岩場です。街の外れです」
「けど、自分の意思でついて来たんだぜ?」
「そんな場所に連れて行かれるとは思っていなかったのでは?」
「ところで、彼女とは誰の事です」
マイトラの問いに、ルナードは俯く。
「ディか?」
マカリーの問いに、静かにルナードは頷いた。
「ディとはどなたです?」
「先日ルナードと婚約したディアルディという者です。すでに一緒に暮らしています」
「今、初めてお聞きしました」
マイトラは凄く驚いていた。
ルナードは、他の者と違って、独身を通し神官を全うするように見えていた。つまり、女性に気を取られた事などなかったのだ。
「嫌々、みたいだったけど? なら断ればいいのに」
「神託が下ったのだから仕方がないだろう? 私にはどうにもできない」
「それは、本当ですか? マカリーさん」
「えぇ、本当です」
この嘘つきめ!
しらーっと本当だというマカリーを一瞬キッと睨み付けるルナードだった。
少し険しい顔で、神官副長のマイトラに奥に来るように言われ、ルナードは、はいと返事を返す。
あいつ、言いに来たのか。こりないやつだな。まあ傷つけたからな……。
呼び出された理由はわかっていた。ダンザルが、ルナードに襲われたと言ってきたのだろうと察しはついた。
ため息を一つつくと、仕事を終わらせたルナードは、神官長室に出向く。
トントントン。
「ルナードです」
「入りなさい」
「失礼します」
深々と礼をして中に入ると、やはりダンザルがいた。
「ルナード。呼び出された理由はわかるな?」
「はい」
マカリーに問われ、ルナードは素直に頷いた。
「なぜ、彼を傷つけた?」
「申し訳ありません」
深々とルナードは、頭を下げた。
「謝りなさいと今は言っていない。理由を述べなさいと言っているんです」
副長のマイトラが言うも、ディアルディの事は言いたくなかった。言えば、ここに確認の為に連れて来られるだろう。怯えていたディアルディをこの場には連れて来たくはないのだ。
「申し訳ありません。言えません」
「ふん。自分の女に話しかけられただけで、キレて襲って来たんだよ」
こいつ、何言ってやがる!
頭を下げたままルナードは、怒りで手をギュッと握りしめた。
「頭を上げなさい、ルナード」
マカリーにそう言われルナードは、頭を上げた。本当は上げたくなかった。上げれば、ダンザルを睨み付けられずにはいられない。
「な、なんだよ。言いたい事があれば言えばいいだろう?」
「……あなた、二度も私を怒らせたいのですか?」
見せた事のない様子のルナードに、マイトラは驚いた。
ルナードは、ダンザルが自分を困らさせる為に、ディアルディに近づいた事はわかっていた。だから次はないと忠告をしたのだ。けど彼にはそれが効かなかった。
「何があったか話なさい」
マカリーに問われ、ルナードは溜息をついた。
「彼が、彼女を襲ったからです」
「襲ったぁ? ちょっと街を案内していただけだろう?」
「あんな場所に案内したのですか?」
「あんな場所?」
マイトラの復唱に、ルナードは頷く。
「人気のない岩場です。街の外れです」
「けど、自分の意思でついて来たんだぜ?」
「そんな場所に連れて行かれるとは思っていなかったのでは?」
「ところで、彼女とは誰の事です」
マイトラの問いに、ルナードは俯く。
「ディか?」
マカリーの問いに、静かにルナードは頷いた。
「ディとはどなたです?」
「先日ルナードと婚約したディアルディという者です。すでに一緒に暮らしています」
「今、初めてお聞きしました」
マイトラは凄く驚いていた。
ルナードは、他の者と違って、独身を通し神官を全うするように見えていた。つまり、女性に気を取られた事などなかったのだ。
「嫌々、みたいだったけど? なら断ればいいのに」
「神託が下ったのだから仕方がないだろう? 私にはどうにもできない」
「それは、本当ですか? マカリーさん」
「えぇ、本当です」
この嘘つきめ!
しらーっと本当だというマカリーを一瞬キッと睨み付けるルナードだった。
0
あなたにおすすめの小説
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
【完結】好きでもない私とは婚約解消してください
里音
恋愛
騎士団にいる彼はとても一途で誠実な人物だ。初恋で恋人だった幼なじみが家のために他家へ嫁いで行ってもまだ彼女を思い新たな恋人を作ることをしないと有名だ。私も憧れていた1人だった。
そんな彼との婚約が成立した。それは彼の行動で私が傷を負ったからだ。傷は残らないのに責任感からの婚約ではあるが、彼はプロポーズをしてくれた。その瞬間憧れが好きになっていた。
婚約して6ヶ月、接点のほとんどない2人だが少しずつ距離も縮まり幸せな日々を送っていた。と思っていたのに、彼の元恋人が離婚をして帰ってくる話を聞いて彼が私との婚約を「最悪だ」と後悔しているのを聞いてしまった。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
恋人の気持ちを試す方法
山田ランチ
恋愛
あらすじ
死んだふりをしたら、即恋人に逃げられました。
ベルタは恋人の素性をほとんど知らぬまま二年の月日を過ごしていた。自分の事が本当に好きなのか不安を抱えていたある日、友人の助言により恋人の気持ちを試す事を決意する。しかしそれは最愛の恋人との別れへと続いていた。
登場人物
ベルタ 宿屋で働く平民
ニルス・パイン・ヘイデンスタム 城勤めの貴族
カミラ オーア歌劇団の団員
クヌート オーア歌劇団の団長でカミラの夫
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる