英雄になんてなりたくないから!

すみ 小桜(sumitan)

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対等な二人 1

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 なにを言っているんだこの王子は……。よわよわの僕とギルドを設立してどうするんだ。英雄になりたいんだろう? 足を引っ張る未来しか見えない。

 「あの……そう言ってくれるのはありがたいのですが、僕とギルドを設立したとしても僕は何も役に立ちませんよ?」
 「いや。ギルドは最低二人いないとダメなんだ」
 「はあ……」

 だったらそこにいるなりたがっている三人と設立すればいいのに。

 「私は、対等に接してくれる仲間が欲しい。そして、損得なしで信頼できる人物」

 それが僕に当てはまると? 損得なしでは何となくわかるけど、信頼できる人物に見えるって事?

 「まあ君は、確かに頼りにならないかもしれないが、これからだろう」
 「う……」

 頼りないと思っているのに声掛けたのか。

 「まあ、確かに弱いからな」
 「……弱いって」
 「正直、ステータスを見て驚いた」
 「え?」

 レメゼールさんがからかう様に言うけど、驚くほど低かったの?

 「腕力が一桁の者は初めてだった」

 あぁ。剣なんて型を習った後は、ちょっと素振りをした程度だからね。
 なるほど。だからスライムを倒しただけで、上がったのか。

 「……どんだけなんだ、君は」

 呆れ気味にガーナラルド王子が言った。

 「その様な者とギルドを設立するなど、ガーナラルド様が苦労なさるのが目に見えます。お考え直し下さい」
 「あなたに言われる筋合いはない。彼は信頼における人物だ。それに興味もある」

 どっちかというと、興味の方が大きいのでは?
 って僕達、ちょっと話しただけですよね?

 「きさま、何を吹き込んだ!」

 凄んで指導者の一人に言われた。

 何も吹き込んでないって!
 もうどうしてこうなるの?

 「一つ宜しいでしょうか?」
 「なんだ?」
 「その言葉は、王族としてでしょうか? それとも、いちダンジョンハンターとしてのお誘いでしょうか?」

 そうレメゼールさんが、ガーナラルド王子に問う。

 「もちろん、同じダンジョンハンターとしての誘いだ。なので、断っても構わない。ただ君にとっても好都合だと思うのだが?」

 どこに好都合があるのかわからない。こうやって睨まれるだけじゃないか! 指導者に睨まれたら指導者になれないよ!

 「いいんじゃないか? 王子としてではなく、ダンジョンハンターとしての誘いなら」
 「え? なぜに?」
 「ダンジョンハンターとして、君が必要だって事だ。スキルは関係ないって事だろう?」

 そっか。スキルの事を話したのを知らないからそう思うのか。
 興味はスキルの事だと思うんだよね。
 でもここで断ってももう遅いよね。垂らし込んだと思われているんだから。だったらある程度まで一緒に居た方がいいかも。

 ただ問題が一つある。
 王子に何かあった時だ。非難されるだけで済まないかもしれない。

 「わかりました。ただし一つお願いがあります」
 「なんだ?」
 「僕より先に死なないで下さいね」

 一瞬シーンと静まり返った。
 そして、ガーナラルド王子がっぷと吹き出すと、大笑いを始める。指導員の三人は激怒しているけどなんで?
 レメゼールさんは、声を殺して笑っていた。
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