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牙をむく彼 2
しおりを挟む「傷薬を使うより戻った方が早いか。立て!」
「お待ちを。それは、俺がやります」
僕の手を肩にかけ立ち上がろうとしたガーナラルドにデモンガリーが言った。王子であるガーナラルドに、僕を運ばせる事は出来ないからだろうな。
「ご、ごめん」
僕は、ぼそっと呟くぐらいしか出来なくなっていた。
何とか魔法陣まで歩き、ダンジョンの外へ。
ワープ先は、建物内だ。
「すまないが、彼に回復魔法を頼む」
カウンターに向かって、ガーナラルドが叫んだ。
僕は、カウンターのすぐ横に設置されていた椅子に座らされた。
すぐにカウンターの奥からダンジョンハンターだと思われる男の人が出て来て回復魔法を掛けてくれた。
痛みも疲労感もスーッと引いて、ラクになった。
「ありがとうございます」
「殿下は大丈夫ですか?」
回復魔法を掛けてくれた人が聞くと、大丈夫だと返す。
「クラド、出て来る時のHPは見て来たか? 全回復の状態だったのか?」
「いえ。11でした……」
「11……攻撃を受けてないよな?」
「はい」
返事を返すと、キッとガーナラルドがデモンガリーを睨み付けた。
「彼を殺すつもりだったのか?」
「なぜ、そうなるのですか?」
「君なら知っているだろう。疲労でもHPが減る事を。寝てもHPが半分も回復していないという事は、体に異常があると言う事だ」
知らなかった。疲れていてもHPが減るんだ。
「彼にHPがいくつかなんて聞いておりませんでしたので……」
「君は、彼と同じ学校だったのだろう。だったら彼がどういう風に過ごしていたか知ってるはずだ。訓練などしていなかったのではないか? そういう者があそこまで上達するのには、それなりの事をしたはずだ。打ち身などあってそのまま放置したのではないか? HPが一割切れば、瀕死の状態になり動けなくなる事は知っているだろう? 君はワザとその状態になるように仕向けたのではないか?」
え? ワザとって……。まさかそんな事はないとは思うけど。でもそういえば、傷薬は返してもらってない。僕と一緒で忘れていただけだよね?
「それって、クラドの元のステータスをご存知という事でしょうか?」
「いや、見たことはない。ただコボルトに歯が立たないぐらい弱かった」
ガーナラルドの言葉に、聞いた皆が目を見開いたのがわかった。って、そんな事暴露しないでよ!
「そうですか。さきほどご覧になりましたよね? 腕力はあの数値の半分でしたよ? 俺としては、どうしてコボルトにすら勝てない彼を傍に置くのかわかりかねますね。まるで役に立たないでしょうに」
凄い言われようだけど、言っている事はあっている。
……けど、味方、敵ではないけど、今の言い方だと僕の印象は、デモンガリーにとって悪い様に聞こえるんだけど……。
「それに王子扱いするなと言う割には、権力を使っておいでですよね? 普通ギルドなどダンジョンハンターになってすぐに設立させる事など不可能ですよ。その資金はどこから出たのでしょうか?」
え? 僕の事だけじゃなく、ガーナラルドの事まで!?
「ちょっと、いきなりどうしたのさ。なぜガーナラルドに食ってかかるの?」
「は? 呼び捨て?」
僕の言葉に、デモンガリーが凄く驚いていた。いや周りもだ。凄く視線が痛い。あぁ、こうなるから嫌だったんだ!
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