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◇226◇ルイユも一緒
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アベガルさんって本当に抜かりないなぁ。
「これから騎士団で、魔女の事を調べる準備をする。悪いがアベガル、後を頼んだぞ」
「あぁ。任せて置け」
メリュドガさんは、そうアベガルさんに言うと部屋を出て行った。アベガルさんって、信用されているんだ。
「さてと。さっきロドリゴさんには、通達を入れた。それで宜しく頼むと返答が返って来たんだが……」
「来たんだがって……まさか、何か条件をつける気?」
濁すアベガルさんに、イラーノが直球で聞いた。
「あぁ。だけど悪い話ではない。俺の元で剣の修行をしていけ」
「え? 剣?」
アベガルさんの言葉に、イラーノが驚く。僕もだけど、それが条件?
「二人に守ってもらうと言っても、まったく何も出来なくては困るだろう? せめて、受け流しを覚えろ」
ロドリゴさんと手合わせをした時に見せてくれた技だよね? そんなに簡単に出来るもんなの?
「そんな顔をするな。言っておくが、俺もヒーラーだ。イラーノの足元にも及ばないがな。そんな俺でも出来る技だ。コツさえ覚えれば、出来る」
「いいんじゃないでしょうか。相手が一人ならいいですが、複数なら主様も襲われる事もあり得るのですから」
「うん……」
「あぁ、そうだルイユ。お前も人前で戦うのは控えろ。というか、するな!」
「なぜです? それでは主様を守れないではないですか!」
はぁっとアベガルさんが大きなため息をついた。
「考えればわかるだろうに……」
「俺が、男として生活しているのは、女性は冒険者にならないからだ。俺の場合、魔法が使えるわけでもないから女性のままだとなれなかっただろう」
「そういうわけで、冒険者でもない女性が、男より強かったらおかしいだろう? それこそ目立つ」
そうだった!!
今度は、ほとんど人間の姿でいるから戦うとなると、女性としてだ……。
「そうですね。では私も冒険者になりましょう」
「なに!?」
突拍子もない事を言い出したルイユに、アベガルさんは本当に驚いている。
「あのな。男ならわかるが、女がその年で登録なんてあり得ないぞ!」
「そうですか。まだ一歳にも満たないのでダメだめですか……」
「はぁ!?」
ルイユの返答にアベガルさんは、ガクッと肩を落とす。
そして、コーリゼさんがそんなやり取りを見て、っぷっと吹きだした。
「してあげればいいじゃないですか? 俺の性別を変えようとしたという事は、今ならついでに出来るんじゃないの? 魔法使いって事で……」
「魔法使いねぇ……」
アベガルさんがまたため息をつく。
「いいだろう。それでも女性だってだけで目立つからな」
イラーノが、うんうんと頷いている。男だけど、女と見られて目立っていたからね。
「今作るから待っていろ」
とまたアベガルさんがため息をついた。
「もしかして情報って、手入力なの?」
僕が聞くと、アベガルさんがそうだと頷いた。
「そうじゃなかったら俺は女性だとバレている」
「あ、そっか……」
僕が鑑定されたのは、モンスターを連れて中に入ろうとして、テイマーじゃないかって事だったからだった。
「そうだ。魔法は何にする?」
「風でお願いします」
「ほらこれを左腕につけろ」
「ありがとうございます」
冒険者の証を渡されたルイユは、左腕につけた。
「クテュールの修正も終わった」
本当に信じてくれたんだ。
それでもやっぱり不安だなぁ……。
「ありがとうございます。あの……どうして僕達の事をそこまで信じられるの? あ、いや、信じてくれて嬉しんだけど。今までが今までだから……」
「お前も疑い深いなぁ。コーリゼの事があったからだろうな。お前達を追っているのはわかっていた。年齢は記載されていないが、調べれば登録日がわかるんだ。コーリゼが言ったように、10年前に登録になっていた。つまり10年前から男だと偽っていた。そこまでする理由が、普通はないからな」
「そっか。口裏合わせが10年も前から出来てないと、あの魔女の話は成り立たないって事か」
アベガルさんの説明にイラーノが頷いて言った。
「まあ、少なくとも一年程前からじゃないとな。ルイユが生まれた頃がその頃だったようだな。焦ってコーリゼを探し始めた。ただ話は信じたが、ルイユはモンスターだ。見張らせてもらう」
僕達は頷いた。
「そうだった。ほらこれも返しておく」
渡したミサンガだ。これも返してくれるんだ……。
《主様が作った本物のマジックアイテムです》
一応鑑定したみたい。
確かに、見た目同じのを作るのは簡単だからね。
僕達は、それぞれミサンガをルイユにつけてもらった。きっと、取らなくてはいけなくなった時の対策だ。
《これでエルフの所に行けますね》
そうだった!
これがないと、魔力を吸い取る結界の中に行けない。行った先にあるかはわからないけど。
絶対にルイユを助けるんだ!
僕は心に決めて、剣の修行に励む。
アベガルさんの元で剣の修行をして、ルイユを助ける方法を探す旅を始める――。
「これから騎士団で、魔女の事を調べる準備をする。悪いがアベガル、後を頼んだぞ」
「あぁ。任せて置け」
メリュドガさんは、そうアベガルさんに言うと部屋を出て行った。アベガルさんって、信用されているんだ。
「さてと。さっきロドリゴさんには、通達を入れた。それで宜しく頼むと返答が返って来たんだが……」
「来たんだがって……まさか、何か条件をつける気?」
濁すアベガルさんに、イラーノが直球で聞いた。
「あぁ。だけど悪い話ではない。俺の元で剣の修行をしていけ」
「え? 剣?」
アベガルさんの言葉に、イラーノが驚く。僕もだけど、それが条件?
「二人に守ってもらうと言っても、まったく何も出来なくては困るだろう? せめて、受け流しを覚えろ」
ロドリゴさんと手合わせをした時に見せてくれた技だよね? そんなに簡単に出来るもんなの?
「そんな顔をするな。言っておくが、俺もヒーラーだ。イラーノの足元にも及ばないがな。そんな俺でも出来る技だ。コツさえ覚えれば、出来る」
「いいんじゃないでしょうか。相手が一人ならいいですが、複数なら主様も襲われる事もあり得るのですから」
「うん……」
「あぁ、そうだルイユ。お前も人前で戦うのは控えろ。というか、するな!」
「なぜです? それでは主様を守れないではないですか!」
はぁっとアベガルさんが大きなため息をついた。
「考えればわかるだろうに……」
「俺が、男として生活しているのは、女性は冒険者にならないからだ。俺の場合、魔法が使えるわけでもないから女性のままだとなれなかっただろう」
「そういうわけで、冒険者でもない女性が、男より強かったらおかしいだろう? それこそ目立つ」
そうだった!!
今度は、ほとんど人間の姿でいるから戦うとなると、女性としてだ……。
「そうですね。では私も冒険者になりましょう」
「なに!?」
突拍子もない事を言い出したルイユに、アベガルさんは本当に驚いている。
「あのな。男ならわかるが、女がその年で登録なんてあり得ないぞ!」
「そうですか。まだ一歳にも満たないのでダメだめですか……」
「はぁ!?」
ルイユの返答にアベガルさんは、ガクッと肩を落とす。
そして、コーリゼさんがそんなやり取りを見て、っぷっと吹きだした。
「してあげればいいじゃないですか? 俺の性別を変えようとしたという事は、今ならついでに出来るんじゃないの? 魔法使いって事で……」
「魔法使いねぇ……」
アベガルさんがまたため息をつく。
「いいだろう。それでも女性だってだけで目立つからな」
イラーノが、うんうんと頷いている。男だけど、女と見られて目立っていたからね。
「今作るから待っていろ」
とまたアベガルさんがため息をついた。
「もしかして情報って、手入力なの?」
僕が聞くと、アベガルさんがそうだと頷いた。
「そうじゃなかったら俺は女性だとバレている」
「あ、そっか……」
僕が鑑定されたのは、モンスターを連れて中に入ろうとして、テイマーじゃないかって事だったからだった。
「そうだ。魔法は何にする?」
「風でお願いします」
「ほらこれを左腕につけろ」
「ありがとうございます」
冒険者の証を渡されたルイユは、左腕につけた。
「クテュールの修正も終わった」
本当に信じてくれたんだ。
それでもやっぱり不安だなぁ……。
「ありがとうございます。あの……どうして僕達の事をそこまで信じられるの? あ、いや、信じてくれて嬉しんだけど。今までが今までだから……」
「お前も疑い深いなぁ。コーリゼの事があったからだろうな。お前達を追っているのはわかっていた。年齢は記載されていないが、調べれば登録日がわかるんだ。コーリゼが言ったように、10年前に登録になっていた。つまり10年前から男だと偽っていた。そこまでする理由が、普通はないからな」
「そっか。口裏合わせが10年も前から出来てないと、あの魔女の話は成り立たないって事か」
アベガルさんの説明にイラーノが頷いて言った。
「まあ、少なくとも一年程前からじゃないとな。ルイユが生まれた頃がその頃だったようだな。焦ってコーリゼを探し始めた。ただ話は信じたが、ルイユはモンスターだ。見張らせてもらう」
僕達は頷いた。
「そうだった。ほらこれも返しておく」
渡したミサンガだ。これも返してくれるんだ……。
《主様が作った本物のマジックアイテムです》
一応鑑定したみたい。
確かに、見た目同じのを作るのは簡単だからね。
僕達は、それぞれミサンガをルイユにつけてもらった。きっと、取らなくてはいけなくなった時の対策だ。
《これでエルフの所に行けますね》
そうだった!
これがないと、魔力を吸い取る結界の中に行けない。行った先にあるかはわからないけど。
絶対にルイユを助けるんだ!
僕は心に決めて、剣の修行に励む。
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