【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!

すみ 小桜(sumitan)

文字の大きさ
244 / 245

◆241◆死の淵で

しおりを挟む
 逃げろと言われても……。背を向ければ背中を斬られるって!
 エルフは、力任せに剣をぶんぶんと振って来て、受け止めるのが精一杯だ。これ、アベガルさんに剣術を習ってなかったら一発で剣を落としている。

 と、急に蹴りを入れて来た!

 「う……」

 防ぐ事無く、僕の腹に蹴りは命中し吹き飛んだ。地面に仰向けに倒れた僕の腹の上に、片足をエルフは乗せた。両手で剣を頭上まで持ち上げ、エルフはニヤリとする。
 ごめん。ルイユ……みんな!

 『主様!』

 「アイスイン!」

 その声と共に、頭上に上げた剣が凍って行く。
 エルフが声に振り返ると、イラーノはこっちに向かって走って来ていた。剣を手にして、エルフに斬りかかる。

 「ぐわぁ」

 「クテュール! 大丈夫?」

 「ありがとう」

 エルフは、わき腹を斬られ倒れた。
 そうだった。イラーノもこの結界は大丈夫だったんだ。

 「ごめん。気を失っていたみたいで……」

 アベガルさんが庇ってくれたからだろうけど怪我などはないみたい。

 「そうだ。アベガルさん、大丈夫?」

 「そうだね。俺を守ってくれたようだし。ヒールをしてくるよ」

 僕達は立ち上がった。

 『主様後ろ!』

 ハッとして振り返ると、剣を奪われた!
 ばれていた!?
 そう思っていたらその剣は、僕の腹に突き刺さっていた!

 「クテュール!」

 『クテュール!』

 『主様!!』

 お腹が熱い!

 「ぐわぁ!」

 エルフが、吹っ飛ぶ姿が見えた。ルイユがやったのかも。

 「ごめん、剣抜くよ。そうしないとヒールで――いか―」

 イラーノが泣いている。

 「な、――で、な――なん――。ど――て――抜けな――だ!」

 イラーノが叫んでいる?
 何を言っているか聞き取れないや。真っ暗闇だ。

 「死ん――だめ――! 何の――魔女――いんし――? 君がい――とルイユは……た―――ンスターになる―――ないの?」

 「――です! 主様が死―――意味―――ません!」

 「ご……めん……ね……ルイ……ユといっ……に」

 ごめんね。ルイユと一緒にもう少し一緒に居たかっただけなんだ――。



 ――クテュール。

 誰? 僕を呼ぶのは誰?
 その声はどこかで聞いた事がある。

 ――クテュール。

 あ、ケアリーヌさん?

 ――そうです。

 ごめんなさい。役目を果たせないまま死んじゃったみたい。

 ――あなたはまだ、かろうじて生きています。

 え?

 ――ですが、このままでは時間の問題です。そこでお願いがあるのです。

 お願い?

 ――魔女を受け入れて下さい。私と共に。

 受け入れる? それって……。

 ――あなたの体が保たれる様に、私もあなたに力を貸します。ですので魔女を受け入れてほしいのです。

 ……いいけど、僕が死んだら魔女はどうなるの?

 ――私が一緒に連れて行きます。そうすれば、輪廻できません。

 それ本当?

 ――本当です。私の力が及ばす、長い年月がかかってしまいました。あなたに託してよかった。ありがとう。

 ううん。僕こそお礼を言うよ。助けてくれてありがとう。

 ――ここはどこ?

 もしかして魔女?

 ――お前は、チュトラリーか! なぜ、お前の中に?

 ――諦めなさい。捕らえましたよ。

 ――ケアリーヌか! 元と言えば、人間どもがエルフに奇襲を掛けようと企んだからだ!

 え? それって戦争?

 ――そうだ。それを阻止する為に、人間の国を滅ぼした。それなのに!

 ――やりすぎたのです! その証拠もないのですからあなたが逆に奇襲をかけた事になったのです!

 ――そうさ。私一人に罪を押し付けた。だからエルフも滅ぼす事にしたんだ。

 ――あなたは強大すぎた。それを恐れた同胞によって、嵌められたのでしょう。だからと言って、全てを無に返そうとするなんて!

 ――そうだとわかっていてもこの世界を救うのか?

 ――そういう者達は一部なのです。強大な力は、バランスを崩す。彼が、我々を受けれいてくれた。一緒に見守って行きましょう。

 ――見守る? 人間は高々100年しか生きないのだぞ?

 ――本来なら。ですが、私が力を貸しますので長生きできるでしょう。

 ちょ。ちょっと待って! 体を保つって言っていたけど、もしかしてミューラちゃんみたいに年を取らないとか?

 ――いえ、エルフと同じ緩やかになります。

 そう……それでも十分凄いけど。

 ――ほう。面白そうだな。ふん。ルイユを使役してあげるよ。

 ――残念ながらそれはできません。彼は、自我を持ち生きて行きます。その為に、私がいるのですから。

 ――それでは、本当に見守るだけではないか!

 ――はい。見守るだけです。後は、彼らに任せましょう。さあ皆が待っています。

 うん。ケアリーヌさん、ありがとう。ルイユといる時間をくれてありがとう――。

 『……様。主様』

 『クテュール!』

 あぁ。僕を呼ぶ皆の声が聞こえる。
しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

【完結】魔術師なのはヒミツで薬師になりました

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 ティモシーは、魔術師の少年だった。人には知られてはいけないヒミツを隠し、薬師(くすし)の国と名高いエクランド国で薬師になる試験を受けるも、それは年に一度の王宮専属薬師になる試験だった。本当は普通の試験でよかったのだが、見事に合格を果たす。見た目が美少女のティモシーは、トラブルに合うもまだ平穏な方だった。魔術師の組織の影がちらつき、彼は次第に大きな運命に飲み込まれていく……。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...