【完結】婚約破談から始まる堅実令息とあきらめ令嬢の予想外な関係

すみ 小桜(sumitan)

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なぜこうなった 3

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 「えぇ、ランゼーヌ様はそのような事は考えないでしょう。しかし彼女の周りの者もそうとは限りません」

 アルデンの言葉に、クレイは思い当たる人物がいた。ランゼーヌの両親だ。
 爵位を継ぐはずのランゼーヌを家から追い出し、息子に継がせようと策略していた。もしそういう人物だと知られれば、いやもうすでにわかっているから言っているのかもしれない。
 クレイは、モンドが婚約誓約書を持って来て、アルデンと会っている事を思い出した。

 「必ず私がランゼーヌ様をお守りします。ですので善処をお願いします」
 「え……あの、クレイ様」

 クレイが深々と頭を下げお願いを申し出るが、アルデンはそれをジッと見つめるだけだ。
 ランゼーヌはどうしたらいいのだろうと、考える。

 (一番いいのは、契約を破棄してもらう事よね。契約していなくてもワンちゃんならきっと、傍に居てくれるわ)
 「あの私が契約を破棄すれば……」
 『俺っちはしないぞ!』
 「え!?」
 『私もできません。あなたを殺す事は望んでおりませんので』
 「えぇ!?」

 ランゼーヌの話の途中で拒否したワンちゃんに驚くランゼーヌだが、ピュラーアの言葉にその意味を理解して更に驚いた。

 「それって契約は死ぬまで解除できないという事!?」
 『そうです。あなたが消えるまで他の者とも契約できません』
 「「………」」
 (勝手に結んでおいて、それはないんじゃない!?)
 『あなたは最強の力を手に入れたのですよ? 彼があなたに何かしようとしてもできません。もちろん、王が行おうとしても』
 「そうかもしれませんが、私はそんな力はいりません。それに契約者しか守らないのでしょう?」
 『願えば彼もお守りしますよ』

 ピュラーアが、クレイをチラッと見た。
 そうするとクレイは、両手をギュッと握りしめ、唇をかむ。
 守りたいと思った相手に守られる存在。彼にとって屈辱だった。

 「私は、彼女を守りたいのです。彼女の枷になるなら死を選びます!」
 「え……」
 (何でこうなるの? これじゃピュラーア様を助けた意味がないわ)
 『泣くな、ランゼ。俺っちがいるだろう』

 気が付けばランゼーヌの瞳からは涙があふれていた。

 「わ、私は、ピュラーア様の契約を望んだわけではないのに、そのせいでこうなったのよ! あなたは人間の事をよく知っているでしょう? こうなる事も予測できたはず。なのになぜ!」
 『そうね。ある程度は予測はしていたわ。でもあなた達の関係までは予測出来ないわ。契約はあなたを守るものだったのだけど……そうねランゼーヌ、あなた今すぐに結婚しなさい』
 「え!」
 「本当に突拍子ないな、精霊王は!」

 イグナシオは、アルデンに任せ口を挟まないつもりでいたのだが、つい口を挟んでしまう。
 ランゼーヌとクレイは、顔を真っ赤にさせていた。

 『それは、名案だ!』

 喜んでいるのは、精霊側だけだ。

 「まず、なぜそれが名案なのかご説明下さい」

 アルデンが、そう言って説明を問う。

 『ランゼーヌと契約している精霊が二人だからよ』
 「それではわかりません! もっとかみ砕いてご説明願います」

 アルデンが、少しイラっとしたように言った。

 『俺っちは、ランゼの魂と契約しているからさ』

 ワンちゃんが、そう説明するもそれだけでは不十分だ。なので、その続きをピュラーアから聞こうと皆、ピュラーアに振り向く。

 『私は、彼女の名に契約しているの。だから名が変われば契約は消滅するわ。魂との契約を行えるのは一度のみ。なので私は、名と契約したのよ』
 「わざとですね?」

 アルデンが更に怒っている様子を見せた。遊ばれている。そう感じたからだ。

 『私はあなた方の質問に答えたまでです。契約も彼女が結婚すれば、いずれ消滅していました。ランゼーヌを守るのはワンだけで十分でしょう。本当に人間ってなぜ本当の事を言うだけで怒るのかしらね』
 「………」
 「……っぷ」

 アルデンが負かされているのを見て、我慢が出来ずにイグナシオは噴出した。

 「陛下、何がおかしいのでしょう?」
 「いやすまん。ごほん。その件賜りました、精霊王」
 「「え!?」」

 なぜかイグナシオが精霊王に返事をした為、ランゼーヌとクレイが驚く。

 「さて、一度戻ろうか。アルデン」
 「そうですね。しかし、このままここから戻るとなると……」

 王宮内でも王族が住むエリアは、騎士が守るドアを通らなくてはならない。一か所しかないので必ずそこを通る。そこから出ていないのに、そこから入るのなら不思議がられるだろう。まあ知らんぷりすれば、何も聞かれないだろうが……。

 「もし可能なら精霊王に送っていただくのはどうでしょうか」

 クレイがそう提案した。
 アルデンの言いたいことが、クレイにもわかったからだ。緊急事態が起こらなければ、ドアを使用する事を知っていた。

 「可能か? 精霊王」
 「先ほどは、こちらに呼ぶのも元の場所に戻すのも同じ事だったので、呼び寄せたまで」

 イグナシオが問うと、ピュラーアはそう答えた。つまり送らないという事だ。

 「私のお願いなら聞いてくれる?」

 慌ててランゼーヌが言うと、ピュラーアは頷く。

 (それぐらい簡単に出来るなら、私がお願いしなくてもやってあげてよ)

 ぐったりと疲れるランゼーヌだった。
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