呪縛の聖騎士、戻るために『女』として奮闘す?!

結城里音

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第14話 (2章2話) 馬車の旅路とお約束。

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 一路。マリネシアへと出発したラント達。
 ガタゴトと小気味好い軋む音を奏でながら、馬車を引く馬は蹄《ひずめ》を響かせながら街道を進む。それでも、セントリアの城門から数キロほど行けば、石畳の街道は整ってはいるものの馬車道と砂利道が合わさる道へと変わる。
 ラントとその補佐でもあるセリアにエリス。ガルドの娘、セリーナにドラクシオンの王女、イレイナスとグリエリ。そして、酒場で合流した少女。アリアナを含めると、総勢7人連れの大所帯での旅路となっていた。

「こんな、立派な馬車を......」
「よく借りられましたね。アリアナさん」
「うんうん。オレも借りたこと無いから...」
「......ラントさん、マリネシアなら普通に馬で行きますからね~」
「あぁ。数人で行くなら、馬車より馬のほうが都合が良いし、自由がきく」

 立派な馬車に揺られながらも、話に花が咲いていく。
 たしかに7人乗りの馬車というのは、大型の部類に入る。王家の馬車でも乗れて6人程度ということも考えれば、ゆったり乗れる馬車の中の設《しつら》えとあわせて、相当なコネや顔が広かった。

「そうですね~」
「まぁ、顔が利く。という感じでしょうか」

 すらりとした手足と長く垂れ下がる髪をポニーテールで纏めたその姿は、どこか妖しさを醸し出すものの、その仕草に悪意は無く。むしろ、フレンドリーさすら感じるほどだった。
 日差しを浴びた白髪と立派な紳士服は、線の細さも相まってどこか幼さすら感じるほど。それでいて声の高さが、それらを更に助長させていた。その不思議な風貌《ふうぼう》に、グリエリとイレイナスが怪訝な目を向ける。

「あ、あはは......」
「......ふーん」
「ま、楽に移動できるから良いけどなぁ~」

 イレイナスとグリエリの様子を眺めながらも、ラントも一緒に眺めているもののさして気にしていなかった。

「まさか、護衛側じゃなくて、乗る側になるとはなぁ...」

 聖騎士としてなら、この大きさの馬車を護衛する為に幾度と無く傍らを馬で掛けたことならいくらでもある。しかし、馬車の“中”に乗る側になるのは、これが初めてだ。

「......落ち着かない? ラント......」
「ラントさんが珍しいですね~」

 窓際に体を預けるようにして腰をおろしながらも、窓の外をぼんやりとながめていた落ち着かないラントを、ニヤニヤと楽しげに話すセリアとエリス。

「仕方ないだろう? 少し前まで男だったんだ」
「急に女になったからなぁ......」
「馬車に乗るなんて、無縁だったからなぁ...」

 そんな珍しいラントの姿に、ケラケラと笑みをこぼすイレイナス。

「なんだ。あんたは馬車が苦手なのか。強いあんたでも弱いところがあるんだな」
「そうです。ラントさんが馬車が苦手なんて......」
「苦手と言うわけじゃないんだが...」
「男だろうと、女だろうと関係ねぇさ。苦手は苦手だからな!」
「そうですね♪」
「まったく......」

 くすくすと楽しげな笑みを見せるグリエリとイレイナスの様子に、呆れてしまったラント。そんなラントには気になることのほうが多かった......。
 聖騎士として管理をしているのは、基本的に国内だけ。それ以外は冒険者の役割になっているものの、その冒険者もダンジョンができたこともあり、そちらにかかりっきりだった。

『街道には山賊がいるんだよなぁ』
『まぁ。この顔ぶれを見て、襲うほうがどうかしてるが......』
『襲わないとも限らないんだよなぁ......』

 ラントたちが乗っているのは、立派な馬車。それこそ、王族とまではいかずとも、貴族が使っていそうな馬車でもあった。2頭引きの7人乗り馬車は目にも華やかだ。
 そんな馬車が走る場所が開けた見晴らしの良い街道を抜け、山岳エリアに入ると一気に雲行きが怪しくなっていく。ガタゴトと揺れる車内は、一層。路面の悪さを伝えていた。

「......んー」
『オレが襲撃するなら、ここかなぁ......』
『ま、無いに越したことはないんだけど......』
『それに、万が一の時は......』

 窓の外を眺めつつも、室内を眺めればそれぞれが話題に盛り上がっていく。何気に、ドラクシオンの王女にセントリアの聖騎士と仲間。そして、マリネシアを知っている旅人という個性たっぷり。
 特に酒場から加わったアリアナに関しては、戦えそうにはない。まして、王女を戦わせるなど、もってのほか。あれこれと考えを巡らせるうちに、馬車は山岳を跨ぐように、作られた街道へと入っていく。

--

 大陸を跨《また》ぐようにして鎮座する山岳は、各国を分断するようにして天然の要衝《ようしょう》としていた。その山脈はセントリアを囲むように鎮座しているため、マリネシアに行く時にも峠を越える必要がある。
 高くせり立つ山を切り通しをするようにして作られた街道は、商人なども利用していることもあり、物流の要衝《ようしょう》でもあった。そんな街道に、最近。物騒な話が聞こえてきていた......

「おうおう、2頭がけとは、ご立派な馬車だなぁ」
「どんな貴族様だ? たいそう溜め込んでそうだなぁ」

 街道を見下ろす高台。その場所は襲撃場所として定石だ。山脈が都市を囲むことは、守るにも責めるのにも盤石だ。ただ、どんな盤石な砦だろうと物流まで止めるわけにはいかない。そこがネックになってしまう......
 ガタゴトと馬車が音を奏でる中で、突如として馬の嘶《いなな》きと共に急停車すると、車内は荷物が飛び交うように前方へと追いやられてしまう。

「くっ!」
『素直に見逃してくれないか......』

 確かに、これほど豪勢な馬車で護衛をつけずに走っているのだから、“どうぞ襲ってください”と言っているようなもの。案の定、ガラの悪い輩が車内へと続く扉を豪快に開ける。

「おうおう。上玉揃いじゃねぇか!」

 ケラケラと乾いた笑みをこぼしながら、品定めをするように車内をめぐる。

『......動くなよ?』

 ラントは魔法で念話を飛ばす。

『なんでだよ...』
『そうです、こんな輩なんて、ひとひねりです』
『イレイナスとグリエリの腕ならなぁ。でも駄目だ...』
『ここに、王女がふたりいる。なんて、知らせるようなもんだ』
「くっ...」

 狭い車内をくまなく確認したあと、男たちはラントたちをぞろぞろと馬車の外に並べていく。

「くっ!」
『冒険者は何をしてるんですか......』
『仕方ないわ、ダンジョンのほうが実入りがいいもの...』
『それは、わかりますが......』
『それに、彼らは......おそらく......』

 両手を頭の上に乗せられ、拘束されながらも刹那に見たセリアはエリスやラントに念話を投げる。

『えぇ、冒険者かぶれでしょうね...』
『あぁ、だろうな』
『それなりに装備もいいしな...』

 ジャラジャラと短剣を腰に指しながらも、馬車の横に並んだラントたちを品定めをする。遅れ馳せて到着した馬車の荷台には、奴隷商の荷馬車よろしく鉄格子が張り巡らされたカゴが乗せられていた。
 しかも、中にはすでに何名かを捕らえたかのようで、怖がっている少女たちが顔を覗き込ませるようにして、隙間からこちらを眺めて怯えていた。さらに小賢しく山道から見えないように岩陰《いわかげ》に隠してある。

『くっ、落ちぶれた冒険者風情が、奴隷商に鞍替えか? まったく...』
「この、くそったれ野郎!」
「おうおう。威勢がいいねぇ!」

 すらりとした細身の体であり、栗色の髪を揺らしながら抵抗するも、相手が男ならば魔力を使わずに倒すのは、色々と面倒なようで。両手首を掴まれて、馬車の横に吊るされてしまう。
 上質なコロンの香りは、いくら貴族らしいみなりに身をやつしていても、第3王女という風格は隠すことはできずに、その姿にあらわれてしまう。男は体よくそれらを感じ取り、駄犬のように鼻を鳴らしながら嗅ぎ回る......

「くぅっ。いい匂いがするぜ! たまんねぇ...」
「護衛もつけずに、来たのが運の尽きだ!」
「俺らのほうがツイてたわけだ! な? そうだろ?」

 そういうと、弓持ちの男に槍使いの男とガラの悪い冒険者崩れが草むらから顔を出す。どうやら、奴隷を乗せる馬車も彼らのもののようで、ひどくでっぷりとしたお腹が目立つ輩だった。

「だなぁ。くぅっ。こいつぁ、上玉だらけじゃねぇか!」
「今晩だけじゃなく、何日だって楽しめそうだなぁ...がはは!」
「馬も仕留めてっから、肉にも困らねぇしな!」
「だな! 変なオーク肉とか喰らわずに済むしよ!」

 なまじ冒険者ということもあり、野宿の能力はあり食事に関しては事足りるようだった。しかし、野郎だけの冒険者に女手がいるはずもなく、奴隷商に持ち崩したようだ。

『まったく、これだから男は......』
『というか、オレも元・男だが......』

 さりとて、窮地に陥っている王女が力を使えずにやられているのを見るのも癪《しゃく》に障《さわ》る。
 一歩前に進み出ると、それだけでラントに男たちの目が集まる。それだけで、ゾゾッとした感覚が体を駆け上がる。

「っっ!!」
『男の視線って、こんな感じなのか......』
『オレも、こんな風に見てたのかぁ? はぁぁ...』

 男たちの視線に一瞬。怯んでしまうものの、率先して前にでるラント。

「なんだ? あんたが代わりになるってのか?」
「あぁ...」

 両手を上げながら一歩前に出る姿に、アリアナが驚きの声を上げる。

「ラントさん?! 人質なら、私が...」

 アリアナの声にゆっくりと首を振ると、男がラントを連れ出していく。馬車の前に歩かされ、ありありと奴隷馬車が目に留まると、怯えている女性が首輪と手枷《てかせ》を付けられていた。あれほど立派だった大型の馬も横たわり、息もそぞろだった。
 そんな馬車と奴隷馬車の間に立たされたラントは、品定めをされるように周囲をぐるぐると男たちが見回す。つま先から頭の先まで、舐めるように見回されるほどに、背筋を寒気が駆け上がるほどだった。

「こいつはまた、上玉だなぁ...」
「他のもいいが、更に上かぁ?」
「それに、他のやつは売ってこいつに相手してもらおうじゃねぇか...」
「それは......」
『オレでも、穴が足りないな...』
『って、何を考えてるんだ! オレは......!!』

 恥じらうラントの様子は、男たちを更に興味をそそったようで、さらにラントの体をじっくりと見始める。形の良い細い腰にやわらかな臀部、長く垂れ下がる髪と鋭い瞳は男の欲情をそそるのには十分だ。

「くぅぅっ。あっちの気負った香水もいいが...こっちも良いなぁ!」
「それによ...!」

 そういうと、男は短剣を取り出すと...

「ふんっ!!」
「......は?」

 勢い良く振り下ろした短剣は、ラントの服を上から下までビリリと引き裂いてしまう。熟した隠れた果実が顔を覗かせるようにして露わになれば、男たちも歓喜の声を上げる。

「うひょ~マジかよ!」
「こいつぁ。上玉だ。たまんねぇ!」
「なぁ、たまんねぇよ。売る前にたべちまわねぇか?」

 ゲラゲラと高笑いをする男たち。
 拘束されていたこともあり、隠すことすらままならない為、その柔肌が露わになってしまう。ぷるんと揺れ動く乳房に桃色の柔肌、そして細い腰と鼠径部が露わにになってしまう。そして、ラント特有の紋章《エンブレム》が露わになる。

「おい、見ろ。この体......」
「おい、マジかよ! 紋章《エンブレム》持ちかよぉ。たまんねぇ!!」
「こいつぁ、ツイてたのは俺らの方だったようだな! がはは!」

 腹立たしい気持ちに包まれながらも、ぐっと堪えながらも口にする......

「......エンブレム? この紋章のこと...?」

 ゲラゲラと高笑いする男たちは、知らないラントにニヤリと笑みをこぼしながら話を続ける。

「あぁ、譲ちゃんは知らねぇだろうが、他の俺らの仲間の間で有名さ」
「この紋章《エンブレム》が入った女は高く売れる。それに...」
「最高に気持ちいいってなぁ! がははは!!」

 すると、仲間の男たちも合わせるように...

「あぁ、向こうの連中も良いものを発明するぜ!」
「だな。これを使えば、どんな女も上物になるんだからよ! あはは!」

 イライラと腹立たしい気持ちに包まれながらも、ラントに刻まれた紋章の効果の片鱗が感じ取れた。

『なるほど、これはそういう紋章だったのか...』
『それを、“男のオレ”にしたから、女体化したのか......』

 もともと、中性的な見た目ではあったものの、そこまで女に間違われるほどではなかった。しかし、襲撃者によって施されたことで、本当の“女”になってしまっていることが、片鱗でも見えてきた。
 頭を下げ、ガックリとうなだれる様子は、抵抗を無くした女にも見え、男たちは更に調子良く......

「なんだ? そんなにショックだったのかぁ?」
「なんだよ。俺らがすぐに気持ちよくしてやっからよ」
「楽しもうぜ。ガハハ!」

 高笑いするようにして、勝ち誇る男たち。

「......そうね。楽しみましょうか......」
「あはは! そうだな!」

 腹が立って仕方がなかったラントは、男たちが付けた手枷《てかせ》を魔法で解除すると、首輪まで壊してしまう。パリンパリンと軽快に響く音は、男たちの驚きと共に、あたりを包む。

「なっ?!」
「お前! 生半可な魔術仕込んだな?」
「ちげぇよ! ちゃんとした魔力封じだぜ!」
「なら、なんで壊れんだよ!」

 首輪と手枷が外れ、動きが楽になったラントは、開《はだ》けているのすら気にせずに、男たちに向かっていく。

「いい加減に離してもらえるかな?」
「駄目に決まって......」
「......そぅ。それじゃ...」

 そういうと、しなやかな脚が思いっきり振り上げられ、男の股間を蹴り上げる。

“ごりっ!”

「ふごっ!!」

 そんな勢いとともに、股間を抑えて悶えて倒れ込む。

“ばたっ!”

「なっ! お前ら、捕まえろ!」
「言われなくても!!」

 ブラジャーやパンティなどといったインナーウェアが見えようと関係なく、男に向かい合うラント。
 男もラントを捕まえようとするが、男であるが故の性《さが》が出て、ラントの下着に目が行く。その刹那にラントの拳が男に振り下ろされるのだ。

「ふごっ!」
「このっ!!」

“しゅんっ!!”

 ラントに放たれた矢が肌をかすめながらも、踊るように踵《きびす》を返せば、はらりと布がはだけて、その柔肌が明るい日差しに照らし出される。その度に、男の視線は、その柔肌に吸い寄せられる。
 放つ矢もそれに従ってブレるほどに、ラントにとっては好都合。何にしても、ラントは止めることをしないし、したくはなかった。

『......セリーネちゃんが見繕った防具まで切ったな!』

 ラントにとってはそれだけで十分で、せっかく彼女が作ってくれたものが早々に壊されてしまった為、腹立たしくて仕方がない。
 シュンッと風を切るように耳の横をかすめる音に怯む事無く、男と距離を縮めるラント、整った顔には決意と殺意が交じりながらも、その下には肌が露わになり、零れそうな胸の谷間とブラジャーの布地。そして、振り上げられる拳が見える。

“がすっ!!”

「ふぐっ!!」

 欲情と窮地が共存するように、男の体が飛び上がるとガクッとその場に崩れ落ちる。

“どさっ”

 あっという間にふたりを昏倒させてしまうラントに怯えた男は、あろうことかもうひとりの首筋に短剣を突き立てる。

「おい! こいつがどうなっても良いのか!」
「......ん」

 振り返るラントの目には覇気が宿り、怒りに駆られている様子が男にも伝わる。しかし、そこから動くことはなかった。というより、動く必要がなかった。

「わかった」
「......はぁ。お前、なにもんだ! どこのお嬢ちゃんだ」
「そんな腕の立つ譲ちゃん、知らねぇぞ? 何なら、仲間になんねぇか?」
「それだけの腕っぷしがあれば......」
「ん~それはね。捕まえてる相手すら、倒せないんじゃないかな?」

 冷や汗をかく男を眺めながらも、呆れて返事を返すラント。
 男は全くわからない様子で、人質の首に短剣を突き立てていた。

「は? 何を言ってんだ? こんなのが簡単に......」
「んぅ、イレイナス。いいよ~」
「は? イレイナスだ? まて、その名前...」

 怯える男の震えが更に強まると、魔力が溢れ出す。それは男ではなく、囚われているイレイナスの方で......

「はぁぁ。ようやくかよ...」
「へっ?」
「まったく、ツイてないだのと好き勝手いいやがって......」
「待て待て......イレイナスって、まさか......ドラクシオン第3王女...」

 パリンっと封魔の首輪と手錠を破壊すると......

「......一発。殴らせろ...」
「イレイナス。殺すなよ?」
「あぁ、一発だけだから......なっ? 死ぬなよ?」
「えぇぇぇぇぇっ!!」

 みごとに振り抜かれた拳は、男のみぞおちに入る。

「ぐはっ!!」

 振り上げられた拳と共に、男が垂直に飛び上がる。まるで、打ち上げ花火のように見事に高く飛ぶと、どうやら彼女の従者でもあるグリフィンがいたようで、ガシッとその脚で掴まれてしまっていた。

「あぁぁ、やっぱり連れてきてたのか...」
「あたりめぇだろ? 何があるかわかんねぇからな」
「というか、ラント。ずるいだろ、みんな倒しちまって...」
「アタシの分も残しておけよ......」
「いや、そんなことを言ってもだな...」

 ふたりの強さにあっけに取られるアリアナは、ガチャッと拘束具を外された後、改めて事情を知ることに......。

「えっ、ラントさんって...」
「あぁ、元聖騎士だから。こっちは、第3王女だし...」
「え、えっ?」
「んで、そっちが第4王女のグリエリだし...」
「えぇぇっ?!」

 何の気なしに親友のように馬車内で接していた相手が、王女たちだったということを知り、一気に縮こまってしまう。その傍らでは、エリスが馬の治療に入っている。かろうじて息が残っていた馬も、回復治療により復活していく。

「私も聖騎士で......こちらのエリスも......」
「はい! 聖騎士ですよ~♪」
「えぇっ......」

 馬車の手綱を握っていたひとも介抱すると、しばしの休憩に入っていく。

「姉《あね》さんたち、ただもんじゃないとは思ってたが...」
「どうりで強いわけだ。奴隷達も救っちまったし...」
「まぁ、ね...」
「というか......」

 腰に手を置いて誇らしげにしていたラント。
 卒倒させた男たちは、解放した女たちが入っていた檻に入れ、ひとまず落ち着いてた。

「......ん? なにか...」
「あの、譲ちゃんは気にしてねぇと思うが......」
「俺は気にするんだ。だから、隠してくれねぇか? 前...」
「ん? あ......」

 怒りに身を任せて男たちを倒したラントだったが、その姿はそのままのため服の前が開けた状態だった。

「ラントのそういうところ、好きだぜ!」
「ラント......あなたねぇ、少しは女の子として自覚を......」
「ら、ラントさん。え、エッチですよ...」
「う、うん。綺麗......」
「あ、あはは......」

 身だしなみを整えるために、ラントの元に向かうセリア。その傍らにセリーネも寄り添いながら、防具を簡易的に直していく。

「だって、こいつら。セリーネちゃんの防具まで切ったし...」
「いいから、じっとして......」
「そ、そうです。防具は壊れるものですから......」
「でも......」

 持ってきていた布や、変えの衣装にラントを着せ替えさせていくセリアにセリーネ。すっかり、されるがままの着せ替え人形化してしまうラントの様子を、クスクスと眺めてしまうアリアナ。

「ふふっ......」
「おかしな方でしょう? ラントさんは...」
「グリエリさま...」

 ラントの身だしなみを直す様子を微笑ましく眺めているアリアナに、寄り添うようにして話しかけるグリエリは、同じように楽しげにながめる。

「ラントさんはそういう方なのです」
「基本的に。戦いは嫌いですし...」
「でも、強いんですけどね...」
「はい、たしかに強い......」

 それから、服を直されたラントは、下りてきたグリフィンと会話をしながらも、冒険者崩れの山賊や奴隷商を入れた馬車を引かせる事になる。

『ワシが引くのか?』
『ほら、他に引けるものはいなくて...』
『頼むよ...』
『うむ。しかたあるまいな』

 高貴な部類でもあるグリフィンが、奴隷馬車を引くという事に抵抗したものをなんとか説得したのだった。そんなラントの姿を見ながらも、アリアナの目はひときわ輝いていたのだった。
 そして、馬車を引く馬も治して、ラント達の旅が続いていく。
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