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「よーし、着いたぞ!」
梅雨が明けて七月。真っ青な夏空の下、葉奈と明日夏、そして二賀斗は明日夏の自宅から車で二時間ほど離れた高原にあるイチゴ園に来ていた。そのイチゴ園は、標高が一〇〇〇mの位置にあり、夏でも涼しい気候のため、この時期でもイチゴ狩りが可能だった。
二賀斗の車の後部座席のドアが開くと、明日夏が降りて外に出る。
「葉奈ちゃーん、歩けまちゅかぁ」
明日夏は、幼い声で葉奈を車からそっと表に連れ出した。葉奈の足には手のひらよりも小さな靴が履かれていた。
「すごいね。一歳と三カ月くらいで、もう歩けるんだ」
二賀斗は、靴を履いた葉奈を見るなり改めて感心した声を出す。
「早い子だと走れるらしいわよ。行こ! ニーさん」
「あ、ああ」
明日夏は、幼い葉奈の手を優しく握り、ビニールハウスに向かう。二賀斗は、二人の後を追う。
「……睦まじいなァ」
二賀斗はそう言うと、何気なく辺りの風景に目をやった。二人が向かっているビニールハウスの遥か彼方には、碧色の山々が堂々と鎮座している。そして、見渡す限りの紺碧の空がいくつかの巨大な白い雲を従えている。瑠璃色の空が、何となく地上のすべてのものを涼しい色に染め挙げているかのように見えた。
「うっわぁー。すっごーい! ニーさん、見て見て! ホントにイチゴが生ってる! 感動ーッ!」
ビニールハウスに入るなり明日夏は興奮した表情で声を上げた。そして葉奈はと言うと、不思議そうな眼つきでイチゴを見つめている。
「ふふっ」
その光景を見て、思わず二賀斗はにやけた顔をした。
「三〇分しか居れないんだからねー。葉奈ちゃんどれにする? これがいいかなー?」
そう言って明日夏はしゃがみ込んで赤いイチゴを一つ、摘まみ取ると、軸を取って葉奈の口元に差し出した。すると、葉奈は爬虫類のように勢いよくイチゴに食らいついた。
「わっ!」
明日夏が、驚いた声を上げる。
「あっははは! なんだ! 今の、カエルみたいだったな」
それを見ていた二賀斗が大声で笑った。
「もー、葉奈ァ。ビックリしたー」
「いちぃごぉ! いちぃごー!」
葉奈は小さな手で赤いイチゴを指さすと、たどたどしく“イチゴ”という言葉を連呼した。
「はいはーい。今取りますからねー」
明日夏は、気を取り直して再びイチゴをつまみ取り、葉奈に差し出した。葉奈は、小さな口を大きく開けてそれをおいしそうに頬張った。
「おいちーですかー?」
明日夏は、嬉しそうに葉奈に話しかける。葉奈はおっきな頭をコクンと下げて頷いた。
「あらー。おいちーんですねー」
明日夏は堪らず葉奈のプルンとした頬を人差し指で優しく揺らすと、葉奈は小さな口を横いっぱいに広げて笑った。
二賀斗は、そんな二人の睦まじい姿を写真に収めながら愛しい眼差しで葉奈を見つめていた。
しばらくすると三人がビニールハウスから出てきた。
「三〇分なんてあっと言う間ね」
葉奈の手を引きながら、明日夏が言う。
「そうだね。葉奈にイチゴ渡してたら、それだけで終わっちまったよ。でも、葉奈って面白い食べ方するよな。口元に置くとヘビみたいにパクッって食ってさ。明日夏も面白がって食わせてたろ」
「えぇー。やめてよ、そんな。……まぁ、面白かったけどォ」
明日夏は、顔を綻ばせながら二賀斗を見る。
「それより明日夏は食べられた? イチゴ買っていこうか」
「平気よ。お土産用に摘み取ってたから。葉奈ちゃん、イチゴはもういいの?」
「たべるぅ」
葉奈は口を尖らせてそう言った。
「じゃあ、おうちでたべようねー」
「んー!」
葉奈の返事に、明日夏は笑顔で応えた。
「うふふ。お口尖がらせてェ、ほんとかわいい!」
二賀斗は明日夏の笑顔を横目に、少し物憂げな顔になった。
〈……明日夏だって収さえ生きていれば、もしかしたら自分の子供にこうやって愛情を注げられたんだろうに〉
「ニーさん?」
明日夏の声に二賀斗はハッとした。
「あ、ああ。ん?」
「ここから少し下ったところに道の駅っぽいところがあるから、そこでお昼にしよ」
「ああ、そうしよう。……うん」
三人は、遠くに屹立する碧い山々を背に車に向かった。
七月の高原の風は純粋すぎるほどに青く、そして何処となく甘い香りに溢れていた。
夏が行き、冬が終わり、……そして幾年かが過ぎていった。
四月。幼かった葉奈も三歳になり、元気に近くの幼稚園に通うようになっていた。
朝八時。送迎バスが明日夏の自宅前に停車する。バスの乗り入れ口が開くと、若い女性の幼稚園教諭がそこから降りてきて笑顔で葉奈に挨拶をする。
「葉奈ちゃん、おはようございます」
容子のそばに立つ葉奈は、小さな口を広げて大きな声で挨拶をする。
「おはようごじゃいます!」
「よろしくお願いします。葉奈ちゃん、いってらっしゃい」
容子は、先生に挨拶すると、葉奈に軽く手を振った。葉奈は、反射的に小さな手を容子に向けて振りながらバスに乗り込んだ。
バスの乗り入れ口が静かに閉じられると、バスはゆっくり動きだした。
幼稚園での園児の過ごし方は、午前中、園内で元気に遊び回ったり、お絵かきや散歩をし、お昼を食べた後、また遊びや絵本、紙芝居などの読み聞かせを聞いた後、午後二時ごろに送迎のバスが帰路に向かうという流れになっていた。
五月。葉奈と明日夏、そして二賀斗は幼稚園の遠足で動物園に出掛けた。
園内では、多くの幼稚園児が、はしゃぎながら縦横無尽に走り回っている。
葉奈は小さな柵で覆われているウサギ小屋の中のウサギに向かって、懸命にエサを投げ入れていた。
「このウサギがみんなたべちゃう」
葉奈は、お目当てのウサギにエサをあげようと、必死にそのウサギに向かって投げ入れる。
「葉奈ァ、そんな強く投げたらウサギさんびっくりして逃げちゃうよー」
明日夏は、ムキになって投げつける葉奈を優しく諫める。二賀斗は、二人の後ろからその様子をスマホで撮影しながらほくそ笑んでいた。
突然、一匹のウサギが突進してそのまま柵にぶつかった来た。ドンッ、という音とともに柵が揺れ、ウサギはひっくり返った。
「わあぁ!」
葉奈は、びっくりした顔をすると、一目散に走って二賀斗の足にしがみついた。
「あっははは!」
「あはははは」
明日夏と二賀斗は、声を出して笑った。
「あー、こわかった」
葉奈は二賀斗のジーンズを掴みながら一言、漏らす。
「怖かったの? そうだよねー、すごい突進だったよね。あははッ」
明日夏は、笑い涙を指で拭いながら葉奈に話しかけた。
その後も葉奈は、ヤギにエサをあげたり、友だちと遊具で遊んだりしてその日一日を楽しく過ごした。
帰りのバスの中、葉奈も、その隣に座っている仲良しの園児も、今は目を閉じて静かに夢の中にいる。ほかの園児や保護者も、車の心地良い揺れに抗えず眠りについていた。
二賀斗は明日夏と隣り合わせの席で、窓から見える風景をぼんやりと見つめていた。
「ご苦労さまね、ニーさん」
二賀斗は、その言葉に明日夏の方を向いた。
「ん? ああ、なんでェ。ご苦労なのは明日夏の方だろ。平日なのに休んで、仕事大丈夫なのか?」
「うん、それは平気よ。……楽しかったね、今日」
明日夏は微笑みながら答えた。
「そうだね。……でも、行事ごとに明日夏に出てもらってちゃ、申し訳ないなァ」
二賀斗はバスの天井を見つめた。
「……どれも二回と経験できるものじゃないでしょ。楽しいじゃない。それに、何でもニーさんに任せて出来るものじゃないからね。付き合ってくれるだけでもうれしいわ」
明日夏は優しい口調で二賀斗に返答する。
「俺でよければいつだって付き合うからさ、呼んでくれよ」
「うん、ありがと」
風薫る季節。鮮やかな緑が車窓から現れては消え、現れては消える。
いつしか二人の話し声も聞こえなくなり、車内には寝息の音だけが漂っていた。
八月のある土曜日。夕方過ぎから、葉奈の通う幼稚園で夏祭りが開かれる。
定刻前から園児やその保護者が続々と園に集まって来た。明日夏の家族と二賀斗も、近くの臨時駐車場に車を停めて園に向かう。
「はやくぅー。いくよー」
葉奈は、明日夏の手を引っ張って忙しく園庭に向かう。
「はい、こんばんは。園児と保護者のお名前を記入してください」
園庭の入り口にいる受付役員に促されると、明日夏は記帳台に置いてある用紙に名前を記入した。
「じゃあ、これをどうぞ。葉奈ちゃん、またね」
受付係の父母会役員から、数枚の券を渡された。かき氷券と輪投げ券と書かれている。
少し遅れて、後ろから二賀斗と明日夏の父母がやってきた。
「走るのはやくなったねえ、葉奈ちゃん」
腰を落として二賀斗が葉奈に話しかけた。葉奈は満面の笑みを浮かべて二賀斗の声に応える。
「葉奈、かき氷がもらえるよ。いってみよっか」
「うん!」
葉奈と明日夏は、競うようにその場所へ駆け出した。
「……仲、いいですね」
二人の後ろ姿を見つめながら二賀斗は鐡哉に話しかける。
「ああ。葉奈も明日夏にはべったりだ。アイツ、仕事で疲れて帰ってきても、嫌な顔せず葉奈に本を読んであげたりしてるんだわ」
「明日夏が休みの日なんか、ほとんど一日中、葉奈に付き合ってるのよ。朝起きるとまず、“おねえちゃんは?”だもの」
容子は微笑んで二賀斗に話す。
「……そう、ですか」
二賀斗は、すでに多くの園児や保護者で黒山の賑わいとなってしまった園庭の、たぶん二人が進んでいった先をジッと見つめた。
「ちょっと行ってきます」
二賀斗は父母に一言いうと、二人の後を追い始めた。
〈……うーんと、どこ行ったんだ?〉
人だかりを掻き分け、辺りを見回すと、かき氷の列に並んでいる二人が見えた。
明日夏が、こちらに向かってくる二賀斗に気が付く。
「あら、ニーさんも食べる?」
「あ、ああ」
二賀斗は、腰を低くして屈むと葉奈に向かって話しかけた。
「葉奈ちゃん、今日はおじさんと一緒に回ろうよ」
明日夏がキョトンとした顔で二賀斗を見る。
「いくー。にぃちゃんとおねぇちゃんといっしょにいくぅー」
葉奈は笑顔で答えた。
「……どうしたの? ニーさん」
二賀斗は立ち上がると、済まなそうな顔で明日夏を見る。
「……ん。四六時中一緒にいたんじゃ疲れちゃうだろ。今日くらいは俺が見ようかな、と」
明日夏は口元を上げると、一呼吸した。
「ふふ、お気遣い感謝しますわ。じゃあ、一緒に回ろ」
「まわるー」
葉奈は、明日夏と二賀斗の手を掴んだ。
「葉奈が私に懐いてるのが寂しい?」
明日夏が微笑む。
「いやいや、ほんとに疲れてんじゃないかって」
二賀斗は、葉奈に掴まれた手を軽く揺らしながら答えた。
「……まあね。疲れるけど、一生幼いまんまじゃないでしょ。すぐに手なんか離れちゃうわよ。そのときに何の思い出もないほうが、私は嫌だな」
明日夏も握られた手を優しく振る。
「はいー、なに味にしますかー」
かき氷係の役員のお父さんが葉奈に話しかけた。
「葉奈、なに味がいいの?」
「いちごぉー」
葉奈は、赤いシロップを指さして大きな声で言う。
「はいはーい」
そう言うと、役員のお父さんは赤いシロップを純白の雪山に流しかけた。
「はい、どうぞー」
真っ赤なかき氷が葉奈の小さな手に握られた。
「ありがとうございます」
明日夏が一礼をする。
「座って食べよ。……あそこの向日葵のところにしよっか」
人込みをすり抜け、三人は綺麗に咲いている向日葵のそばに来た。葉奈は花壇のレンガに座り、かき氷を食べ始める。無性に氷を口に運ぶ様を二人は腰を落として見つめる。
「この無性に食べる姿ってさ、すごい愛しく感じるのよねェ。動物ってさ、大人になってもこういう顔って見れるけど、人間って、子どもの時しかこういう顔って見れないじゃない。……ほんと、無性に食べてる。ふふっ」
明日夏は、まじまじと葉奈の食べる顔を見つめる。
〈……まぁ、確かにな。いとおしくは見えるよ。でも、明日夏も結構見方って言うか、言い方が独特っていうか、なんか変わってるよなぁ〉
二賀斗は、明日夏を見ながらひっそりと笑った。
程よく日も暮れた頃、屋外の照明がつき、園庭を照らし出した。幼稚園の職員が、園庭を囲むようにロープを張り始める。
「園児の皆さんはこちらに集まってください。これから園児の出し物がありますので保護者の方々はロープの外でお待ちください」
職員のアナウンスが流れた。
「ニーさん待っててね。葉奈のこと預けてくるから」
明日夏はそう言うと、葉奈と一緒に走って行った。
「おう、ヒロ。やっと見つかったよ」
鐡哉が手を上げて二賀斗に声をかけた。
「園長先生に声かけられちゃって、……すごい人だかりだな」
「これから何か、園児の出し物があるらしいですよ」
「おお、そうか」
明日夏が小走りで二賀斗の元に戻ってきた。
「あら、全員お揃いね」
「何やるのかしら」
容子が笑顔で話しかける。
そのうち、園児がぞろぞろと園庭に入ってきた。幼稚園の先生が、園児を園庭の中央に川の字に整列させる。そして、整列した園児の先に丸々とした大きなスイカが置かれた。
「ほおー、スイカ割りかぁ」
鐡哉が笑顔で声を出す。
棒を持たされた園児に先生が手ぬぐいで目隠しをする。そして、数回身体を回された後、園児はふらつきながら棒を構えて歩を進める。
「やったー」
見事にスイカに当てる子、あさっての方向に歩き出す子、地面を叩く子。その度に周りから歓喜の声が波打つ。
「ほらっ! 葉奈よ! 次!」
明日夏が指を差す。
目隠しをされた葉奈が、おぼつかない足取りで歩み出す。
「葉奈ア! 真っ直ぐだ!」
鐡哉は両手を口元に当てて、声高に叫ぶ。
葉奈が水平に持っている棒の先端がスイカに触れた。
「ほら! 葉奈! そこだア!」
鐡哉が大声で葉奈に教える。
葉奈は立ち止まって棒を振り下ろした。棒はスイカをかすめて地面を小さく叩く。
「ああー!」
鐡哉は一人、興奮した様子で落胆の声を出した。
「あはははっ。お父さん、ちょっと興奮しすぎよ!」
明日夏が笑いながら父に話しかけた。
「ああ、そうか? そんなに興奮してたか?」
「おほほほ。お父さんすごい声だったわよ」
容子は声を出して笑った。
それから、法被をきた園児が小さな山車を引き、園庭を練り歩いた。明日夏も二賀斗も葉奈の練り歩く画像を何枚もカメラに収めた。
山車の練り歩きが終わると、園児は保護者の元に戻され、最後に役員が用意した市販の花火が十数個園内中央に置かれ、色とりどりの綺麗な火花を暗闇で咲かせて夏祭りは幕を閉じた。
駐車場までの帰り道、明日夏は二賀斗に背負われている葉奈に向かって尋ねた。
「今日は一番、何が楽しかったー?」
「かきごおりぃ!」
「あっははは! そうかそうか!」
鐡哉の笑い声がはじける。
「おいしかったもんね」
二賀斗が葉奈に話しかける。
「うん!」
夜空には、白く輝く満月が星々を従えて地上の二賀斗達を照らしていた。
梅雨が明けて七月。真っ青な夏空の下、葉奈と明日夏、そして二賀斗は明日夏の自宅から車で二時間ほど離れた高原にあるイチゴ園に来ていた。そのイチゴ園は、標高が一〇〇〇mの位置にあり、夏でも涼しい気候のため、この時期でもイチゴ狩りが可能だった。
二賀斗の車の後部座席のドアが開くと、明日夏が降りて外に出る。
「葉奈ちゃーん、歩けまちゅかぁ」
明日夏は、幼い声で葉奈を車からそっと表に連れ出した。葉奈の足には手のひらよりも小さな靴が履かれていた。
「すごいね。一歳と三カ月くらいで、もう歩けるんだ」
二賀斗は、靴を履いた葉奈を見るなり改めて感心した声を出す。
「早い子だと走れるらしいわよ。行こ! ニーさん」
「あ、ああ」
明日夏は、幼い葉奈の手を優しく握り、ビニールハウスに向かう。二賀斗は、二人の後を追う。
「……睦まじいなァ」
二賀斗はそう言うと、何気なく辺りの風景に目をやった。二人が向かっているビニールハウスの遥か彼方には、碧色の山々が堂々と鎮座している。そして、見渡す限りの紺碧の空がいくつかの巨大な白い雲を従えている。瑠璃色の空が、何となく地上のすべてのものを涼しい色に染め挙げているかのように見えた。
「うっわぁー。すっごーい! ニーさん、見て見て! ホントにイチゴが生ってる! 感動ーッ!」
ビニールハウスに入るなり明日夏は興奮した表情で声を上げた。そして葉奈はと言うと、不思議そうな眼つきでイチゴを見つめている。
「ふふっ」
その光景を見て、思わず二賀斗はにやけた顔をした。
「三〇分しか居れないんだからねー。葉奈ちゃんどれにする? これがいいかなー?」
そう言って明日夏はしゃがみ込んで赤いイチゴを一つ、摘まみ取ると、軸を取って葉奈の口元に差し出した。すると、葉奈は爬虫類のように勢いよくイチゴに食らいついた。
「わっ!」
明日夏が、驚いた声を上げる。
「あっははは! なんだ! 今の、カエルみたいだったな」
それを見ていた二賀斗が大声で笑った。
「もー、葉奈ァ。ビックリしたー」
「いちぃごぉ! いちぃごー!」
葉奈は小さな手で赤いイチゴを指さすと、たどたどしく“イチゴ”という言葉を連呼した。
「はいはーい。今取りますからねー」
明日夏は、気を取り直して再びイチゴをつまみ取り、葉奈に差し出した。葉奈は、小さな口を大きく開けてそれをおいしそうに頬張った。
「おいちーですかー?」
明日夏は、嬉しそうに葉奈に話しかける。葉奈はおっきな頭をコクンと下げて頷いた。
「あらー。おいちーんですねー」
明日夏は堪らず葉奈のプルンとした頬を人差し指で優しく揺らすと、葉奈は小さな口を横いっぱいに広げて笑った。
二賀斗は、そんな二人の睦まじい姿を写真に収めながら愛しい眼差しで葉奈を見つめていた。
しばらくすると三人がビニールハウスから出てきた。
「三〇分なんてあっと言う間ね」
葉奈の手を引きながら、明日夏が言う。
「そうだね。葉奈にイチゴ渡してたら、それだけで終わっちまったよ。でも、葉奈って面白い食べ方するよな。口元に置くとヘビみたいにパクッって食ってさ。明日夏も面白がって食わせてたろ」
「えぇー。やめてよ、そんな。……まぁ、面白かったけどォ」
明日夏は、顔を綻ばせながら二賀斗を見る。
「それより明日夏は食べられた? イチゴ買っていこうか」
「平気よ。お土産用に摘み取ってたから。葉奈ちゃん、イチゴはもういいの?」
「たべるぅ」
葉奈は口を尖らせてそう言った。
「じゃあ、おうちでたべようねー」
「んー!」
葉奈の返事に、明日夏は笑顔で応えた。
「うふふ。お口尖がらせてェ、ほんとかわいい!」
二賀斗は明日夏の笑顔を横目に、少し物憂げな顔になった。
〈……明日夏だって収さえ生きていれば、もしかしたら自分の子供にこうやって愛情を注げられたんだろうに〉
「ニーさん?」
明日夏の声に二賀斗はハッとした。
「あ、ああ。ん?」
「ここから少し下ったところに道の駅っぽいところがあるから、そこでお昼にしよ」
「ああ、そうしよう。……うん」
三人は、遠くに屹立する碧い山々を背に車に向かった。
七月の高原の風は純粋すぎるほどに青く、そして何処となく甘い香りに溢れていた。
夏が行き、冬が終わり、……そして幾年かが過ぎていった。
四月。幼かった葉奈も三歳になり、元気に近くの幼稚園に通うようになっていた。
朝八時。送迎バスが明日夏の自宅前に停車する。バスの乗り入れ口が開くと、若い女性の幼稚園教諭がそこから降りてきて笑顔で葉奈に挨拶をする。
「葉奈ちゃん、おはようございます」
容子のそばに立つ葉奈は、小さな口を広げて大きな声で挨拶をする。
「おはようごじゃいます!」
「よろしくお願いします。葉奈ちゃん、いってらっしゃい」
容子は、先生に挨拶すると、葉奈に軽く手を振った。葉奈は、反射的に小さな手を容子に向けて振りながらバスに乗り込んだ。
バスの乗り入れ口が静かに閉じられると、バスはゆっくり動きだした。
幼稚園での園児の過ごし方は、午前中、園内で元気に遊び回ったり、お絵かきや散歩をし、お昼を食べた後、また遊びや絵本、紙芝居などの読み聞かせを聞いた後、午後二時ごろに送迎のバスが帰路に向かうという流れになっていた。
五月。葉奈と明日夏、そして二賀斗は幼稚園の遠足で動物園に出掛けた。
園内では、多くの幼稚園児が、はしゃぎながら縦横無尽に走り回っている。
葉奈は小さな柵で覆われているウサギ小屋の中のウサギに向かって、懸命にエサを投げ入れていた。
「このウサギがみんなたべちゃう」
葉奈は、お目当てのウサギにエサをあげようと、必死にそのウサギに向かって投げ入れる。
「葉奈ァ、そんな強く投げたらウサギさんびっくりして逃げちゃうよー」
明日夏は、ムキになって投げつける葉奈を優しく諫める。二賀斗は、二人の後ろからその様子をスマホで撮影しながらほくそ笑んでいた。
突然、一匹のウサギが突進してそのまま柵にぶつかった来た。ドンッ、という音とともに柵が揺れ、ウサギはひっくり返った。
「わあぁ!」
葉奈は、びっくりした顔をすると、一目散に走って二賀斗の足にしがみついた。
「あっははは!」
「あはははは」
明日夏と二賀斗は、声を出して笑った。
「あー、こわかった」
葉奈は二賀斗のジーンズを掴みながら一言、漏らす。
「怖かったの? そうだよねー、すごい突進だったよね。あははッ」
明日夏は、笑い涙を指で拭いながら葉奈に話しかけた。
その後も葉奈は、ヤギにエサをあげたり、友だちと遊具で遊んだりしてその日一日を楽しく過ごした。
帰りのバスの中、葉奈も、その隣に座っている仲良しの園児も、今は目を閉じて静かに夢の中にいる。ほかの園児や保護者も、車の心地良い揺れに抗えず眠りについていた。
二賀斗は明日夏と隣り合わせの席で、窓から見える風景をぼんやりと見つめていた。
「ご苦労さまね、ニーさん」
二賀斗は、その言葉に明日夏の方を向いた。
「ん? ああ、なんでェ。ご苦労なのは明日夏の方だろ。平日なのに休んで、仕事大丈夫なのか?」
「うん、それは平気よ。……楽しかったね、今日」
明日夏は微笑みながら答えた。
「そうだね。……でも、行事ごとに明日夏に出てもらってちゃ、申し訳ないなァ」
二賀斗はバスの天井を見つめた。
「……どれも二回と経験できるものじゃないでしょ。楽しいじゃない。それに、何でもニーさんに任せて出来るものじゃないからね。付き合ってくれるだけでもうれしいわ」
明日夏は優しい口調で二賀斗に返答する。
「俺でよければいつだって付き合うからさ、呼んでくれよ」
「うん、ありがと」
風薫る季節。鮮やかな緑が車窓から現れては消え、現れては消える。
いつしか二人の話し声も聞こえなくなり、車内には寝息の音だけが漂っていた。
八月のある土曜日。夕方過ぎから、葉奈の通う幼稚園で夏祭りが開かれる。
定刻前から園児やその保護者が続々と園に集まって来た。明日夏の家族と二賀斗も、近くの臨時駐車場に車を停めて園に向かう。
「はやくぅー。いくよー」
葉奈は、明日夏の手を引っ張って忙しく園庭に向かう。
「はい、こんばんは。園児と保護者のお名前を記入してください」
園庭の入り口にいる受付役員に促されると、明日夏は記帳台に置いてある用紙に名前を記入した。
「じゃあ、これをどうぞ。葉奈ちゃん、またね」
受付係の父母会役員から、数枚の券を渡された。かき氷券と輪投げ券と書かれている。
少し遅れて、後ろから二賀斗と明日夏の父母がやってきた。
「走るのはやくなったねえ、葉奈ちゃん」
腰を落として二賀斗が葉奈に話しかけた。葉奈は満面の笑みを浮かべて二賀斗の声に応える。
「葉奈、かき氷がもらえるよ。いってみよっか」
「うん!」
葉奈と明日夏は、競うようにその場所へ駆け出した。
「……仲、いいですね」
二人の後ろ姿を見つめながら二賀斗は鐡哉に話しかける。
「ああ。葉奈も明日夏にはべったりだ。アイツ、仕事で疲れて帰ってきても、嫌な顔せず葉奈に本を読んであげたりしてるんだわ」
「明日夏が休みの日なんか、ほとんど一日中、葉奈に付き合ってるのよ。朝起きるとまず、“おねえちゃんは?”だもの」
容子は微笑んで二賀斗に話す。
「……そう、ですか」
二賀斗は、すでに多くの園児や保護者で黒山の賑わいとなってしまった園庭の、たぶん二人が進んでいった先をジッと見つめた。
「ちょっと行ってきます」
二賀斗は父母に一言いうと、二人の後を追い始めた。
〈……うーんと、どこ行ったんだ?〉
人だかりを掻き分け、辺りを見回すと、かき氷の列に並んでいる二人が見えた。
明日夏が、こちらに向かってくる二賀斗に気が付く。
「あら、ニーさんも食べる?」
「あ、ああ」
二賀斗は、腰を低くして屈むと葉奈に向かって話しかけた。
「葉奈ちゃん、今日はおじさんと一緒に回ろうよ」
明日夏がキョトンとした顔で二賀斗を見る。
「いくー。にぃちゃんとおねぇちゃんといっしょにいくぅー」
葉奈は笑顔で答えた。
「……どうしたの? ニーさん」
二賀斗は立ち上がると、済まなそうな顔で明日夏を見る。
「……ん。四六時中一緒にいたんじゃ疲れちゃうだろ。今日くらいは俺が見ようかな、と」
明日夏は口元を上げると、一呼吸した。
「ふふ、お気遣い感謝しますわ。じゃあ、一緒に回ろ」
「まわるー」
葉奈は、明日夏と二賀斗の手を掴んだ。
「葉奈が私に懐いてるのが寂しい?」
明日夏が微笑む。
「いやいや、ほんとに疲れてんじゃないかって」
二賀斗は、葉奈に掴まれた手を軽く揺らしながら答えた。
「……まあね。疲れるけど、一生幼いまんまじゃないでしょ。すぐに手なんか離れちゃうわよ。そのときに何の思い出もないほうが、私は嫌だな」
明日夏も握られた手を優しく振る。
「はいー、なに味にしますかー」
かき氷係の役員のお父さんが葉奈に話しかけた。
「葉奈、なに味がいいの?」
「いちごぉー」
葉奈は、赤いシロップを指さして大きな声で言う。
「はいはーい」
そう言うと、役員のお父さんは赤いシロップを純白の雪山に流しかけた。
「はい、どうぞー」
真っ赤なかき氷が葉奈の小さな手に握られた。
「ありがとうございます」
明日夏が一礼をする。
「座って食べよ。……あそこの向日葵のところにしよっか」
人込みをすり抜け、三人は綺麗に咲いている向日葵のそばに来た。葉奈は花壇のレンガに座り、かき氷を食べ始める。無性に氷を口に運ぶ様を二人は腰を落として見つめる。
「この無性に食べる姿ってさ、すごい愛しく感じるのよねェ。動物ってさ、大人になってもこういう顔って見れるけど、人間って、子どもの時しかこういう顔って見れないじゃない。……ほんと、無性に食べてる。ふふっ」
明日夏は、まじまじと葉奈の食べる顔を見つめる。
〈……まぁ、確かにな。いとおしくは見えるよ。でも、明日夏も結構見方って言うか、言い方が独特っていうか、なんか変わってるよなぁ〉
二賀斗は、明日夏を見ながらひっそりと笑った。
程よく日も暮れた頃、屋外の照明がつき、園庭を照らし出した。幼稚園の職員が、園庭を囲むようにロープを張り始める。
「園児の皆さんはこちらに集まってください。これから園児の出し物がありますので保護者の方々はロープの外でお待ちください」
職員のアナウンスが流れた。
「ニーさん待っててね。葉奈のこと預けてくるから」
明日夏はそう言うと、葉奈と一緒に走って行った。
「おう、ヒロ。やっと見つかったよ」
鐡哉が手を上げて二賀斗に声をかけた。
「園長先生に声かけられちゃって、……すごい人だかりだな」
「これから何か、園児の出し物があるらしいですよ」
「おお、そうか」
明日夏が小走りで二賀斗の元に戻ってきた。
「あら、全員お揃いね」
「何やるのかしら」
容子が笑顔で話しかける。
そのうち、園児がぞろぞろと園庭に入ってきた。幼稚園の先生が、園児を園庭の中央に川の字に整列させる。そして、整列した園児の先に丸々とした大きなスイカが置かれた。
「ほおー、スイカ割りかぁ」
鐡哉が笑顔で声を出す。
棒を持たされた園児に先生が手ぬぐいで目隠しをする。そして、数回身体を回された後、園児はふらつきながら棒を構えて歩を進める。
「やったー」
見事にスイカに当てる子、あさっての方向に歩き出す子、地面を叩く子。その度に周りから歓喜の声が波打つ。
「ほらっ! 葉奈よ! 次!」
明日夏が指を差す。
目隠しをされた葉奈が、おぼつかない足取りで歩み出す。
「葉奈ア! 真っ直ぐだ!」
鐡哉は両手を口元に当てて、声高に叫ぶ。
葉奈が水平に持っている棒の先端がスイカに触れた。
「ほら! 葉奈! そこだア!」
鐡哉が大声で葉奈に教える。
葉奈は立ち止まって棒を振り下ろした。棒はスイカをかすめて地面を小さく叩く。
「ああー!」
鐡哉は一人、興奮した様子で落胆の声を出した。
「あはははっ。お父さん、ちょっと興奮しすぎよ!」
明日夏が笑いながら父に話しかけた。
「ああ、そうか? そんなに興奮してたか?」
「おほほほ。お父さんすごい声だったわよ」
容子は声を出して笑った。
それから、法被をきた園児が小さな山車を引き、園庭を練り歩いた。明日夏も二賀斗も葉奈の練り歩く画像を何枚もカメラに収めた。
山車の練り歩きが終わると、園児は保護者の元に戻され、最後に役員が用意した市販の花火が十数個園内中央に置かれ、色とりどりの綺麗な火花を暗闇で咲かせて夏祭りは幕を閉じた。
駐車場までの帰り道、明日夏は二賀斗に背負われている葉奈に向かって尋ねた。
「今日は一番、何が楽しかったー?」
「かきごおりぃ!」
「あっははは! そうかそうか!」
鐡哉の笑い声がはじける。
「おいしかったもんね」
二賀斗が葉奈に話しかける。
「うん!」
夜空には、白く輝く満月が星々を従えて地上の二賀斗達を照らしていた。
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