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今年もあと二日で幕を閉じる。二賀斗は今、Y県Y市の駅前にいる。多くの人が行き交い、車もひっきりなしに走り回っている。
「おぉ、寒ぅー」
それは駅の構内を出て、外に一歩足を踏み出した二賀斗の第一声。
見渡す限りの銀世界。空に張り付く真っ白な雪雲からは静かに雪が舞い降りている。ただ、交通量が多いせいか、駅周辺にはそれほど雪は積もっていない。道行く人は傘を差しながら、いそいそと歩いている。
「久しぶりに来たなー。……何年ぶりだろう」
二賀斗は周りを見渡しながら、以前来た時のことを思い出していた。
Y市には収の実家がある。二賀斗は、誰に連絡することもなくここにやって来た。もちろん明日夏にもここに来ることは伝えていない。それどころか、収の実家にも訪問するという連絡はしていなかった。もし今日、実家に誰もいなかったらその時はそのまま帰るつもりでいる。
……実際、二賀斗はこの地に足を踏み入れるつもりはなかった。ここに来るということは、すなわち収の遺影を見るということになるのだから。
たとえ“逃げている”と非難されても、現実を直視しなければ二賀斗自身、今も収は生きていると思うことができた。それゆえ二賀斗は、今まで頑なにこの地を訪れようとしなかった。……だが、数週間前に磐木に会って、彼の話を聞くうちに心変わりをしたのだろう。……どう表現すればいいのか、二賀斗自身それをうまく言い表すことができないのだが、収との思い出をよりあざやかにするためには少しでも今の状況を受け止めよう、と思ったのだ。だから二賀斗はこれから現実を受け止めるために収の実家に向かう。
駅の正面にある時計塔は午後一時を指し示している。二賀斗はタクシー乗り場まで歩き、そこで一台のタクシーを拾った。
「……どちらまで」
タクシーの運転手は、不愛想な声で行き先を尋ねた。
「アグリ物産館まで」
行き先を聞くと運転手は無言のまま、タクシーを発進させた。
収の実家の近くには大きな農村物産館がある。駅から離れるほどに周囲の雪の積もり具合も大きくなっている。サイドガラスに映る風景を見ながら無言の車内で二〇分ほど揺られると、タクシーは物産館の駐車場で止まった。
「四,七八〇円です」
運転手は正面を向いたまま、料金を告げた。二賀斗は財布からお金を出すと運転手に手渡し、タクシーから降りた。
物産館の駐車場は、辺り一面が白い大地となっている。舞い散る雪を被りながら、二賀斗はそこから収の実家の方に向かって歩き出した。
二賀斗は以前、二、三回ほど収の実家に行ったことがあった。
〈……たしか、物産館から歩いても十分かからなかったはず〉
耳障りのよい音を立てながら雪を踏みしめて歩く。……頭の上に白い帽子が形づくられる前に、二賀斗は収の実家に到着することができた。
「ん? ……誰か、いるな」
収の実家の前で、ほうきで雪を掃いている人の姿が見える。
そのまま近づいていくと、ニットの帽子をかぶったその人が二賀斗に気付いた。掃く手を止めて二賀斗の方をジッと見ている。
「……あら? ……ひろ君?」
「……おばさん」
収の母親だった。
「あらー! ひろ君! 久しぶりぃ!」
収の母親は、持っていたほうきをその辺に置くと、二賀斗の方に近寄ってくる。
「あらあら、久しぶりだわー。元気にしていた? ん?」
「……あ、はい」
二賀斗は母親の問いかけに対し、ほんの少し口角を上げて答えた。
「あらぁ、こんなところじゃ寒いわね。どうぞどうぞ、汚いけど入って」
母親はいそいそと玄関まで小走りで駆けて行った。二賀斗は、それとは正反対にゆっくりと母親の後を追った。
通された居間には、コタツの他にストーブが置かれていた。ストーブに乗っているヤカンからは、音を立てながら湯気が途切れることなく立ち上がっている。そして部屋の角には一番見たくないものが置かれている。
二賀斗はコタツに足を入れた。そして窓の方に目をやったが、少し曇っていて外の様子が見えずらくなっている。どうせ見えるのは雪だけだ、と思い、視線を下に向ける。
ほどなく、ガラス戸が開いて母親が居間に入ってきた。
「ほんとに久しぶりだわ。いつ以来かしらね。今日はお父さん、出掛けているのよ」
母親は、持ってきた茶碗とお茶菓子をコタツのテーブルに置くと、二賀斗の正面に腰を落とした。
「……ごめんなさいね、ひろ君に連絡できなくて」
「……いえ、自分こそ連絡もしないで来ちゃって。……線香、あげさせて下さい」
「ええ、ありがとうございます」
収の母親は一礼した。
二賀斗は居間の角にあった一番見たくないものの前に座った。親友の遺影が飾られている。……いい顔で笑っている。
正座をして収の遺影をじっと見る。
〈……伊槻収。大学のときの友人。何がきっかけで仲良くなったのか、もう忘れてしまった。学部も違うのに、何で仲良くなったんだか。……でも本当によくつるんでた。コイツとは笑ってばかりいた。俺の生きていた中で一番の友人。……失いたくなかった、俺の……親友〉
……滴が一つ、正座したひざの上に涙が落ちた。二賀斗の頬を伝って。
母親はその姿を見ると、横を向いてティッシュで目を覆った。
線香の煙がゆっくりと天井に向かってのびてゆく。遺影の周りにはきれいな花が飾られている。
「あの花はね、明日夏ちゃんが送ってくれた花なの。月命日にいつも送ってくれて。……ほんと、かえって心苦しいわ。……明日夏ちゃんには、幸せになってほしい」
母親は、申し訳なさそうな顔で話した。
その後、二賀斗は小一時間ほど収の母親と会話を交わした。
玄関のドアを開くと、外は相変わらず雪が舞い降りている。
「……突然お邪魔して、ご迷惑かけました」
「いいえ、また来てね」
二賀斗は一礼すると、雪の道を歩き出した。収の母親は、二賀斗の姿が見えなくなるまで通りに出て見送っていた。
……一番の友人は、確かにこの世からいなくなった。遺影の笑顔を思い出す。
〈……またな、収〉
二賀斗は、大晦日から正月三が日を母親が一人で住んでいる実家で過ごした。毎年この時期は実家に帰省しているが、今回はしんみりとした年越し、年明けになった。元旦は近くの神社に母と初詣に行き、後はコタツの中でダラダラと過ごした。二賀斗はすぐそばでテレビを見ている母親を眺めながら、死んでしまってからその有難味がわかるのかもしれない、などと思っていた。
「チュンチュン、チュン……」
正月三が日が開け、二賀斗は自宅アパートに戻って本業の仕事に取り掛かっていたが、どうも以前の様に仕事がはかどらないことに気がついた。磐木に会って以降、あの女の人のことがチラチラと頭をよぎってしまっている。彼女の居場所を突き止めたいという、いわば調査欲求が麻薬のように二賀斗の身体を蝕んでいた。……しかし、今の時点では彼女にたどり着くための有効な手掛かりを何も持ち合わせていない。
二賀斗は仕事の手を休めると、作業机の椅子に深く座り、ぼんやりと右手でペンを回し始めた。
「……」
二賀斗は黙ったまま人差し指の背で勢いよく回るペンを眺めていたが、ふいにペンが指から離れ、そのまま机に転げ落ちる。
コロコロと机の上で転がり続けるペンをよそに、二賀斗は天井を見上げる。
〈……やっぱり、手掛かりはあの旅館があったあの街にしかないんじゃないのかなぁ〉
二賀斗は胸の中である決意をすると、机に転がったペンを握り、気持ちを切り替えて仕事に取り組み始めた。
「おぉ、寒ぅー」
それは駅の構内を出て、外に一歩足を踏み出した二賀斗の第一声。
見渡す限りの銀世界。空に張り付く真っ白な雪雲からは静かに雪が舞い降りている。ただ、交通量が多いせいか、駅周辺にはそれほど雪は積もっていない。道行く人は傘を差しながら、いそいそと歩いている。
「久しぶりに来たなー。……何年ぶりだろう」
二賀斗は周りを見渡しながら、以前来た時のことを思い出していた。
Y市には収の実家がある。二賀斗は、誰に連絡することもなくここにやって来た。もちろん明日夏にもここに来ることは伝えていない。それどころか、収の実家にも訪問するという連絡はしていなかった。もし今日、実家に誰もいなかったらその時はそのまま帰るつもりでいる。
……実際、二賀斗はこの地に足を踏み入れるつもりはなかった。ここに来るということは、すなわち収の遺影を見るということになるのだから。
たとえ“逃げている”と非難されても、現実を直視しなければ二賀斗自身、今も収は生きていると思うことができた。それゆえ二賀斗は、今まで頑なにこの地を訪れようとしなかった。……だが、数週間前に磐木に会って、彼の話を聞くうちに心変わりをしたのだろう。……どう表現すればいいのか、二賀斗自身それをうまく言い表すことができないのだが、収との思い出をよりあざやかにするためには少しでも今の状況を受け止めよう、と思ったのだ。だから二賀斗はこれから現実を受け止めるために収の実家に向かう。
駅の正面にある時計塔は午後一時を指し示している。二賀斗はタクシー乗り場まで歩き、そこで一台のタクシーを拾った。
「……どちらまで」
タクシーの運転手は、不愛想な声で行き先を尋ねた。
「アグリ物産館まで」
行き先を聞くと運転手は無言のまま、タクシーを発進させた。
収の実家の近くには大きな農村物産館がある。駅から離れるほどに周囲の雪の積もり具合も大きくなっている。サイドガラスに映る風景を見ながら無言の車内で二〇分ほど揺られると、タクシーは物産館の駐車場で止まった。
「四,七八〇円です」
運転手は正面を向いたまま、料金を告げた。二賀斗は財布からお金を出すと運転手に手渡し、タクシーから降りた。
物産館の駐車場は、辺り一面が白い大地となっている。舞い散る雪を被りながら、二賀斗はそこから収の実家の方に向かって歩き出した。
二賀斗は以前、二、三回ほど収の実家に行ったことがあった。
〈……たしか、物産館から歩いても十分かからなかったはず〉
耳障りのよい音を立てながら雪を踏みしめて歩く。……頭の上に白い帽子が形づくられる前に、二賀斗は収の実家に到着することができた。
「ん? ……誰か、いるな」
収の実家の前で、ほうきで雪を掃いている人の姿が見える。
そのまま近づいていくと、ニットの帽子をかぶったその人が二賀斗に気付いた。掃く手を止めて二賀斗の方をジッと見ている。
「……あら? ……ひろ君?」
「……おばさん」
収の母親だった。
「あらー! ひろ君! 久しぶりぃ!」
収の母親は、持っていたほうきをその辺に置くと、二賀斗の方に近寄ってくる。
「あらあら、久しぶりだわー。元気にしていた? ん?」
「……あ、はい」
二賀斗は母親の問いかけに対し、ほんの少し口角を上げて答えた。
「あらぁ、こんなところじゃ寒いわね。どうぞどうぞ、汚いけど入って」
母親はいそいそと玄関まで小走りで駆けて行った。二賀斗は、それとは正反対にゆっくりと母親の後を追った。
通された居間には、コタツの他にストーブが置かれていた。ストーブに乗っているヤカンからは、音を立てながら湯気が途切れることなく立ち上がっている。そして部屋の角には一番見たくないものが置かれている。
二賀斗はコタツに足を入れた。そして窓の方に目をやったが、少し曇っていて外の様子が見えずらくなっている。どうせ見えるのは雪だけだ、と思い、視線を下に向ける。
ほどなく、ガラス戸が開いて母親が居間に入ってきた。
「ほんとに久しぶりだわ。いつ以来かしらね。今日はお父さん、出掛けているのよ」
母親は、持ってきた茶碗とお茶菓子をコタツのテーブルに置くと、二賀斗の正面に腰を落とした。
「……ごめんなさいね、ひろ君に連絡できなくて」
「……いえ、自分こそ連絡もしないで来ちゃって。……線香、あげさせて下さい」
「ええ、ありがとうございます」
収の母親は一礼した。
二賀斗は居間の角にあった一番見たくないものの前に座った。親友の遺影が飾られている。……いい顔で笑っている。
正座をして収の遺影をじっと見る。
〈……伊槻収。大学のときの友人。何がきっかけで仲良くなったのか、もう忘れてしまった。学部も違うのに、何で仲良くなったんだか。……でも本当によくつるんでた。コイツとは笑ってばかりいた。俺の生きていた中で一番の友人。……失いたくなかった、俺の……親友〉
……滴が一つ、正座したひざの上に涙が落ちた。二賀斗の頬を伝って。
母親はその姿を見ると、横を向いてティッシュで目を覆った。
線香の煙がゆっくりと天井に向かってのびてゆく。遺影の周りにはきれいな花が飾られている。
「あの花はね、明日夏ちゃんが送ってくれた花なの。月命日にいつも送ってくれて。……ほんと、かえって心苦しいわ。……明日夏ちゃんには、幸せになってほしい」
母親は、申し訳なさそうな顔で話した。
その後、二賀斗は小一時間ほど収の母親と会話を交わした。
玄関のドアを開くと、外は相変わらず雪が舞い降りている。
「……突然お邪魔して、ご迷惑かけました」
「いいえ、また来てね」
二賀斗は一礼すると、雪の道を歩き出した。収の母親は、二賀斗の姿が見えなくなるまで通りに出て見送っていた。
……一番の友人は、確かにこの世からいなくなった。遺影の笑顔を思い出す。
〈……またな、収〉
二賀斗は、大晦日から正月三が日を母親が一人で住んでいる実家で過ごした。毎年この時期は実家に帰省しているが、今回はしんみりとした年越し、年明けになった。元旦は近くの神社に母と初詣に行き、後はコタツの中でダラダラと過ごした。二賀斗はすぐそばでテレビを見ている母親を眺めながら、死んでしまってからその有難味がわかるのかもしれない、などと思っていた。
「チュンチュン、チュン……」
正月三が日が開け、二賀斗は自宅アパートに戻って本業の仕事に取り掛かっていたが、どうも以前の様に仕事がはかどらないことに気がついた。磐木に会って以降、あの女の人のことがチラチラと頭をよぎってしまっている。彼女の居場所を突き止めたいという、いわば調査欲求が麻薬のように二賀斗の身体を蝕んでいた。……しかし、今の時点では彼女にたどり着くための有効な手掛かりを何も持ち合わせていない。
二賀斗は仕事の手を休めると、作業机の椅子に深く座り、ぼんやりと右手でペンを回し始めた。
「……」
二賀斗は黙ったまま人差し指の背で勢いよく回るペンを眺めていたが、ふいにペンが指から離れ、そのまま机に転げ落ちる。
コロコロと机の上で転がり続けるペンをよそに、二賀斗は天井を見上げる。
〈……やっぱり、手掛かりはあの旅館があったあの街にしかないんじゃないのかなぁ〉
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