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48 アルバートサイド
しおりを挟む★アルバートサイド
「父上!お願いがあるのです!」
オーランドがわざと朗々とした声でアルバートの執務室に入る。アルバートは一瞬驚いたものの、その雰囲気に直ぐにオーランドが冷静になった事に気づく。
「アリーヤが大変な時にか?」
アルバートは敢えてオーランドに合わせて話す。
「ええ。だからこそです!悪夢に魘され、精神的な負担から声を失いただ只管耐える……私はそんなアリーヤを見ていると心が張り裂けそうです。いつもはあんなに私に憎まれ口を叩いていると言うのに……」
そう言っては舞台俳優のように胸を掴み顔を伏せる。
「ですから!アリーヤに何か気分が変わる物を贈りたいと思いまして街へ買い物に行きたいのです」
そう言ってオーランドが一枚の封筒をアルバートに渡す。アルバートが中身を見ると、そこにはズラリと女性の好きそうな物が書かれている。
「何がいいか書き出していたらアレもコレもと浮かんでしまって……なのでここは悔しいですが、アリーヤを一番知っているだろうミリーをお借りしたいのです。ああ、いえ、決して『麗しい女性と二人きりで買い物がしたい』などという下心は少しもありません。ええ、ええ。ありませんとも!純粋にアリーヤを心配しているだけです」
オーランドの言葉にもう一度アルバートは便箋に視線を落とし、少し呆れたようにため息をついたあと
「確かに。ミリーもアリーヤに付きっきりで大変だろう。気分を変えるのに街に連れ出してやるのも良いかもしれん。ただし、お前の為じゃない!アリーヤとミリーの為だ!」
「勿論、分かっておりますとも。麗しい女性と二人きりでの買い物、これは私にとっては『嬉しい誤算』なだけです」
絶対に計算だろうと見える笑顔でオーランドは嬉しそうに微笑む。それにまたため息をついてはアルバートはミリーを呼ぶように使用人に伝える。暫くするとミリーは少しだけ不本意そうな顔でアルバートとオーランドを見つめる。
アルバートは事の経緯を話し、
「アリーヤの為にも頼む。それに、ミリーも少し外の空気を吸ってきなさい 」
有無を言わさぬ笑顔で自分が笑えば、流石に当主の言葉には従うしか無いと「お心遣い感謝します」とミリーは頷く。
「すまない、ミリー。君が眠り姫のアリーヤのそばに居たいのは分かっている。だが、今のアリーヤに私が出来る事は君より遥かに少ない。だから、少しでも私を哀れだと思うなら、君の力を貸してはくれないだろうか。その代わり美の化身の私が『忘れられない刺激的な一日』を約束しよう!」
オーランドはいつものように、ナルシストで女好きで気障ったらしいセリフを言っては美しい顔で微笑む。その顔は父親の自分ですら見惚れてしまう。
「……はぁ。お前達、さっさと行きなさい」
アルバートがそう言うと「では!」とオーランドが手を高くあげ執務室を出、ミリーも急いで頭を下げオーランドに続く。
アルバートは先程の便箋をもう一度開く。女性の好きそうな物が左詰めで書かれたそれは、所々、名詞が変な所で途切れ、変な所で始まっている。
そうして左の1文字を縦に読んでいけば、
『あくむはミリー』
……ある訳がない。だが「あの」オーランドがそう言うのだ。もし、それが事実ならアリーヤはきっと心を閉ざすだろう。そうなった時、彼女はもう一生話さないかもしれない。
「どうか、それだけは……」
国のためにも……アルバートは切に願った。
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