この兄、厄介につき~実は溺愛されてたなんて聞いてません!~(不定期更新)

ナナシの助

文字の大きさ
88 / 90

87 オーランドサイド

しおりを挟む

★オーランドサイド
 
あの阿婆擦れのせいで折角の雰囲気がダメになった。別にアリーヤと、どうなりたいとかは無い。ただ、ほんの少しくらい自分にも褒美が欲しかった、と言うのは建前で。まぁ、要はデートに誘えるなら誘ってみたかった。 

向こうはデートとは思っていないだろう。勿論そう思われると自分がどうしていいか分からないのでそれで良いのだが。優しいアリーヤが断らない事は初めから分かっていた。分かっていた上で誘う自分は

(悪い男だろうか)   

オーランドはアリーヤを家に送ると、王宮へとまた馬車を向かわせる。

(童貞王太子に阿婆擦れ……2人とも宝石が増えていた) 

緑とピンクは勿論他にも幾つか宝石を着けていたが、どれがあの石なのだろう。緑だけなら判別しやすかったのに、ピンクが出てきた事で他の色の石もある可能性が出できてしまった。となれば、王宮にどれだけの人間がそれをつけているのか。

(それを知る為にも阿婆擦れと茶会をする訳だが……)
 
はぁ、とオーランドは静かなため息を漏らしては車窓から外を眺める。その姿はまるで1枚の絵画のようで、もしここにアリーヤがいたのならその頬を染めていただろう。

伯爵の目的は未だ不明だ。あの石で何をするつもりなのか。王宮を支配したいのならアリーヤを狙う必要は無い。阿婆擦れ(むすめ)を王太子妃にしたいのなら、今の王太子なら唆せば一瞬で破棄するだろう。   

アリーヤが邪魔ならば王宮を狙う意味が分からない。横領をしたいがアリーヤの真面目すぎる仕事ぶりのせいで邪魔をしたいのか。そんな下らない事に犯罪者とはいえ何人もの命を使った石を作るだろうか。

(流石にそれは見返りが少なすぎる――)

人格者としての地位を守ってきたのに横領の為だけに人殺しをしていたら、結局絞首台行きで財産は全て奪われる。伯爵はそこまで馬鹿では無いと信じたい。娘の馬鹿さには呆れてものも言えない。    

いつからアリーヤを「さん付け」で呼べる立場になったのか。王太子から寵愛を受けようと所詮は元孤児の伯爵令嬢。生まれた時から公爵令嬢とは立場が違う。いや、あの阿婆擦れが元からの公爵令嬢だとしてもアリーヤとでは雲泥の差だ。  

それでは比べられるアリーヤにも喩えられる泥にも謝っても謝り切れないが。やはり、あの阿婆擦れをドーソン伯爵本当に『人格者』なら連れてはこない。

(そう言えば、アリーヤは阿婆擦れを見て急に体調を崩したが、何があった?)

自分も阿婆擦れを見ると吐き気をするから気持ちは分かるが、アリーヤのあれは違う。何かを恐怖していた。自分の知らない所で心無い事を言われていたのか?

あの阿婆擦れなら有り得ない話ではないが、少なくとも自分が初めて執務室を訪れた日、アリーヤは冷めた目で窓から眺めているだけで何の感情もなかった。自分が執務を手伝うようになってからも阿婆擦れとアリーヤが2人で話す機会など殆どない。

(では夢の中で――?)

1番考えられるのはそれだ。自分が夢に入った時にはアリーヤは既に1人暗いところにいた。勿論、アリーヤに辛い思いなど少しもさせたくなくて、悪夢の内容も聞いてはいない。

正直を言えば知りたいのが本音だ。それが何かの手がかりになるかも知れない。だが聞けない。仮にあの阿婆擦れが身の程を弁えずアリーヤの夢に出てきたとしよう、だとして何がアリーヤをあそこまでさせる?

阿婆擦れが出てきた時点でトラウマになってもおかしくないが、そんな風には見えなかった。もっと恐ろしい何かだ。ふと

『触らないで!』

と悪夢から冷めたアリーヤの自分への声が過ぎる。その前にもアリーヤは悪夢から起きた時、無意識に自分へと震えるように涙を流しながら手を伸ばした事を思い出す。
 
(俺も、いたのか?) 

悪夢なのだ、勿論自分もアリーヤを傷つけたのだろう。夢とはいえ、自分がアリーヤを傷つけた事が許せない。

(俺もアリーヤの死に加担していた……?)

勿論夢だ。どうにか出来る訳ではない。けれどオーランドはその考えに至った時ゾッとした。せめてもっと魔法を早く使っていたら。無自覚に死に追いやっていたのはミリーだけじゃない。自分もだ。   

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。

真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。 親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。 そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。 (しかも私にだけ!!) 社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。 最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。 (((こんな仕打ち、あんまりよーー!!))) 旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

お妃候補に興味はないのですが…なぜか辞退する事が出来ません

Karamimi
恋愛
13歳の侯爵令嬢、ヴィクトリアは体が弱く、空気の綺麗な領地で静かに暮らしていた…というのは表向きの顔。実は彼女、領地の自由な生活がすっかり気に入り、両親を騙してずっと体の弱いふりをしていたのだ。 乗馬や剣の腕は一流、体も鍛えている為今では風邪一つひかない。その上非常に頭の回転が速くずる賢いヴィクトリア。 そんな彼女の元に、両親がお妃候補内定の話を持ってきたのだ。聞けば今年13歳になられたディーノ王太子殿下のお妃候補者として、ヴィクトリアが選ばれたとの事。どのお妃候補者が最も殿下の妃にふさわしいかを見極めるため、半年間王宮で生活をしなければいけないことが告げられた。 最初は抵抗していたヴィクトリアだったが、来年入学予定の面倒な貴族学院に通わなくてもいいという条件で、お妃候補者の話を受け入れたのだった。 “既にお妃には公爵令嬢のマーリン様が決まっているし、王宮では好き勝手しよう” そう決め、軽い気持ちで王宮へと向かったのだが、なぜかディーノ殿下に気に入られてしまい… 何でもありのご都合主義の、ラブコメディです。 よろしくお願いいたします。

【完結済】侯爵令息様のお飾り妻

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 没落の一途をたどるアップルヤード伯爵家の娘メリナは、とある理由から美しい侯爵令息のザイール・コネリーに“お飾りの妻になって欲しい”と持ちかけられる。期間限定のその白い結婚は互いの都合のための秘密の契約結婚だったが、メリナは過去に優しくしてくれたことのあるザイールに、ひそかにずっと想いを寄せていて─────

1度だけだ。これ以上、閨をともにするつもりは無いと旦那さまに告げられました。

尾道小町
恋愛
登場人物紹介 ヴィヴィアン・ジュード伯爵令嬢  17歳、長女で爵位はシェーンより低が、ジュード伯爵家には莫大な資産があった。 ドン・ジュード伯爵令息15歳姉であるヴィヴィアンが大好きだ。 シェーン・ロングベルク公爵 25歳 結婚しろと回りは五月蝿いので大富豪、伯爵令嬢と結婚した。 ユリシリーズ・グレープ補佐官23歳 優秀でシェーンに、こき使われている。 コクロイ・ルビーブル伯爵令息18歳 ヴィヴィアンの幼馴染み。 アンジェイ・ドルバン伯爵令息18歳 シェーンの元婚約者。 ルーク・ダルシュール侯爵25歳 嫁の父親が行方不明でシェーン公爵に相談する。 ミランダ・ダルシュール侯爵夫人20歳、父親が行方不明。 ダン・ドリンク侯爵37歳行方不明。 この国のデビット王太子殿下23歳、婚約者ジュリアン・スチール公爵令嬢が居るのにヴィヴィアンの従妹に興味があるようだ。 ジュリエット・スチール公爵令嬢18歳 ロミオ王太子殿下の婚約者。 ヴィヴィアンの従兄弟ヨシアン・スプラット伯爵令息19歳 私と旦那様は婚約前1度お会いしただけで、結婚式は私と旦那様と出席者は無しで式は10分程で終わり今は2人の寝室?のベッドに座っております、旦那様が仰いました。 一度だけだ其れ以上閨を共にするつもりは無いと旦那様に宣言されました。 正直まだ愛情とか、ありませんが旦那様である、この方の言い分は最低ですよね?

【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない

ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。 公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。 旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。 そんな私は旦那様に感謝しています。 無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。 そんな二人の日常を書いてみました。 お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m 無事完結しました!

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

処理中です...