8 / 13
7話
しおりを挟む
佐藤は、興味があることには没頭するタイプだった。
好きなものは読書と勉強。
特に数学が大好きで、暇さえあれば数学の問題集を引っ張り出して読んでいるような、あまり瞬一には理解できない趣味を持っていた。
何度も行った佐藤の家。
きっちりと片付けられた玄関やリビングとは正反対に、彼の部屋はとても汚かった。
いや、汚いというと少し違うかもしれない。
瞬一には理解のできないルールで整理された多種多様な紙の本が、部屋の中にいくつものタワーを作っていて。
その部屋の中に居座るのは少し居心地が悪かった。
知らない街にやってきたような、ちょうど引っ越してきた時を思い出すような心細さ。
部屋は、佐藤の作り上げた街。
完成された街の中に、自分の入り込む隙間はない。
いつだったか、ちょうど2人でいた時に宅配便がやってきたことがある。
親は出かけていたので遊びを中断して対応しにいった佐藤が、大きな箱を持って帰ってきた。
一緒にダンボールを開封する。
中身を傷つけないように、側面のガムテープのみをハサミで薄く傷つけて。
中に入っていたのは沢山の本だった。
子供が読むには難しすぎる数学の本。物理学の本。
その中に、知っているようで知らない単語が混じっていた。
「プログラミング……?」
新品の本に手をかける。中身をめくると、インクの匂いに頭がくらくらした。
横から手が伸びてきて、本を取られる。
「コンピュータは特別な“式”に基づいて動いているんだ。それがプログラミング」
「式?それって数学みたいな?」
「そう」
「パソコンとかも、それで動いてんの?」
「そう」
「ロボットも?」
本の表紙には人型のロボットの絵が書かれていた。
確か、アンドロイドという名前のもの。
日常に機械は溢れているけど、アンドロイドはテレビでしか見たことがない存在だった。
お金持ちの人しか手を出せない、高級品。
佐藤は本を閉じて、表紙のアンドロイドを指でなぞった。
瞬一が見たことのない、はにかむような表情。
「……うん」
本の摩天楼の頂上に、佐藤はその本を置いた。
初めて見た佐藤の嬉しそうな横顔。
削られていく、部屋の中のスペース。
佐藤のその顔を見た時、瞬一はどうしようもなく泣きたくなった。
佐藤が自分を置いて遠くに行ってしまうような、そんな絶望を感じた。
待ってよ、行かないで。
僕を捨てないで。なんて。
そもそも拾われてなんかいないのに。
縋り付きたくなる。
好きなものは読書と勉強。
特に数学が大好きで、暇さえあれば数学の問題集を引っ張り出して読んでいるような、あまり瞬一には理解できない趣味を持っていた。
何度も行った佐藤の家。
きっちりと片付けられた玄関やリビングとは正反対に、彼の部屋はとても汚かった。
いや、汚いというと少し違うかもしれない。
瞬一には理解のできないルールで整理された多種多様な紙の本が、部屋の中にいくつものタワーを作っていて。
その部屋の中に居座るのは少し居心地が悪かった。
知らない街にやってきたような、ちょうど引っ越してきた時を思い出すような心細さ。
部屋は、佐藤の作り上げた街。
完成された街の中に、自分の入り込む隙間はない。
いつだったか、ちょうど2人でいた時に宅配便がやってきたことがある。
親は出かけていたので遊びを中断して対応しにいった佐藤が、大きな箱を持って帰ってきた。
一緒にダンボールを開封する。
中身を傷つけないように、側面のガムテープのみをハサミで薄く傷つけて。
中に入っていたのは沢山の本だった。
子供が読むには難しすぎる数学の本。物理学の本。
その中に、知っているようで知らない単語が混じっていた。
「プログラミング……?」
新品の本に手をかける。中身をめくると、インクの匂いに頭がくらくらした。
横から手が伸びてきて、本を取られる。
「コンピュータは特別な“式”に基づいて動いているんだ。それがプログラミング」
「式?それって数学みたいな?」
「そう」
「パソコンとかも、それで動いてんの?」
「そう」
「ロボットも?」
本の表紙には人型のロボットの絵が書かれていた。
確か、アンドロイドという名前のもの。
日常に機械は溢れているけど、アンドロイドはテレビでしか見たことがない存在だった。
お金持ちの人しか手を出せない、高級品。
佐藤は本を閉じて、表紙のアンドロイドを指でなぞった。
瞬一が見たことのない、はにかむような表情。
「……うん」
本の摩天楼の頂上に、佐藤はその本を置いた。
初めて見た佐藤の嬉しそうな横顔。
削られていく、部屋の中のスペース。
佐藤のその顔を見た時、瞬一はどうしようもなく泣きたくなった。
佐藤が自分を置いて遠くに行ってしまうような、そんな絶望を感じた。
待ってよ、行かないで。
僕を捨てないで。なんて。
そもそも拾われてなんかいないのに。
縋り付きたくなる。
0
あなたにおすすめの小説
happy dead end
瑞原唯子
BL
「それでも俺に一生を捧げる覚悟はあるか?」
シルヴィオは幼いころに第一王子の遊び相手として抜擢され、初めて会ったときから彼の美しさに心を奪われた。そして彼もシルヴィオだけに心を開いていた。しかし中等部に上がると、彼はとある女子生徒に興味を示すようになり——。
出戻り王子が幸せになるまで
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
初恋の相手と政略結婚した主人公セフィラだが、相手には愛人ながら本命がいたことを知る。追及した結果、離縁されることになり、母国に出戻ることに。けれど、バツイチになったせいか父王に厄介払いされ、後宮から追い出されてしまう。王都の下町で暮らし始めるが、ふと訪れた先の母校で幼馴染であるフレンシスと再会。事情を話すと、突然求婚される。
一途な幼馴染×強がり出戻り王子のお話です。
※他サイトにも掲載しております。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
【8話完結】僕の大切な人はBLゲームの主人公でした。〜モブは主人公の幸せのためなら、この恋も諦められます〜
キノア9g
BL
転生先は、まさかのBLゲームの世界。
モブであるリセルは、恋を自覚した瞬間、幼馴染・セスがこの世界の“主人公”だと気づいてしまう。
このまま一緒にいても、いつか彼は攻略対象に惹かれていく運命——それでも、今だけは傍にいたい。
「諦める覚悟をしたのに、どうしてこんなにも君が愛おしいんだろう」
恋の終わりを知っているモブと、想いを自覚していく主人公。
甘さと切なさが胸を締めつける、すれ違いから始まる運命の物語。
全8話。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる