明けない永遠の夜に

霧嶋めぐる

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7話

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 佐藤は、興味があることには没頭するタイプだった。

 好きなものは読書と勉強。

 特に数学が大好きで、暇さえあれば数学の問題集を引っ張り出して読んでいるような、あまり瞬一には理解できない趣味を持っていた。

 何度も行った佐藤の家。

 きっちりと片付けられた玄関やリビングとは正反対に、彼の部屋はとても汚かった。

 いや、汚いというと少し違うかもしれない。

 瞬一には理解のできないルールで整理された多種多様な紙の本が、部屋の中にいくつものタワーを作っていて。

 その部屋の中に居座るのは少し居心地が悪かった。

 知らない街にやってきたような、ちょうど引っ越してきた時を思い出すような心細さ。

 部屋は、佐藤の作り上げた街。

 完成された街の中に、自分の入り込む隙間はない。

 いつだったか、ちょうど2人でいた時に宅配便がやってきたことがある。

 親は出かけていたので遊びを中断して対応しにいった佐藤が、大きな箱を持って帰ってきた。

 一緒にダンボールを開封する。

 中身を傷つけないように、側面のガムテープのみをハサミで薄く傷つけて。

 中に入っていたのは沢山の本だった。

 子供が読むには難しすぎる数学の本。物理学の本。

 その中に、知っているようで知らない単語が混じっていた。

「プログラミング……?」

 新品の本に手をかける。中身をめくると、インクの匂いに頭がくらくらした。

 横から手が伸びてきて、本を取られる。

「コンピュータは特別な“式”に基づいて動いているんだ。それがプログラミング」

「式?それって数学みたいな?」

「そう」

「パソコンとかも、それで動いてんの?」

「そう」

「ロボットも?」

 本の表紙には人型のロボットの絵が書かれていた。

 確か、アンドロイドという名前のもの。

 日常に機械は溢れているけど、アンドロイドはテレビでしか見たことがない存在だった。

 お金持ちの人しか手を出せない、高級品。

 佐藤は本を閉じて、表紙のアンドロイドを指でなぞった。

 瞬一が見たことのない、はにかむような表情。

「……うん」

 本の摩天楼の頂上に、佐藤はその本を置いた。

 初めて見た佐藤の嬉しそうな横顔。

 削られていく、部屋の中のスペース。

 佐藤のその顔を見た時、瞬一はどうしようもなく泣きたくなった。

 佐藤が自分を置いて遠くに行ってしまうような、そんな絶望を感じた。

 待ってよ、行かないで。

 僕を捨てないで。なんて。

 そもそも拾われてなんかいないのに。

 縋り付きたくなる。

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感想 1

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