彼女いない歴=年齢 デート経験0の俺ですが、レンタル彼氏始めました!~一緒に《特別》作りませんか~

夜月桜

文字の大きさ
9 / 9

第八話~side楓~

しおりを挟む
「彼氏、ねぇ?」
ボスンと、自室のベッドにダイブした楓が、天井を見上げながら溜息と共に呟いた。
 楓が所属しているグループは、クラスカースト上位のグループだ。そう言ったグループでは、大抵の場合彼氏=ステータスの一種である。それも、ただの彼氏ではダメで、イケメンであることが要求される。
……はぁ、くだらな。
 いつもいつも繰り返される、グループ内での彼氏自慢の話を思い出して、楓はそう吐き捨てた。
 楓は、自分の容姿が並よりも優れていることを自覚している。だから、そこそこの容姿の男だって、あのグループにいればこれまでそれなりに寄ってきた。
そんな楓が彼氏を作らない理由は、学校で使っている建前のように、女の方が好きだとか、男に興味が無い、なんてことではなかった。
 楓は、今時珍しいピュアな女の子だった。そして、自覚する程度には独占欲の強い、メンヘラ女子でもあった。
 そんな楓は、自分が人一倍彼氏という存在に憧れを抱いているという自負を持っていた。
いつか私を好きだと言ってくれる運命の人がやってくると、この歳になっても本気で信じているのだから。
 つまるところ、楓が普段接しているような女子たちは、楓から言わせれば本当の恋などしていないのだ。
だって、内面よりも相手からどう見られるか。そして、そんなカッコいい彼氏持ってる私凄いだろ、という子供が玩具を自慢するような、しょうもない理由に基づく恋なのだから。
「はぁ。白馬の王子様が、私の心を攫って行ってくれればいいのに」
 溜息と共に吐き出された理想が理想でしかないことなど、楓とてもちろん理解している。
だけれども、子供の頃に読んだ王子様とメイドの禁断の恋と言った、作り物の恋物語が忘れられず、周りのような安っぽい恋(仮)をする気など、楓にはサラサラなかった。
 だけど、その一方で。楓は、周りが話すデートには、興味があった。
巷では男女が一緒に出掛ければ、もうそれはデートだというのだが、楓のような女の子が下手に男を誘っては、誤解を招いて後が面倒くさい。そういう事もあってこれまで機会が無かった。
しかし、このままデートの一つも経験が無いようでは、いつかあのグループの会話に付いて行けなくなる日が来る。女子にとって所属グループとは、学校という閉鎖空間で過ごすうえではなくてはならないものなのだ。
もしも追い出されたりしようものなら、迫害コース一直線。
 楓はスマホを開いて、ネットを開く。そして、『彼氏 デート』と検索を掛けてみた。
「なにこれ、レンタル彼氏?」
 検索結果のトップに出てきたのは、『株式会社レンタル彼氏』のホームページだった。気になって、楓はそこをクリックする。
 開いたページにまず出てきたのは、それはそれはイケメンが揃った、男たちの顔写真だった。
「うわ、この人カッコいい……」
 適当に流してみていたのだが、ある一人の男が目に止まった。楓は気になって、気が付いたら顔写真をクリックしていた。
「へぇ。瑠唯、ね」
 飛んだ先のページに乗っている情報を見ていく。
「同い年なんだ……。え、デート回数0回?」
 それを見て、楓の興味はますます惹かれていく。楓にとって、相手の初めてというのは、とても価値がある物なのだ。
「えっと……。一時間4000円かぁ。でも、ちょっと遊ぶだけなら、まぁなんとなるかな?」
 楓は、何となくやっていたバイトや、親からのお年玉とお小遣いを溜めているので、貯金には余裕がある。
レンタル彼氏を雇って、デートを経験してみることくらいは可能だった。
……って、私は何を考えてるの? 本気?
 いつの間にかやってみたい、という思考に流されかけていた楓だが、冷静な自分の言葉に我に返った。
……でも、デートを経験できるなら、この出費は悪くないんじゃ?
 既に瑠唯が気になり始めていた楓の思考は、再び傾く。
……それに、このままだと本当に会話に付いて行けなくなるかもしれないし。
 くだらないとは思うが、それと自分の居場所を失うのは、話が別だ。あの場所を失って、虐めの対象になることは避けたい。
……じゃあ、やっぱりやってみるべきだね!
 これはあくまでも、デートの経験をする為。
 楓は、自分自身に言い訳を重ねて、納得させる。
 結局その後。
楓は会員登録を済ませると、今週の日曜に瑠唯とのデートを予約した。
……あぁ、楽しみだなぁ。
 ふふっ、と笑みを漏らす楓は、気が早いのを承知でデート用の服を見繕うのだった――
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…

senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。 地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。 クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。 彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。 しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。 悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。 ――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。 謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。 ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。 この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。 陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について

沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。 かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。 しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。 現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。 その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。 「今日から私、あなたのメイドになります!」 なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!? 謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける! カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!

処理中です...