いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、ラスボスを葬ってやります!

果 一

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第一章 反逆への序章編

第13話 僕っ娘属性なんて、俺の原作知識にはありません

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「そういえば、お兄さん。名前はなんていうの?」

「俺? 俺は、カイムだ。よろしく二人とも」



 俺は、二人を見まわして言った。



「と、言ったところわるいんだけどさ。親睦を深めたいところではあるけど、生憎と夜が明けたらすぐに出発しなくちゃならないんだ。体力も魔力も、まだ心許ないから休ませてもらうよ」

「大変なんだね、カイムさん」



 ふと、フロルは目を伏せる。

 それから、消え入りそうな声で「私達、これからどうすれば……」と呟いた。



 なるほど、当然の発言だ。

 信じていた最後の希望に裏切られ、行く当てもない。

 こんな孤独な二人が、これからどう生きていくというのか。



「来る?」

「え?」

「俺と一緒に来るか?」

「そ、それは……でも」



 フロル達は、逡巡するように目を泳がせる。



「ここだけの話。お前たちを助けたのは、これから行動していく上で役に立つと判断したからなんだ」

「そ、そうなの? でも私達、ただの奴隷で……」

「そう。ただの奴隷だから、自分たちの持つ潜在能力ポテンシャルに気付いていなかったんだ」

「ポテンシャル……? はっ」



 何かに気付いたように、フロルは両手で慎ましやかな胸を隠し、フェリスはジト目で睨んでくる。



「えっち」

「不潔なのだ」

「違う違う、いかがわしい意味じゃない」



 ポテンシャル=女としての魅力と受け取られてしまった。

 まあ、実際二人ともレベルが高いから、下心が全くないというわけでもないが。



「俺がフロルに目を付けた最大の理由は、お前の保有してる魔力量だ」

「魔力……量?」

「やっぱり自覚はなかったんだ。俺自身、そこそこ凄い才能を持って生まれてきたと思ったけど、たぶんお前はそれ以上だ。鍛えれば、かなり強い魔法の使い手になる」

「そうなの?」

「ああ。折り紙付きだよ。もちろん、フェリスもね」



 俺は、フェリスの方に目を向ける。



「魔力量はフロルほどじゃないけど、レイズの蹴りをもろに食らって生きているだけのタフさは貴重だ。鍛えようによっては、優秀な防御前衛タンクを任せられる」



 そう言うと、二人は少し驚いたように目を見開く。

 少しだけ無言のときが流れた後、フロルは上目遣いで聞いてきた。



「カイムさんの……役に立てる?」

「もちろん。というか、厳しいこと言っちゃえば役に立ってくれなきゃ困る」



 そう、これは彼女に「恋人になって欲しい」と言っているわけでない。

 一緒に「茨の道を歩いてくれ」と言っているのである。



 俺の下克上計画は、生半可な覚悟では務まらない。

 現ラスボスとの力量差は、先程の戦闘で身に染みてわかっている。



 有無を言わせぬ俺の発言と眼力に、フロル達は怯む――かと思いきや。



「よろこんで、あなたの手足になる」

「僕の命の恩人。喜んで尽くすのだ」



 あっさりと、俺の手を握ってきた。

 

「おう、よろしく」



 俺は二人に笑いかけて――



「――ていうか、フェリス。お前僕っ属性だったの? 原作にそんな設定なかったじゃん!」

「僕っ娘? 原作? なんの話をしているのだ?」



 フェリスは首を傾げる。

 ああ、そういえば彼女は“殺されるために出てきたちょい役”だから、一人称作中で語られなかったっけ。



「なんでもないよ、こっちの話」

「そんなことよりカイム。さっき、夜が明けたらすぐに出発するって言ってたけど、どこに行くのだ?」

「ん? ああ、それな」



 俺は小さく息を吸って言った。



「ここから東へ二キロ行った先にある、アリクル山。そこに隠されている――《紫苑しおんの指輪》と武器を手に入れる」

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