13 / 59
第一章 反逆への序章編
第13話 僕っ娘属性なんて、俺の原作知識にはありません
しおりを挟む
「そういえば、お兄さん。名前はなんていうの?」
「俺? 俺は、カイムだ。よろしく二人とも」
俺は、二人を見まわして言った。
「と、言ったところわるいんだけどさ。親睦を深めたいところではあるけど、生憎と夜が明けたらすぐに出発しなくちゃならないんだ。体力も魔力も、まだ心許ないから休ませてもらうよ」
「大変なんだね、カイムさん」
ふと、フロルは目を伏せる。
それから、消え入りそうな声で「私達、これからどうすれば……」と呟いた。
なるほど、当然の発言だ。
信じていた最後の希望に裏切られ、行く当てもない。
こんな孤独な二人が、これからどう生きていくというのか。
「来る?」
「え?」
「俺と一緒に来るか?」
「そ、それは……でも」
フロル達は、逡巡するように目を泳がせる。
「ここだけの話。お前たちを助けたのは、これから行動していく上で役に立つと判断したからなんだ」
「そ、そうなの? でも私達、ただの奴隷で……」
「そう。ただの奴隷だから、自分たちの持つ潜在能力に気付いていなかったんだ」
「ポテンシャル……? はっ」
何かに気付いたように、フロルは両手で慎ましやかな胸を隠し、フェリスはジト目で睨んでくる。
「えっち」
「不潔なのだ」
「違う違う、いかがわしい意味じゃない」
ポテンシャル=女としての魅力と受け取られてしまった。
まあ、実際二人ともレベルが高いから、下心が全くないというわけでもないが。
「俺がフロルに目を付けた最大の理由は、お前の保有してる魔力量だ」
「魔力……量?」
「やっぱり自覚はなかったんだ。俺自身、そこそこ凄い才能を持って生まれてきたと思ったけど、たぶんお前はそれ以上だ。鍛えれば、かなり強い魔法の使い手になる」
「そうなの?」
「ああ。折り紙付きだよ。もちろん、フェリスもね」
俺は、フェリスの方に目を向ける。
「魔力量はフロルほどじゃないけど、レイズの蹴りをもろに食らって生きているだけのタフさは貴重だ。鍛えようによっては、優秀な防御前衛を任せられる」
そう言うと、二人は少し驚いたように目を見開く。
少しだけ無言のときが流れた後、フロルは上目遣いで聞いてきた。
「カイムさんの……役に立てる?」
「もちろん。というか、厳しいこと言っちゃえば役に立ってくれなきゃ困る」
そう、これは彼女に「恋人になって欲しい」と言っているわけでない。
一緒に「茨の道を歩いてくれ」と言っているのである。
俺の下克上計画は、生半可な覚悟では務まらない。
現ラスボスとの力量差は、先程の戦闘で身に染みてわかっている。
有無を言わせぬ俺の発言と眼力に、フロル達は怯む――かと思いきや。
「よろこんで、あなたの手足になる」
「僕の命の恩人。喜んで尽くすのだ」
あっさりと、俺の手を握ってきた。
「おう、よろしく」
俺は二人に笑いかけて――
「――ていうか、フェリス。お前僕っ娘属性だったの? 原作にそんな設定なかったじゃん!」
「僕っ娘? 原作? なんの話をしているのだ?」
フェリスは首を傾げる。
ああ、そういえば彼女は“殺されるために出てきたちょい役”だから、一人称作中で語られなかったっけ。
「なんでもないよ、こっちの話」
「そんなことよりカイム。さっき、夜が明けたらすぐに出発するって言ってたけど、どこに行くのだ?」
「ん? ああ、それな」
俺は小さく息を吸って言った。
「ここから東へ二キロ行った先にある、アリクル山。そこに隠されている――《紫苑の指輪》と武器を手に入れる」
「俺? 俺は、カイムだ。よろしく二人とも」
俺は、二人を見まわして言った。
「と、言ったところわるいんだけどさ。親睦を深めたいところではあるけど、生憎と夜が明けたらすぐに出発しなくちゃならないんだ。体力も魔力も、まだ心許ないから休ませてもらうよ」
「大変なんだね、カイムさん」
ふと、フロルは目を伏せる。
それから、消え入りそうな声で「私達、これからどうすれば……」と呟いた。
なるほど、当然の発言だ。
信じていた最後の希望に裏切られ、行く当てもない。
こんな孤独な二人が、これからどう生きていくというのか。
「来る?」
「え?」
「俺と一緒に来るか?」
「そ、それは……でも」
フロル達は、逡巡するように目を泳がせる。
「ここだけの話。お前たちを助けたのは、これから行動していく上で役に立つと判断したからなんだ」
「そ、そうなの? でも私達、ただの奴隷で……」
「そう。ただの奴隷だから、自分たちの持つ潜在能力に気付いていなかったんだ」
「ポテンシャル……? はっ」
何かに気付いたように、フロルは両手で慎ましやかな胸を隠し、フェリスはジト目で睨んでくる。
「えっち」
「不潔なのだ」
「違う違う、いかがわしい意味じゃない」
ポテンシャル=女としての魅力と受け取られてしまった。
まあ、実際二人ともレベルが高いから、下心が全くないというわけでもないが。
「俺がフロルに目を付けた最大の理由は、お前の保有してる魔力量だ」
「魔力……量?」
「やっぱり自覚はなかったんだ。俺自身、そこそこ凄い才能を持って生まれてきたと思ったけど、たぶんお前はそれ以上だ。鍛えれば、かなり強い魔法の使い手になる」
「そうなの?」
「ああ。折り紙付きだよ。もちろん、フェリスもね」
俺は、フェリスの方に目を向ける。
「魔力量はフロルほどじゃないけど、レイズの蹴りをもろに食らって生きているだけのタフさは貴重だ。鍛えようによっては、優秀な防御前衛を任せられる」
そう言うと、二人は少し驚いたように目を見開く。
少しだけ無言のときが流れた後、フロルは上目遣いで聞いてきた。
「カイムさんの……役に立てる?」
「もちろん。というか、厳しいこと言っちゃえば役に立ってくれなきゃ困る」
そう、これは彼女に「恋人になって欲しい」と言っているわけでない。
一緒に「茨の道を歩いてくれ」と言っているのである。
俺の下克上計画は、生半可な覚悟では務まらない。
現ラスボスとの力量差は、先程の戦闘で身に染みてわかっている。
有無を言わせぬ俺の発言と眼力に、フロル達は怯む――かと思いきや。
「よろこんで、あなたの手足になる」
「僕の命の恩人。喜んで尽くすのだ」
あっさりと、俺の手を握ってきた。
「おう、よろしく」
俺は二人に笑いかけて――
「――ていうか、フェリス。お前僕っ娘属性だったの? 原作にそんな設定なかったじゃん!」
「僕っ娘? 原作? なんの話をしているのだ?」
フェリスは首を傾げる。
ああ、そういえば彼女は“殺されるために出てきたちょい役”だから、一人称作中で語られなかったっけ。
「なんでもないよ、こっちの話」
「そんなことよりカイム。さっき、夜が明けたらすぐに出発するって言ってたけど、どこに行くのだ?」
「ん? ああ、それな」
俺は小さく息を吸って言った。
「ここから東へ二キロ行った先にある、アリクル山。そこに隠されている――《紫苑の指輪》と武器を手に入れる」
90
あなたにおすすめの小説
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。
無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。
やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~
aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」
勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......?
お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる