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第二章 《友好舞踏会》の騒乱編
第24話 戦う相手は……
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王国と帝国の戦争開始は、とあるテロを皮切りに始まる。
それまで《黒の皚鳥》の暗躍もあり、両国間の関係に亀裂が入っていた。
このままではまずいと判断したのが、物語の中でとりあえず“良い奴”路線を演じているブルガス王国だ。
両国の関係を取り持つため、友好舞踏会という名の、友好を結ぶパーティを催すことを、公国側に打診。
公国はこれを承認し、来る十二月十一日に、両国の重鎮を招いた舞踏会の開催を約束した。
成功すれば、よりを戻せる絶好の機会。
しかしそれは、争いを避けたいブルガス王国の主張。
《黒の皚鳥》が裏から操るアリクレース公国の本意は、戦争を起こすこと。
つまり、王国の重要人物が集うこの場は――戦争を引き起こす引き金としては、十分過ぎるほど役者が揃っているのだ。
まあ、要するに――
「明日、友好舞踏会において、《黒の皚鳥》が紛れ込んだ公国側は、王国側の重要人物を殺害する」
そう説明した瞬間、作戦会議をするために組織メンバーが集った大広間中に、どよめきが走った。
フロルにフェリス、リーナ、シリカなどのエース格を筆頭に、さりげな~くいつの間にか増えていたメンバー達が顔を見合わせる。
「それは確定情報なの?」
「ああ」
フロルの問いに、俺は頷いて答える。
実際問題、情報なんてほとんど集めていない。
まあ、表向きは《黒の皚鳥》構成員なので、明日襲撃があることくらいはわかっているが――具体的な時間や場所は下っ端には知らされていないのだ。
あくまで、それ以降の情報は、俺のゲーム知識から引っ張ってきているだけだ。
「毎回思うけど、カイムはつくづく不思議なのだ。まるで、未来を知っているみたいに」
「そういえば、フェリスは以前にもそんなこと言いかけてたっけな」
俺は、《解放の試練》に立ち向かったときのことを思い出す。
「詳しいことは言えないけど、俺の生い立ちはちょっと特殊でね。未来を見れるわけじゃないけど、起こるだろう未来くらいはわかる……って感じかな」
「ふーん、凄いのだ。流石は僕達の主なのだ」
感心したようなフェリスの呟きに、周りのメンバー達も大きく頷く。
俺は照れ隠しに大きく咳払いをすると、話を戻した。
「王国側の最重要人物は、第一王女のレーネ=フォン=ブルガス。戦争を起こす口実としては、これ以上無い相手だ。まず間違い無く彼女は殺される。それを阻止するのが俺達の役目。なんだけど……」
「何か、懸念があるのじゃな?」
リーナが、頬杖をつきつつ聞いてきた。
「ああ。正直、一筋縄じゃいかない。公国側の主犯格は、《黒の皚鳥》四天王が一翼いちよく、《水龍》:ツォーン=レフィストスだ」
瞬間、大広間中の空気が凍り付くのがわかった。
「《水龍》:ツォーン=レフィストス……! そんな大物がどうして?」
「それくらい、公国にとっては重要な作戦ってことだ。平和路線を進みたい王国は、自分から危ない橋を渡らない。今回の友好舞踏会を逃したら、戦争を引き起こすチャンスを逃すことになる」
戦争を起こす絶好の機会が、この友好舞踏会である以上、これを阻止すれば死に行く運命にある人々を、多少なりとも救うことができるかもしれない。
「レイズ達は何としてでもこのチャンスを掴みたいから、最大戦力の一角を投じてくる。逆に言えば、そこを潰せばあいつらの計画を大きく遅らせることができるわけだ。無駄な血を流すことなく、ね」
もちろん、そんなことをすれば《黒の皚鳥》は俺達を排除しようと動き出すだろう。
だが、それも狙いの一つだ。
レイズ達が王国の王女を暗殺しようとしたとわかれば、その対応に追われる。
戦争になるにしろ、政治的対応になるにしろ、相手の注意は全てこちらに向くわけではない。そして、その逆もまた然り。
俺達が戦争の抑止力になることで、レイズに好き勝手な行動を許さないことも可能なのだ。
そして、戦争の開始を阻止・または遅らせることで、戦いによる相手側のレベルアップを邪魔することができる。
この介入は、俺達にとってはメリットの方が大きい。
ただ――
「本当に、倒せるのかな? 私達で、四天王の一人を……」
フロルが、不安げに呟く。
まあ、至極当然の反応だ。
相手は、四天王。
まだ物語の最序盤とはいえ、半年前に戦ったワイバーンなどよりも遙かに別次元の強さを誇っている。
――が。
「やれるさきっと、今の俺達なら」
不思議と、負ける気がしなかった。
油断をしているわけじゃない。
実際、一筋縄ではいかない相手だと思っている。
けれど、半年間彼女たちの成長を見てきた俺には、惨敗するような未来バッドエンドは見えないのだ。
「そう、だね。うん。私達なられる」
「吠え面かかせてやるのだ!」
フロルやフェリスを筆頭に、メンバー達は士気を上げる。
「じゃあ、大まかな配置と作戦を説明する。しっかり聞いておいてくれ」
俺は、粛々と作戦の概要を説明していくのだった。
――やがて、夜の時間帯になる。
昼夜という概念の存在しない《解放の試練》から外に出た俺は――《黒の皚鳥》のアジトにいた。
それまで《黒の皚鳥》の暗躍もあり、両国間の関係に亀裂が入っていた。
このままではまずいと判断したのが、物語の中でとりあえず“良い奴”路線を演じているブルガス王国だ。
両国の関係を取り持つため、友好舞踏会という名の、友好を結ぶパーティを催すことを、公国側に打診。
公国はこれを承認し、来る十二月十一日に、両国の重鎮を招いた舞踏会の開催を約束した。
成功すれば、よりを戻せる絶好の機会。
しかしそれは、争いを避けたいブルガス王国の主張。
《黒の皚鳥》が裏から操るアリクレース公国の本意は、戦争を起こすこと。
つまり、王国の重要人物が集うこの場は――戦争を引き起こす引き金としては、十分過ぎるほど役者が揃っているのだ。
まあ、要するに――
「明日、友好舞踏会において、《黒の皚鳥》が紛れ込んだ公国側は、王国側の重要人物を殺害する」
そう説明した瞬間、作戦会議をするために組織メンバーが集った大広間中に、どよめきが走った。
フロルにフェリス、リーナ、シリカなどのエース格を筆頭に、さりげな~くいつの間にか増えていたメンバー達が顔を見合わせる。
「それは確定情報なの?」
「ああ」
フロルの問いに、俺は頷いて答える。
実際問題、情報なんてほとんど集めていない。
まあ、表向きは《黒の皚鳥》構成員なので、明日襲撃があることくらいはわかっているが――具体的な時間や場所は下っ端には知らされていないのだ。
あくまで、それ以降の情報は、俺のゲーム知識から引っ張ってきているだけだ。
「毎回思うけど、カイムはつくづく不思議なのだ。まるで、未来を知っているみたいに」
「そういえば、フェリスは以前にもそんなこと言いかけてたっけな」
俺は、《解放の試練》に立ち向かったときのことを思い出す。
「詳しいことは言えないけど、俺の生い立ちはちょっと特殊でね。未来を見れるわけじゃないけど、起こるだろう未来くらいはわかる……って感じかな」
「ふーん、凄いのだ。流石は僕達の主なのだ」
感心したようなフェリスの呟きに、周りのメンバー達も大きく頷く。
俺は照れ隠しに大きく咳払いをすると、話を戻した。
「王国側の最重要人物は、第一王女のレーネ=フォン=ブルガス。戦争を起こす口実としては、これ以上無い相手だ。まず間違い無く彼女は殺される。それを阻止するのが俺達の役目。なんだけど……」
「何か、懸念があるのじゃな?」
リーナが、頬杖をつきつつ聞いてきた。
「ああ。正直、一筋縄じゃいかない。公国側の主犯格は、《黒の皚鳥》四天王が一翼いちよく、《水龍》:ツォーン=レフィストスだ」
瞬間、大広間中の空気が凍り付くのがわかった。
「《水龍》:ツォーン=レフィストス……! そんな大物がどうして?」
「それくらい、公国にとっては重要な作戦ってことだ。平和路線を進みたい王国は、自分から危ない橋を渡らない。今回の友好舞踏会を逃したら、戦争を引き起こすチャンスを逃すことになる」
戦争を起こす絶好の機会が、この友好舞踏会である以上、これを阻止すれば死に行く運命にある人々を、多少なりとも救うことができるかもしれない。
「レイズ達は何としてでもこのチャンスを掴みたいから、最大戦力の一角を投じてくる。逆に言えば、そこを潰せばあいつらの計画を大きく遅らせることができるわけだ。無駄な血を流すことなく、ね」
もちろん、そんなことをすれば《黒の皚鳥》は俺達を排除しようと動き出すだろう。
だが、それも狙いの一つだ。
レイズ達が王国の王女を暗殺しようとしたとわかれば、その対応に追われる。
戦争になるにしろ、政治的対応になるにしろ、相手の注意は全てこちらに向くわけではない。そして、その逆もまた然り。
俺達が戦争の抑止力になることで、レイズに好き勝手な行動を許さないことも可能なのだ。
そして、戦争の開始を阻止・または遅らせることで、戦いによる相手側のレベルアップを邪魔することができる。
この介入は、俺達にとってはメリットの方が大きい。
ただ――
「本当に、倒せるのかな? 私達で、四天王の一人を……」
フロルが、不安げに呟く。
まあ、至極当然の反応だ。
相手は、四天王。
まだ物語の最序盤とはいえ、半年前に戦ったワイバーンなどよりも遙かに別次元の強さを誇っている。
――が。
「やれるさきっと、今の俺達なら」
不思議と、負ける気がしなかった。
油断をしているわけじゃない。
実際、一筋縄ではいかない相手だと思っている。
けれど、半年間彼女たちの成長を見てきた俺には、惨敗するような未来バッドエンドは見えないのだ。
「そう、だね。うん。私達なられる」
「吠え面かかせてやるのだ!」
フロルやフェリスを筆頭に、メンバー達は士気を上げる。
「じゃあ、大まかな配置と作戦を説明する。しっかり聞いておいてくれ」
俺は、粛々と作戦の概要を説明していくのだった。
――やがて、夜の時間帯になる。
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