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第一章 陰キャな僕とクラス1の美少女にもフラグは立つらしい
第2話 責任をとることになりました
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陽キャ女子と陰キャ男子にはイベントが起こらない。ああ、僕は確かにこう言った。
――訂正。
陰キャにも、陽キャ女子との出会いがあるみたい。ただし、最悪な出会い方で。
僕の目には、窓に映る夕日に照らされた朝比奈の、眩しいくらい白い柔肌が映ってしまっていて。
部活終わりなのか、やや汗ばんだ艶めかしい肢体を僅かばかりに隠す薄桃色の下着が、逆にその……エロいというか。
とにかく、見てはいけないものを見てしまったことに理解が追いついた瞬間、僕は恥じかけるように動いた。
「あ、いや。これは! ここ、手芸部の部室だから! き、着替えてると思わなくて!」
キョドり方がまさに陰キャのそれ。
が、嘘はついていない。実際、こんなことが起きたのはこれが初めてだったから。
とにかく、絶対怒られる!
そう覚悟していた僕の前で、しかし朝比奈は特に何も言わないまま、何事も無かったように着替えを続ける。
流石にいたたまれなくなって、僕は部室を飛び出した。
ドアをバタンと閉めて近くの壁に背を預け、思わずへたり込む。
心臓の音がバクバクとうるさい。
ていうか、なんでなんも突っ込んでこないの!?
「きゃーエッチー!」くらい言われて、ドロップキック食らわせられるまでがセットじゃないの? 何も反応されないのは逆に怖いんだけど!
ああ、そうか。僕みたいな陰キャに覗かれても、とくに何も思わないのか。
それはそれでちょっと傷付くな。
そんな風に考えていた僕の横で、ガチャリと音がしてドアが開いた。
中から現れた朝比奈は、既に制服に着替え終わっている。
「あ、そのさっきは……」
「うちのクラスの境くんだよね? 入って」
「あ、はい」
先手必勝で謝ろうとした僕に対し、朝比奈はそんな風に告げてくる。ここは素直に従っておいたほうが身のためだろう。
クラスのカーストトップに君臨する女子の生着替えを見て無事で済むわけがないのだから。
……ていうか、僕の名前知ってたんだな。
――。
朝比奈に連れられて部室に入った僕は、クラスの半分ほどの大きさの部室中央に置かれているソファに、2人で向かい合って座っていた。
「あ、あの……」
「まずは謝らせて。ごめんなさい。私、ここが手芸部の部室だって知らなくて、勝手に着替えちゃったから」
そこまで言うと朝比奈は身を乗り出して、
「あの、できればこのことは私達だけの秘密にしておいてくれないかな? 知らない人の部室で着替えてた変態になっちゃうし」
私達だけの秘密……なにそれそそるんだけど。おっといかん、今はそういう話じゃない。
「謝るなら僕の方だよ。手芸愛好会の部室とはいえ、中に人がいないかちゃんとノックすべきだった。だからごめん。僕の不注意だ」
よし、これでお互い仲直りができた。
しかし、朝比奈ってやっぱ良い人だな。普通、怒って絶交されてもおかしくないのに。
そんな風に思っていると、朝比奈のポケットからティロンという通知音が鳴った。
「ちょっとごめんね」
朝比奈は僕に断りを入れると、スマホを取り出して操作し出した。
と、スマホを弄る朝比奈の顔がぱぁーっと明るくなっていく。
「何かいいことでもあったの?」
「え? う、うん……そう見えるかな?」
「まあ」
「えへへ。そっか」
口元をほころばせる朝比奈は、恋する乙女そのものだ。
「あの、秘密ついでに内緒にしといてね? 実は私、好きな人がいて……」
うん、知ってる。その相手まで。
「それで、お互い部活終わったら一緒に部活用品買いに行かない? って誘ったんだけど、今「部活終わったからOK」って返ってきたの」
「そっか。それはよかったね」
「うん」
幸せそうにはにかむ朝比奈。
「じゃあ、早く行ってあげないとね。飯島くん、待ってるだろうし」
「うん、行ってくる――え?」
反射的に立ち上がった朝比奈は、その場で固まった。
「ちょっと待って境くん。私、好きな人の名前言ったっけ?」
「え? ……あ」
しまった。つい口を滑らせた。
後悔したが、もう遅い。みるみるうちに朝比奈の顔が赤く染まっていく。
「さ、境くん。い、いつから気付いて……」
「えーっと、ごめん。割と最初から」
涙目でプルプル震えている朝比奈を見ていると、流石に罪悪感が湧いてくる。「だってわかりやすいし」とは流石に言えない僕であった。
「も、もしかして、みんなにもうバレてるかな? バレちゃってるかな?」
「え、えーと……さあ? どうだろうね?」
脂汗を垂らしつつそっぽを向く。
しかし、半分泣きべそを掻いている彼女を見ると、はぐらかすのも限界があった。
「えっと……僕が気付いてるくらいだから、わりと気付いてる人はいると思うよ。少なくとも、三枝さんと畦上さんは気付いてると思う」
「うそ、蜜柑ちゃんと綾乃っちが!?」
「うん……って、朝比奈さん!?」
バタンとその場に倒れ込んだ朝比奈は、「い、いっそ殺して……」とうわごとのように呟いている。
なんというか、ご愁傷様だ。
「そ、それじゃあ頑張って」
流石にこの場にはもういれないと思い、帰ろうとした僕の服の裾を、朝比奈が掴んだ。
「待って。お願いがあるの」
「なに? 大丈夫だよ、このことは誰にも言わないから」
「そうじゃないの。どうせバレちゃったから、その……堺くんにお願いがあって」
「お、お願い?」
エロいこと? ……なんてそんなはずないよね、わかってる。
「あのさ。私と……」
え? これマジでエロいこと?
なんかすごくもじもじしてるんだけど。
「私と、海人くんの恋のキューピッドになってください!」
「……はい?」
思わずきょとんとしてしまう僕。
「ほ、ほら。どうせ知られちゃったんだし、だったらいいよね? 秘密を知ってる人に助けて貰ったら、心強いし」
「ええ、でも……それは三枝さん達にお願いした方が」
「うぅ……でも、なんて言えば良いのかわからないし。ほら、こういうのって男の子の意見があると心強いというか」
僕に陽キャ男子の気持ちがわかると思うのか。
「悪いけど、こればかりは……」
「み、見たよね」
断ろうとした僕の前で、不意に朝比奈が頬を赤らめて自分の身体を抱く。
「い、言っとくけど初めてだったんだから。男の子に、は、裸を見られたのなんて」
「うぐっ」
それを出されたぐうの音も出ない。
耳まで真っ赤にした朝比奈が、恨めしい目で僕を見上げる。
「せ、責任をとってくれなきゃ、困るんだから……」
「は……はい」
僕は、屈服した。
15歳童◯、クラス一の美少女の責任をとることになりました。
――訂正。
陰キャにも、陽キャ女子との出会いがあるみたい。ただし、最悪な出会い方で。
僕の目には、窓に映る夕日に照らされた朝比奈の、眩しいくらい白い柔肌が映ってしまっていて。
部活終わりなのか、やや汗ばんだ艶めかしい肢体を僅かばかりに隠す薄桃色の下着が、逆にその……エロいというか。
とにかく、見てはいけないものを見てしまったことに理解が追いついた瞬間、僕は恥じかけるように動いた。
「あ、いや。これは! ここ、手芸部の部室だから! き、着替えてると思わなくて!」
キョドり方がまさに陰キャのそれ。
が、嘘はついていない。実際、こんなことが起きたのはこれが初めてだったから。
とにかく、絶対怒られる!
そう覚悟していた僕の前で、しかし朝比奈は特に何も言わないまま、何事も無かったように着替えを続ける。
流石にいたたまれなくなって、僕は部室を飛び出した。
ドアをバタンと閉めて近くの壁に背を預け、思わずへたり込む。
心臓の音がバクバクとうるさい。
ていうか、なんでなんも突っ込んでこないの!?
「きゃーエッチー!」くらい言われて、ドロップキック食らわせられるまでがセットじゃないの? 何も反応されないのは逆に怖いんだけど!
ああ、そうか。僕みたいな陰キャに覗かれても、とくに何も思わないのか。
それはそれでちょっと傷付くな。
そんな風に考えていた僕の横で、ガチャリと音がしてドアが開いた。
中から現れた朝比奈は、既に制服に着替え終わっている。
「あ、そのさっきは……」
「うちのクラスの境くんだよね? 入って」
「あ、はい」
先手必勝で謝ろうとした僕に対し、朝比奈はそんな風に告げてくる。ここは素直に従っておいたほうが身のためだろう。
クラスのカーストトップに君臨する女子の生着替えを見て無事で済むわけがないのだから。
……ていうか、僕の名前知ってたんだな。
――。
朝比奈に連れられて部室に入った僕は、クラスの半分ほどの大きさの部室中央に置かれているソファに、2人で向かい合って座っていた。
「あ、あの……」
「まずは謝らせて。ごめんなさい。私、ここが手芸部の部室だって知らなくて、勝手に着替えちゃったから」
そこまで言うと朝比奈は身を乗り出して、
「あの、できればこのことは私達だけの秘密にしておいてくれないかな? 知らない人の部室で着替えてた変態になっちゃうし」
私達だけの秘密……なにそれそそるんだけど。おっといかん、今はそういう話じゃない。
「謝るなら僕の方だよ。手芸愛好会の部室とはいえ、中に人がいないかちゃんとノックすべきだった。だからごめん。僕の不注意だ」
よし、これでお互い仲直りができた。
しかし、朝比奈ってやっぱ良い人だな。普通、怒って絶交されてもおかしくないのに。
そんな風に思っていると、朝比奈のポケットからティロンという通知音が鳴った。
「ちょっとごめんね」
朝比奈は僕に断りを入れると、スマホを取り出して操作し出した。
と、スマホを弄る朝比奈の顔がぱぁーっと明るくなっていく。
「何かいいことでもあったの?」
「え? う、うん……そう見えるかな?」
「まあ」
「えへへ。そっか」
口元をほころばせる朝比奈は、恋する乙女そのものだ。
「あの、秘密ついでに内緒にしといてね? 実は私、好きな人がいて……」
うん、知ってる。その相手まで。
「それで、お互い部活終わったら一緒に部活用品買いに行かない? って誘ったんだけど、今「部活終わったからOK」って返ってきたの」
「そっか。それはよかったね」
「うん」
幸せそうにはにかむ朝比奈。
「じゃあ、早く行ってあげないとね。飯島くん、待ってるだろうし」
「うん、行ってくる――え?」
反射的に立ち上がった朝比奈は、その場で固まった。
「ちょっと待って境くん。私、好きな人の名前言ったっけ?」
「え? ……あ」
しまった。つい口を滑らせた。
後悔したが、もう遅い。みるみるうちに朝比奈の顔が赤く染まっていく。
「さ、境くん。い、いつから気付いて……」
「えーっと、ごめん。割と最初から」
涙目でプルプル震えている朝比奈を見ていると、流石に罪悪感が湧いてくる。「だってわかりやすいし」とは流石に言えない僕であった。
「も、もしかして、みんなにもうバレてるかな? バレちゃってるかな?」
「え、えーと……さあ? どうだろうね?」
脂汗を垂らしつつそっぽを向く。
しかし、半分泣きべそを掻いている彼女を見ると、はぐらかすのも限界があった。
「えっと……僕が気付いてるくらいだから、わりと気付いてる人はいると思うよ。少なくとも、三枝さんと畦上さんは気付いてると思う」
「うそ、蜜柑ちゃんと綾乃っちが!?」
「うん……って、朝比奈さん!?」
バタンとその場に倒れ込んだ朝比奈は、「い、いっそ殺して……」とうわごとのように呟いている。
なんというか、ご愁傷様だ。
「そ、それじゃあ頑張って」
流石にこの場にはもういれないと思い、帰ろうとした僕の服の裾を、朝比奈が掴んだ。
「待って。お願いがあるの」
「なに? 大丈夫だよ、このことは誰にも言わないから」
「そうじゃないの。どうせバレちゃったから、その……堺くんにお願いがあって」
「お、お願い?」
エロいこと? ……なんてそんなはずないよね、わかってる。
「あのさ。私と……」
え? これマジでエロいこと?
なんかすごくもじもじしてるんだけど。
「私と、海人くんの恋のキューピッドになってください!」
「……はい?」
思わずきょとんとしてしまう僕。
「ほ、ほら。どうせ知られちゃったんだし、だったらいいよね? 秘密を知ってる人に助けて貰ったら、心強いし」
「ええ、でも……それは三枝さん達にお願いした方が」
「うぅ……でも、なんて言えば良いのかわからないし。ほら、こういうのって男の子の意見があると心強いというか」
僕に陽キャ男子の気持ちがわかると思うのか。
「悪いけど、こればかりは……」
「み、見たよね」
断ろうとした僕の前で、不意に朝比奈が頬を赤らめて自分の身体を抱く。
「い、言っとくけど初めてだったんだから。男の子に、は、裸を見られたのなんて」
「うぐっ」
それを出されたぐうの音も出ない。
耳まで真っ赤にした朝比奈が、恨めしい目で僕を見上げる。
「せ、責任をとってくれなきゃ、困るんだから……」
「は……はい」
僕は、屈服した。
15歳童◯、クラス一の美少女の責任をとることになりました。
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