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第1章 最初の《契約》、竜の少女
第7話 ランキングトップの冒険者
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《三人称視点》
ダンジョン中層――21階層にて。
『グォオオオオオオオオオッ!』
叫び声を上げて突進するのは、Bランクモンスターの“レッド・ボア”。
赤い体毛と巨大な牙を持つイノシシのような見た目のソイツは、標的と見定めた少年めがけて猪突猛進する。
「へっ! 喰らえバケモンが! 《ファイア・ランス》!」
が、その少年はどう猛に笑って、火属性魔法の《ファイア・ランス》を起動した。
轟! と音を立て、炎の槍が“レッド・ボア”めがけて飛んでいき、身体を貫いた。
『グァッ!』
“レッド・ボア”の身体が傾いで、地面を身体で擦りながら突進が止まる。
荒い息をついているところを見るに、一撃で急所を射貫いたわけではないらしい。いや、彼にはそうするだけの実力があるが、あえてしなかった。
「はっ、こんなもんかよクソ弱ぇ」
少年――川端剣砥は、悪態をつきつつ瀕死の“レッド・ボア”に近づき、傷口を思いっきり踏みつけた。
『グヒィッ!?』
「へっ、おもしれぇ。モンスターのくせに痛がるのかよ。平気で俺達冒険者に襲いかかってくるくせに、自分はやめて欲しいですってか? そうはいかねぇだろうが!」
剣砥は、犬歯をむき出しにして笑いながら、短剣を“レッド・ボア”に突き刺す。
あえて、心臓部となる魔石の部分を避けて、何度でも。
――それらしい理屈を込めてモンスターを狩っている剣砥だが、その実そんなのはただの正当化にすぎない。
彼自身をダンジョンの奥へと突き動かすのは、ひとえに快楽故だ。
強いモンスターに勝ってチヤホヤされたい。自分が世界の中心でいたい。
気に入らないことがあれば、モンスターをいたぶって、享楽に身を委ねる。まるで、幼子が蟻の巣に水を注ぎ込むように。
モンスターに対する殺害が正当化されたこの場所は、彼にとってはまさに遊びの場でしかないのだ。
ひとしきりいたぶったあと、剣砥はトドメを刺して更なる標的を求め、ダンジョンを彷徨う――
――。
「へへっ、やったぜ」
ひとしきり攻略を終えた剣砥は、すっきりした表情で第一階層のギルド本部に戻っていた。
ダンジョン一階層の広い空間を使い、冒険者達用のギルドを築いているのだ。
ここで、倒したモンスターの魔石やドロップアイテム、宝箱の中身などのうち、必要の無いものを換金するのだ。
いつもなら彼もほぼ全てのアイテムを換金するのだが、今回は絶対に手放したくないアイテムを手に入れていた。
「はは、ツイてるぜ。ランクCのモンスターから、こんなレアアイテムがドロップするなんてなぁ」
剣砥は、自分の腕に嵌めたブレスレットのような金属の腕輪に触れる。
真ん中に緑色の宝石のようなものがはめ込まれたそれは、『状態異常無効化の腕輪』という、とてつもなくレアなドロップアイテムだ。
普通にギルドで売却したら現金換算で10万円はくだらないという代物。
しかし、お小遣いが欲しいお年頃の剣砥をして、換金に走らず手元に置くくらいには価値のあるアイテムだった。
(これを見たらアイツ等なんて言うだろうな)
いつものように、クラスメイト達が自分をはやし立てる姿が目に浮かぶ。
全員の憧れの対象として振る舞い、あの落ちこぼれの絆をおちょくればいいのである。
「明日の学校が楽しみだぜ」
意気揚々とスキップしつつ、剣砥はギルド本部を後にしようとして――ギルドの受付周辺が、にわかに騒がしくなったことに気付いた。
「おい! 今掲示板が更新されて、とんでもない冒険者の情報が出たぜ!?」
「はぁ? 何言ってんだ?」
「いいから見て見ろって!」
「わかったよ、そんな急かすなって……え~と、ランク1の冒険者がダンジョン72階層でレベル20までランクアップぅっ!? はぁっ!? なんだそれ!」
「な? やべぇだろ!?」
「うっそだろ!? 掲示板バグったんじゃねぇのか!?」
冒険者達のざわめきが、あちこちに波及していく。
そして、皆の足がカウンターの上に表示されている掲示板へと向かっていた。
掲示板とは、ダンジョン内の情報やモンスターの討伐依頼、冒険者のモンスター総討伐数など、様々な情報が載っている場所だ。
とりわけ人気な掲示板は、『日間総経験値獲得ランキング』の掲示板である。
ここでは、ダンジョン冒険者全員を対象とした、一日辺りの経験値獲得数の上位10人が掲載されることになっている。
その上位を巡って、冒険者達は争っているのだが――
「はぁ!? 総経験値獲得数12万ポイント!? んだよそれ。複数のSランクのモンスターを単独撃破でもしない限り、不可能だろ!? しかも、コイツ元はレベル1だぞ!? どう考えても単独撃破なんて不可能だろ!」
「ああ、どうにも胡散臭いところはあるが、そもそもゲームのチートみたくズルをしてポイントを稼ぐなんて事実上不可能だ。それができるなら、みんなやってるだろうし、それを許してくれるほどダンジョンは甘い世界じゃない」
「け、けどよ……」
賞賛、どよめき、そして懐疑の声。
様々なものが入り交じり、掲示板にその情報が現れてからわずか数十秒で、ギルド内部に波及していた。
(へぇ。なんかとんでもないヤツがいるんだな)
そんな風に、さして興味も抱かずにいた剣砥だったが――何気なく掲示板を盗み見した瞬間、目を見開いた。
「なん、だと……なんでテメェが?」
掲示板の1位に書かれていた人物の名は――「神結絆」だった。
ダンジョン中層――21階層にて。
『グォオオオオオオオオオッ!』
叫び声を上げて突進するのは、Bランクモンスターの“レッド・ボア”。
赤い体毛と巨大な牙を持つイノシシのような見た目のソイツは、標的と見定めた少年めがけて猪突猛進する。
「へっ! 喰らえバケモンが! 《ファイア・ランス》!」
が、その少年はどう猛に笑って、火属性魔法の《ファイア・ランス》を起動した。
轟! と音を立て、炎の槍が“レッド・ボア”めがけて飛んでいき、身体を貫いた。
『グァッ!』
“レッド・ボア”の身体が傾いで、地面を身体で擦りながら突進が止まる。
荒い息をついているところを見るに、一撃で急所を射貫いたわけではないらしい。いや、彼にはそうするだけの実力があるが、あえてしなかった。
「はっ、こんなもんかよクソ弱ぇ」
少年――川端剣砥は、悪態をつきつつ瀕死の“レッド・ボア”に近づき、傷口を思いっきり踏みつけた。
『グヒィッ!?』
「へっ、おもしれぇ。モンスターのくせに痛がるのかよ。平気で俺達冒険者に襲いかかってくるくせに、自分はやめて欲しいですってか? そうはいかねぇだろうが!」
剣砥は、犬歯をむき出しにして笑いながら、短剣を“レッド・ボア”に突き刺す。
あえて、心臓部となる魔石の部分を避けて、何度でも。
――それらしい理屈を込めてモンスターを狩っている剣砥だが、その実そんなのはただの正当化にすぎない。
彼自身をダンジョンの奥へと突き動かすのは、ひとえに快楽故だ。
強いモンスターに勝ってチヤホヤされたい。自分が世界の中心でいたい。
気に入らないことがあれば、モンスターをいたぶって、享楽に身を委ねる。まるで、幼子が蟻の巣に水を注ぎ込むように。
モンスターに対する殺害が正当化されたこの場所は、彼にとってはまさに遊びの場でしかないのだ。
ひとしきりいたぶったあと、剣砥はトドメを刺して更なる標的を求め、ダンジョンを彷徨う――
――。
「へへっ、やったぜ」
ひとしきり攻略を終えた剣砥は、すっきりした表情で第一階層のギルド本部に戻っていた。
ダンジョン一階層の広い空間を使い、冒険者達用のギルドを築いているのだ。
ここで、倒したモンスターの魔石やドロップアイテム、宝箱の中身などのうち、必要の無いものを換金するのだ。
いつもなら彼もほぼ全てのアイテムを換金するのだが、今回は絶対に手放したくないアイテムを手に入れていた。
「はは、ツイてるぜ。ランクCのモンスターから、こんなレアアイテムがドロップするなんてなぁ」
剣砥は、自分の腕に嵌めたブレスレットのような金属の腕輪に触れる。
真ん中に緑色の宝石のようなものがはめ込まれたそれは、『状態異常無効化の腕輪』という、とてつもなくレアなドロップアイテムだ。
普通にギルドで売却したら現金換算で10万円はくだらないという代物。
しかし、お小遣いが欲しいお年頃の剣砥をして、換金に走らず手元に置くくらいには価値のあるアイテムだった。
(これを見たらアイツ等なんて言うだろうな)
いつものように、クラスメイト達が自分をはやし立てる姿が目に浮かぶ。
全員の憧れの対象として振る舞い、あの落ちこぼれの絆をおちょくればいいのである。
「明日の学校が楽しみだぜ」
意気揚々とスキップしつつ、剣砥はギルド本部を後にしようとして――ギルドの受付周辺が、にわかに騒がしくなったことに気付いた。
「おい! 今掲示板が更新されて、とんでもない冒険者の情報が出たぜ!?」
「はぁ? 何言ってんだ?」
「いいから見て見ろって!」
「わかったよ、そんな急かすなって……え~と、ランク1の冒険者がダンジョン72階層でレベル20までランクアップぅっ!? はぁっ!? なんだそれ!」
「な? やべぇだろ!?」
「うっそだろ!? 掲示板バグったんじゃねぇのか!?」
冒険者達のざわめきが、あちこちに波及していく。
そして、皆の足がカウンターの上に表示されている掲示板へと向かっていた。
掲示板とは、ダンジョン内の情報やモンスターの討伐依頼、冒険者のモンスター総討伐数など、様々な情報が載っている場所だ。
とりわけ人気な掲示板は、『日間総経験値獲得ランキング』の掲示板である。
ここでは、ダンジョン冒険者全員を対象とした、一日辺りの経験値獲得数の上位10人が掲載されることになっている。
その上位を巡って、冒険者達は争っているのだが――
「はぁ!? 総経験値獲得数12万ポイント!? んだよそれ。複数のSランクのモンスターを単独撃破でもしない限り、不可能だろ!? しかも、コイツ元はレベル1だぞ!? どう考えても単独撃破なんて不可能だろ!」
「ああ、どうにも胡散臭いところはあるが、そもそもゲームのチートみたくズルをしてポイントを稼ぐなんて事実上不可能だ。それができるなら、みんなやってるだろうし、それを許してくれるほどダンジョンは甘い世界じゃない」
「け、けどよ……」
賞賛、どよめき、そして懐疑の声。
様々なものが入り交じり、掲示板にその情報が現れてからわずか数十秒で、ギルド内部に波及していた。
(へぇ。なんかとんでもないヤツがいるんだな)
そんな風に、さして興味も抱かずにいた剣砥だったが――何気なく掲示板を盗み見した瞬間、目を見開いた。
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