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第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙
第15話 ボスキャラとエンカウント
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『『『『グルルルル!』』』』
うなりごえを上げ、一斉に飛びかかってくるリザードマンの大群。
「旦那様、こっちじゃ!」
「う、うん!」
普段は隠している翼を広げ、シャルは屋敷の屋根へと飛び上がる。
それに続いて僕も《龍翼》を広げ、屋根の上へ飛び移った。
獲物を捕らえ損ねた槍や剣の切っ先が、ギラリと光るのを下に見つつ、僕等は屋根伝いに駆け抜ける。
『ガルルル!』
逃がしはしない! とでも言いたげに、黄金色に濁った目を僕等へ向けるリザードマン達。
槍や弓などが、下から次々に飛んで来て、屋根瓦に突き刺さる。
「ちっ、なぜじゃ! いつもこの時間は衛兵がいないはずじゃと言うのに……寄りによってこんなにいるとは。イレギュラーが発生したとでも言うのか!」
「どちらかというとイレギュラー側の僕等が言えないよねそれ!」
軽口を叩いていられるのも、僕自身のレベルが上がったというのもあるが、敵側の要因も大きい。
実はリザードマン。“最強種”などではなく、個々のランクで言えばBで、中層くらいからでも現れる。
つまり、そこまで強い敵ではないが、気になることが一つ。
「なんでリザードマンが群れになってるのさ! それに、衛兵って……それじゃあまるで、ここを守護しているみたい――」
「ああ。群れを成して守護しておるぞ」
行く手を阻むようにわらわらと昇ってきたリザードマンへ、威嚇のために威力を弱めた《バーニング・ブレス》をぶっ放しつつ、シャルは言う。
「本来、リザードマンは単体でしか現れないが……モンスターとて、王を得れば話は変わるのじゃ」
「王? それってまさか」
「ああ、この屋敷の“主たる”最強種“じゃな」
「っ!」
なるほど。
知性ある者によって統率されたモンスター。だから、こんな状況に陥っているわけか。
「下へ降りるぞ旦那様!」
「へっ!?」
言うが早いか、シャルは足下の屋根瓦を力任せに吹き飛ばし、屋根に大穴を開ける。
「えっ!? そんなダイナミックな入場を……隠密じゃなかったの!?」
「どのみちもう見つかっておるのじゃ! 暴れた方が早い!」
シャルに続いて、屋根から屋敷の中へ飛び降りる。
降りた先は、屋敷の通路だった。
綺麗に磨かれたフローリングに、なかなか趣味のいい絵画などが壁に貼られていて、高級旅館と大差ない。
これでモンスターの居城と言うのだから驚きだ。
「ここを進んだ先に、ヤツのへや――じゃなくて、牢屋がある! 一気に進むぞ!」
「う、うん!」「
気配が近づいているリザードマンに構っている暇はない。
追いつかれるより前に、僕等は廊下を一気に駆け抜け――突き当たりにあった襖を開けた。
その先にあったのは――水で満たされた部屋だった。
正方形の部屋の向かって左側には大浴場で見るような巨大な窓があり、室内のプールと外の湖がちょうど繋がっているのがわかる。
「ここが、人魚姫の牢屋……?」
「いいや、この向こうじゃ」
シャルは、丁度対面を指し示す。
見れば部屋の向こう側には、入り口と同じような襖があり、プールの上を橋が渡してある。この橋を渡れば、シャルの言う人魚姫の牢屋に着くのだろう。
「行こうシャル!」
「ああ――ん?」
勢いよく橋の上を駆けだした僕を追って足を踏み出したシャルは、その瞬間足を止めた。
何かを訝しむように、水面を見つめて――
「っ! 待て! 引き返すのじゃ旦那様ぁ!」
シャルの切羽詰まったような叫び声。
しかし、橋の中央付近まで来ていた僕は、その声に従う選択をしたとして、おそらく間に合わなかっただろう。
刹那、プールの水が、蠢いた。
まるで生き物のように。それ自体が、意思を持っているかのごとく波打ち、下から突き上げて端を粉々に破壊したのだ。
「なぁっ!?」
重力に従い落ちていく身体。
水面は、得体の知れない怪物のようにガパリと口を開け、僕を飲み込もうとしていて――
「くっ!」
間一髪。《龍翼》を展開して、水の顎《あぎと》から逃れる。
「な、なんなんだ……!?」
「ちっ、よりによって待ち伏せとは……!」
空中で制止した僕に並んだシャルが、忌々しげに呟く。
「待ち伏せ?」
「ああ、いるぞ。この屋敷の主……“最強種”がな」
「っ!」
シャルの言葉と同時、水を割ってソイツが姿を現し――それを見た瞬間、僕は驚きに目を見開いた。
うなりごえを上げ、一斉に飛びかかってくるリザードマンの大群。
「旦那様、こっちじゃ!」
「う、うん!」
普段は隠している翼を広げ、シャルは屋敷の屋根へと飛び上がる。
それに続いて僕も《龍翼》を広げ、屋根の上へ飛び移った。
獲物を捕らえ損ねた槍や剣の切っ先が、ギラリと光るのを下に見つつ、僕等は屋根伝いに駆け抜ける。
『ガルルル!』
逃がしはしない! とでも言いたげに、黄金色に濁った目を僕等へ向けるリザードマン達。
槍や弓などが、下から次々に飛んで来て、屋根瓦に突き刺さる。
「ちっ、なぜじゃ! いつもこの時間は衛兵がいないはずじゃと言うのに……寄りによってこんなにいるとは。イレギュラーが発生したとでも言うのか!」
「どちらかというとイレギュラー側の僕等が言えないよねそれ!」
軽口を叩いていられるのも、僕自身のレベルが上がったというのもあるが、敵側の要因も大きい。
実はリザードマン。“最強種”などではなく、個々のランクで言えばBで、中層くらいからでも現れる。
つまり、そこまで強い敵ではないが、気になることが一つ。
「なんでリザードマンが群れになってるのさ! それに、衛兵って……それじゃあまるで、ここを守護しているみたい――」
「ああ。群れを成して守護しておるぞ」
行く手を阻むようにわらわらと昇ってきたリザードマンへ、威嚇のために威力を弱めた《バーニング・ブレス》をぶっ放しつつ、シャルは言う。
「本来、リザードマンは単体でしか現れないが……モンスターとて、王を得れば話は変わるのじゃ」
「王? それってまさか」
「ああ、この屋敷の“主たる”最強種“じゃな」
「っ!」
なるほど。
知性ある者によって統率されたモンスター。だから、こんな状況に陥っているわけか。
「下へ降りるぞ旦那様!」
「へっ!?」
言うが早いか、シャルは足下の屋根瓦を力任せに吹き飛ばし、屋根に大穴を開ける。
「えっ!? そんなダイナミックな入場を……隠密じゃなかったの!?」
「どのみちもう見つかっておるのじゃ! 暴れた方が早い!」
シャルに続いて、屋根から屋敷の中へ飛び降りる。
降りた先は、屋敷の通路だった。
綺麗に磨かれたフローリングに、なかなか趣味のいい絵画などが壁に貼られていて、高級旅館と大差ない。
これでモンスターの居城と言うのだから驚きだ。
「ここを進んだ先に、ヤツのへや――じゃなくて、牢屋がある! 一気に進むぞ!」
「う、うん!」「
気配が近づいているリザードマンに構っている暇はない。
追いつかれるより前に、僕等は廊下を一気に駆け抜け――突き当たりにあった襖を開けた。
その先にあったのは――水で満たされた部屋だった。
正方形の部屋の向かって左側には大浴場で見るような巨大な窓があり、室内のプールと外の湖がちょうど繋がっているのがわかる。
「ここが、人魚姫の牢屋……?」
「いいや、この向こうじゃ」
シャルは、丁度対面を指し示す。
見れば部屋の向こう側には、入り口と同じような襖があり、プールの上を橋が渡してある。この橋を渡れば、シャルの言う人魚姫の牢屋に着くのだろう。
「行こうシャル!」
「ああ――ん?」
勢いよく橋の上を駆けだした僕を追って足を踏み出したシャルは、その瞬間足を止めた。
何かを訝しむように、水面を見つめて――
「っ! 待て! 引き返すのじゃ旦那様ぁ!」
シャルの切羽詰まったような叫び声。
しかし、橋の中央付近まで来ていた僕は、その声に従う選択をしたとして、おそらく間に合わなかっただろう。
刹那、プールの水が、蠢いた。
まるで生き物のように。それ自体が、意思を持っているかのごとく波打ち、下から突き上げて端を粉々に破壊したのだ。
「なぁっ!?」
重力に従い落ちていく身体。
水面は、得体の知れない怪物のようにガパリと口を開け、僕を飲み込もうとしていて――
「くっ!」
間一髪。《龍翼》を展開して、水の顎《あぎと》から逃れる。
「な、なんなんだ……!?」
「ちっ、よりによって待ち伏せとは……!」
空中で制止した僕に並んだシャルが、忌々しげに呟く。
「待ち伏せ?」
「ああ、いるぞ。この屋敷の主……“最強種”がな」
「っ!」
シャルの言葉と同時、水を割ってソイツが姿を現し――それを見た瞬間、僕は驚きに目を見開いた。
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