ダンジョンに迷い込んだ落ちこぼれの僕。偶然助けた“最強種”の少女と契約したら、強さがバグってSランクモンスターをブッ飛ばしちゃった件

果 一

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第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙

第24話 厄災、来る

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「げほっ、ごほっ……あ、ありえねぇ。んだよこれ。一体、なんだってんだよ」

 ケンちゃんは、目玉を不規則に揺らしながら、息も絶え絶えに呟く。
 僕は無言で彼の元へ寄っていくと、ケンちゃんは「ひっ」と小さく喉をならした。

「別に僕のことを悪く言うのは勝手だ。今後も好きなだけ罵ってくれればいい」

 もちろん、僕だってバカにされて傷付かないわけじゃない。
 バカにしてきたことを許すなんて、寛大な心は持っていない。
 ただ、僕の事情なんかどうでもよくなるくらい、頭の中を埋め尽くす感情があった。

「ただし……」

 僕は、その感情に従ってケンちゃんの胸ぐらを掴み上げ、自分でも驚くくらい底冷えする声で告げた。

「シャルやミリーさんに手を出したらどうなるか。よく覚えておけ」
「っ」

 恐怖により目を見開いたケンちゃんは、今度こそ何も言えなくなってしまう。
 もうコイツに用はない。
 無理矢理にでもミリーさんに土下座させたいところだが、コイツ自ら行わないと意味が無いのだ。

 だから、そこまで面倒を見てやる道理はない。

 僕は踵を返して、ミリーさんの方へと寄っていった。

「ケガはないですか?」
「は、はい。大丈夫です」

 小さく震えていた少女は、僕を上目遣いで見つめながら答えた。

「あの……助けていただき、どうもありがとうございました」
「いえいえ。お礼なら、シャルと母親にでも言ってください」

 今回に関しては、僕が手を出さなくてもなんとかなっただろう。
 僕はただしゃしゃり出て、バカを懲らしめただけだ。

 しかし――
僕は、ミリーという名の人魚を見る。

改めて見ても、可憐な人魚だった。
 年の頃は、人間換算で言うと12、3歳くらいだろうか。
 シャルが8,9歳くらいの少女の見た目だから、シャルよりも年上ということになる。

 そして――そこそこ大きい。
 何がとは言わないが、この年齢にしては発育がちょっと良すぎやしないだろうか?
 
「あ、あの……あまり見られると恥ずかしいのですが」

 と、僕の(いやらしい)視線に気付いたからか、ミリーさんが頬を赤らめてもじもじとする。

「え、あ、ごめん! つい見とれてしまって――」
「うぇ!? み、見とれたなんてそんな――」

 慌てて弁明したが、更にミリーさんは赤くなってしまう。
 と、急に耳に激痛が走った。

「い、いでででで! ってシャル! なんで急に耳を引っ張るの」
「べーつに。なんとなく耳を引きちぎりたいと思っただけじゃ」
「えぇ……」

 なんという理不尽。
 シャルは拗ねてしまったらしく、ぷいとそっぽを向いてしまう。

 シャルの奇行はともかく、これでなんとか一件落着だ。
 ほっとした僕は……不意に、違和感を覚えた。

 人魚母の姿に、だ。
 娘を救出して、全て事が片づいたはずなのに。

「どうされたんですか?」
「――手遅れみたい」
「……?」
。あの人が来る」

 そのとき、僕は思い出した。
 忘れていた。もの凄く重要なことを。

「まさか――」

 その瞬間、ダンジョンが凄まじい音と共に振動する。
 地震大国の日本に住んでいてなお、これほどの揺れを観測したことが、過去あっただろうか。
 それほどの絶望感。

 そして――正面の壁が、吹き飛ぶように向こう側から破られた。
 
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