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第2章 人魚姫の涙、因縁の対峙
第26話 人魚姫の憂い
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雷が荒れ狂う。
ケルピーって水に住んでる精霊だろ! 雷って違うだろ!
そう言ってやりたいが、そんなことを叫んでいられる余裕はない。
次々と放たれる雷を、《龍翼》をはためかせて三次元的に飛び回りながら躱していく。
「《ファイア・ボール》!」
反撃とばかりに火球を放つが――ケルピーの正面に水の壁が出現し、易々と鎮火されてしまった。
「はぁ!?」
あんまりな状況に僕は思わず叫んでしまう。
いやまあ、ケルピーだから水魔法とか得意だろうけどさ。雷も水もとか、聞いてないし!!
理不尽すぎて泣きたい。
「ちくしょう剣砥のヤツ! 後で絶対シメる!!」
呑気に気絶しているいじめっ子を恨む。
大体、この状況は全部このバカがしでかしたことだ。なんで僕が尻ぬぐいしなくちゃならない。
と、そんな僕の鬱憤が伝わったのだろう。
「お、お父さん! もうやめて!」
可愛らしくも逼迫した声が、辺りに響いた。
声の主は、ミリーさんだ。
「その人は私を助けてくれただけ! だからもういいの! お願いだから正気に戻って!!」
自分の娘の、悲痛な叫び。
これを聞けば、理性を失った父親が、動きを止めて目から涙を流し、理性を取り戻していく感動の展開に――
『ヒヒィイインッ!!』
――ならなかった。
嘶きと同時に、ケルピーの周囲に水の玉が生まれる。
「いやセオリーガン無視するなよ!! 愛する娘の言葉だぞ! しっかりしろお父さん!!」
が、僕の命がけのツッコミも虚しく、次々と生まれるバスケットボール大の大きさの水を凝縮した玉は、ざっと100を超える数。こんなものが周囲に向けて放たれれば、僕どころかミリーまで巻き込まれてしまう。
「こんの頑固親父!!」
ケンちゃんもミリーさんの父親も、本当に余計なことしかしない。
僕は慌ててミリーさんのところへカッ飛んでいき、横抱きに抱えるとその場を離れた。
その瞬間、水の玉の群れが放たれた。
大量の水は、縦横無尽に飛び回る僕等を掠め、周囲の壁や天井に激突し、次々とクレーターを作っていく。
こんな中、動かずにいるケンちゃんに玉が当たらないのは、悪運が強いという以外の何物でもないだろう。
「くっ、反撃のチャンスすくれないのか!」
どんどんと速度が上がっていく猛攻。
今はなんとか逃げ回っているが、致命的な攻撃を喰らうのももはや時間の問題だ。
「ごめんなさい」
不意に、腕の中で震える声が聞こえた。
見やれば、ミリーさんが目元に涙を浮かべていた。
「私が、勝手に外に出てきさえしなければ、こんなことにはならなかったんです。私の身になにかあれば、お父さんが怒ることは、知ってたのに……だから!」
ぎゅっと唇を噛みしめるミリーさん。
僕は小さくため息をついて。
「まるで、「これからはずっと自分の部屋で寂しく暮らしていく」とでも言いたげだな」
「え?」
ミリーさんは、驚いたように僕を見る。
「別に、我が儘言ってもいいんだよ。まだ子どもなんだから。シャルと一緒に冒険して、怖い思いもして、でもそれ以上に楽しい経験をして、そうやって大人になっていく」
僕は、壁を蹴って水の猛攻を避けながら、言葉を続ける。
「それを親が心配するのは当たり前だけど、それでも君がここに来たことは間違いなんかじゃないよ。自分の意志で、したいことをしに来ただけなんだから。僕は君のせいで厄介ごとに巻き込まれたなんて、そんなしょうもない嘘は言わない」
はっきりと、断言した。
この状況は、君の我が儘が招いたものじゃないと。君はもっと自由でいいんだと。
それを受け止めたミリーさんが、なんとも言えない表情をする。心なしか、頬が赤い気もするが……
と、そのときだった。
水の玉に隠れるようにして、極太の稲妻が放たれた。
「まずっ!」
これは、避けきれない!
僕は反射的にミリーさんを庇い、稲妻が直撃するギリギリで腕に《龍鱗》を纏わせる。
が、よほど威力が大きかったのだろう。
稲妻が鱗を貫通して――危うく意識が飛びかけた。
ケルピーって水に住んでる精霊だろ! 雷って違うだろ!
そう言ってやりたいが、そんなことを叫んでいられる余裕はない。
次々と放たれる雷を、《龍翼》をはためかせて三次元的に飛び回りながら躱していく。
「《ファイア・ボール》!」
反撃とばかりに火球を放つが――ケルピーの正面に水の壁が出現し、易々と鎮火されてしまった。
「はぁ!?」
あんまりな状況に僕は思わず叫んでしまう。
いやまあ、ケルピーだから水魔法とか得意だろうけどさ。雷も水もとか、聞いてないし!!
理不尽すぎて泣きたい。
「ちくしょう剣砥のヤツ! 後で絶対シメる!!」
呑気に気絶しているいじめっ子を恨む。
大体、この状況は全部このバカがしでかしたことだ。なんで僕が尻ぬぐいしなくちゃならない。
と、そんな僕の鬱憤が伝わったのだろう。
「お、お父さん! もうやめて!」
可愛らしくも逼迫した声が、辺りに響いた。
声の主は、ミリーさんだ。
「その人は私を助けてくれただけ! だからもういいの! お願いだから正気に戻って!!」
自分の娘の、悲痛な叫び。
これを聞けば、理性を失った父親が、動きを止めて目から涙を流し、理性を取り戻していく感動の展開に――
『ヒヒィイインッ!!』
――ならなかった。
嘶きと同時に、ケルピーの周囲に水の玉が生まれる。
「いやセオリーガン無視するなよ!! 愛する娘の言葉だぞ! しっかりしろお父さん!!」
が、僕の命がけのツッコミも虚しく、次々と生まれるバスケットボール大の大きさの水を凝縮した玉は、ざっと100を超える数。こんなものが周囲に向けて放たれれば、僕どころかミリーまで巻き込まれてしまう。
「こんの頑固親父!!」
ケンちゃんもミリーさんの父親も、本当に余計なことしかしない。
僕は慌ててミリーさんのところへカッ飛んでいき、横抱きに抱えるとその場を離れた。
その瞬間、水の玉の群れが放たれた。
大量の水は、縦横無尽に飛び回る僕等を掠め、周囲の壁や天井に激突し、次々とクレーターを作っていく。
こんな中、動かずにいるケンちゃんに玉が当たらないのは、悪運が強いという以外の何物でもないだろう。
「くっ、反撃のチャンスすくれないのか!」
どんどんと速度が上がっていく猛攻。
今はなんとか逃げ回っているが、致命的な攻撃を喰らうのももはや時間の問題だ。
「ごめんなさい」
不意に、腕の中で震える声が聞こえた。
見やれば、ミリーさんが目元に涙を浮かべていた。
「私が、勝手に外に出てきさえしなければ、こんなことにはならなかったんです。私の身になにかあれば、お父さんが怒ることは、知ってたのに……だから!」
ぎゅっと唇を噛みしめるミリーさん。
僕は小さくため息をついて。
「まるで、「これからはずっと自分の部屋で寂しく暮らしていく」とでも言いたげだな」
「え?」
ミリーさんは、驚いたように僕を見る。
「別に、我が儘言ってもいいんだよ。まだ子どもなんだから。シャルと一緒に冒険して、怖い思いもして、でもそれ以上に楽しい経験をして、そうやって大人になっていく」
僕は、壁を蹴って水の猛攻を避けながら、言葉を続ける。
「それを親が心配するのは当たり前だけど、それでも君がここに来たことは間違いなんかじゃないよ。自分の意志で、したいことをしに来ただけなんだから。僕は君のせいで厄介ごとに巻き込まれたなんて、そんなしょうもない嘘は言わない」
はっきりと、断言した。
この状況は、君の我が儘が招いたものじゃないと。君はもっと自由でいいんだと。
それを受け止めたミリーさんが、なんとも言えない表情をする。心なしか、頬が赤い気もするが……
と、そのときだった。
水の玉に隠れるようにして、極太の稲妻が放たれた。
「まずっ!」
これは、避けきれない!
僕は反射的にミリーさんを庇い、稲妻が直撃するギリギリで腕に《龍鱗》を纏わせる。
が、よほど威力が大きかったのだろう。
稲妻が鱗を貫通して――危うく意識が飛びかけた。
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